パートナー通信 No.48
2012年1月/No.48(通算64号)
2012年1月/No.48(通算64号)
被災地に生きる子どもの権利条約
代表 大浦 暁生
雄勝(おがつ)小学校は宮城県石巻市の東のはずれ、海の近くにあります。3・11の津波で子ども74人と先生10人が死亡・行方不明になった大川小学校の、隣の地区です。昨年12月、民研主催の第20回全国教研集会で、雄勝小学校徳水博志(とくみずひろし)先生の実践報告を聴きました。
「潮が大きく引いたのを見て、漁師の人たちが大津波が来ると教えてくれたんで、私たちはたすかったんです。大川小は漁村じゃないから、そういう漁師がいなかった」
学校にいた子どもと先生は山に逃げて全員無事でしたが、校舎は窓がすべて突き破られ、教室の中はがれきの山となりました。津波でなにもかも失われたとき、徳水先生の心の中をよぎったのは、「子どもたちの学習権をどう保障するか」だったといいます。先生がたは教室の確保はもとより、教材や教具もチョーク一本まで求めて奔走しました。
教育を受ける権利が子どもの権利条約第28条にある重要な権利であることは言うまでもありません。徳水先生は被災地が求める学力を「故郷を愛し故郷を復興する社会参加の学力」と捉え、地元の特産物「雄勝硯(すずり)」の破片を使った工作や、ワカメやホタテなど海産物の生産にかかわる労働を、子どもたちが実際に体験できるようにしました。
さらに徳水先生は、子どもの権利条約第12条の意見表明権をも、地域と関わらせて実践しようとしています。つまり、復興の町づくりのプランを子どもたち自身が考え、町当局に提出するのです。卒業制作には、子どもたちが考える未来の町の模型を作ることになっているといいます。子どもたちの郷土への愛と夢はいっそうふくらむことでしょう。
子どもたちが自分たちの権利を保障され、その権利を行使して郷土の復興に関わっていくのは、ほんとうにすばらしいことです。私たちもこの群馬の地で、子どもの権利と幸福のために微力を尽くしたい。本年もどうぞよろしくお願い申しあげます。
(注・原文は縦書きです。)
かけがえのない いのち、人権、自由を子どもに
群馬子どもの権利委員会
Gunma Committee for Children’s Rights