パートナー通信 No.43
シリーズ国連子どもの権利委員会
「第3回最終所見・勧告」を読む ①
石橋 峯生(世話人)
日本政府の第3回定期報告書が提出され、審査が行われました。国連子どもの権利委員会よりその最終所見が届きました。国連子どもの権利委員会の勧告を、先ず子どもたちに、それから子育て、教育、子どもの成長発達に関わる多くの人たちに届けることは、私たちの大事な仕事です。それで、第1に「群馬子どもの権利委員」、つまり「会員」の皆さんにお届けします。
この最終所見・勧告は――日本政府は守らなければならない――はずのものです。しかし、日本の多くの人が――その気にならなければ実現しません。日本国憲法の主権在民でも、子どもの権利条約の子どもの教育を受ける権利でも――権利はいつも向こうからやってきたことはありません。権利は闘い取るものです。闘った所(人)にだけチョッぴり花開くものです。
この所見・勧告は膨大なものです。その内容は、子どもが権利の主体として生きていくために関わるすべてのものです。今回は、「調整」のセクション13・14と「国内行動計画」のセクション15・16を石橋が読みました。
【調整】
セクション13 :
本委員会は、子どもの権利に関する政策の実施に関係している多くの政府機関、例えば、子ども・若者育成支援推進本部、教育再生会議その他の多様な政府審議会が存在していることに留意する。 本委員会は、しかしながら、これらの機関間の効果的調整、ならびに、中央、地方および地域レベルの間の効果的な調整を確保するための仕組みが欠如していることを懸念する。
セクション14 :
本委員会は、中央、地方および地域レベルを問わず、子どもの権利を実施するために行われる締約国政府のすべての活動を効果的に調整し、かつ、子どもの権利の実施に関与している市民社会組織との継続的交流および共同体制を確立するための、明白な権限と十分な人的および財政的資源を有する適切な国内的仕組みを設立することを締約国政府に勧告する。
セクション13の「子ども・若者育成支援推進本部」や「教育再生会議」は政府の組織でしょう。どんな人がどんな仕事をしているか、その内容を知る必要があります。この組織が「教育基本法」を変えたり、「青少年保護育成条例」を「健全育成条例」に変えた張本人であると考えます。政府は「効果的調整をしている」と言うでしょう。しかし、子どもには恐ろしいことです。子どもの学ぶ権利を奪い取り、教育の目的を人材育成にしてしまいました。保護を健全にして、主体を子どもから奪い、大人の考える健全な子どもにしてしまいました。
セクション14の「市民社会組織」をどう読むべきでしょうか。私たちは、私たちの「群馬子どもの権利委員会」はこの範ちゅうに「入る」と考えます。国連子どもの権利委員会もそう考えるでしょう。しかし政府は、私たちを除外、排除していると思います。私たち群馬子どもの権利委員会を中心に、子どもの権利の実施に関与しているすべての市民社会組織が継続的交流および共同体制を確立するための、明白な権限と十分な人的および財政的資源を有する適切な国内的仕組みを設立すること――これは大事なことで――どうしたら、これが実現できるでしょうか。
政府がやってくれるとは考えられないのです。私たちがどう努力したら実現できるか――私たちの仕事です。具体的な行動計画を作ることです。
セクション15 :
本委員会は、子ども・若者育成支援推進法(2010年4月)など多くの個別的措置がとら れたことを歓迎し、かつ、すべての子どもの発達を援助し、すべての子どもを十分に尊重するために、関連政府組織の統合を目的とする「子ども・子育てビジョン」および「子ども・若者ビジョン」を策定したことに留意し、関心を払う。 本委員会は、しかしながら、本条約のすべての領域をカバーし、特に、子どもの不平等および格差に対応する子どもの権利を基礎にした包括的な子どものための国内行動計画が欠如していることを引き続き懸念する。
セクション16 :
本委員会は、地方当局、市民社会および子どもを含む関連するパートナーとの協議および共同に基づいて、本条約のすべての領域をカバーし、かつ、中期目標および長期目標を備えた子どものための国内行動計画を策定し、実施し、適切な人的および財政的資源を提供するとともにその成果を検証する監視機構を設立し、必要な場合には(策定された)措置の変更調整を行うことを締約国政府に勧告する。
本委員会は、特に、行動計画が収入および生活水準における不平等、ならびに、性、障害、民族的自出、その他、子どもが発達し、学習し、責任ある生活に備える機会に影響を与える要素に基づくさまざまな格差に対応することを勧告する。
本委員会は、子どもに関する国連特別総会の成果文書、すなわち、「子どもにふさわしい世界」(2002年)および「中期事業計画」(2007年)を考慮することを締約国政府に勧告する。
行動計画は
- 子どもの権利条約のすべての領域をカバーすること。
- 子どもの不平等および格差に対応する子どもの権利を基礎にした包括的な子どものためのものであること。
- 中期目標および長期目標を備えたものであること。
- 適切な人的および財政的資源を提供すること。
- 収入および生活水準における不平等をなくすこと。
- 成果を検証する監視機構を設立すること。
- 性、障害、民族など、不平等をなくすこと。
- 子どもが発達し、学習し、責任ある生活に備える機会に影響を与える要素に基づくさまざまな格差に対応すること。
- 国連の特別総会成果文書「子どもにふさわしい世界(2002年)」および「中期事業計画(2007年)」を考慮すること。
こんな国内行動計画を作りたいと強く思います。
みんな大事だけれど、特に2の「子どもの不平等および格差に対応する子どもの権利を基礎にした包括的な子どものためのものであること」、8の「子どもが発達し、学習し、責任ある生活に備える機会に影響を与える要素に基づくさまざまな格差に対応すること」は大事です。読みちがいをしないように――深く読み込みたいところです。
ここが「子どもが権利の主体として生きる」か「大人の健全育成の対象」かの別れ路です。