パートナー通信 No.47

第43回全国保育団体合同研究集会(in群馬)を開催して  子どもの権利を守り発展させる
「保育の仕事の専門性・保育所の役割」

第43回「全国保育合研」現地実行委員会・事務局長 
阿比留とき子

<はじめに>

 2009年6月、群馬保育センター総会で「全国保育合研」の群馬県開催を決定しました。
 群馬保育センターは、今進められている保育制度改革が経済優先で「市場化」、「企業化」の方向に向かっていることに危機感を持ち活動をしてきましたが、①「合研」を開催することになりこの問題をさらに広範な人に知らせ、子どもを守る運動をひろげたい、②全国の保育関係者、研究者が集まり保育実践を交流し、子どものことを考え合う1万人規模の研究集会を創りたい、③多くの人に参加してもらい、これからの群馬の子どものことを一緒に考えたい、という3つの目標をもって、実行委員会の活動をすすめました。
 自治体懇談、園訪問、プレ企画と実行委員会が大きく動き出してきた時に、3・11の大震災と原発事故が起こりました。その後1か月ほどは余震があり、原発事故も終息せず、ほんとうにできるのかと誰もが不安で、活動も停止状態になりました。各園でも会議をもって話し合いを続けているときに、去年の開催地・岩手の実行委員会から、「実行委員をした方から、すべて流されたので岩手大会の要綱があったら送ってほしいと連絡があり、合研が大切な思い出になり生きる励みになっている」という話や、合研での「つながり」が震災後にも生きて、連絡し合って保育を続けていることの報告を聞きました。また福島からは、「自然豊かな場所なのに外に出られず、部屋の中からこいのぼりを見ているような室内での保育が続いている。換気ができず病気が次々にでて園内に蔓延してしまう。子どもも保育士も不安定な状況で保育しているので、群馬に行って元気になりたいと思っている」等の話を聞き、今年だからこそたくさんの学びがあるのではないか、「合研」を成功させ、過去に震災を経験した兵庫へと、東北の復興への願いを込めてつなげる意味があるのではないかと、気持ちを奮い立たせ実行委員会の気持ちを一つにして「合研」へと向かうことができました。
 結果として群馬県の参加者は3390名、全国からは7531名の参加となり、困難な状況の中で開催された今年の集会の意味や意義は大きく、深く心に刻まれた集会になりました。 

◇実行委員会の活動

 第43回「全国保育合研」集会の実行委員長を山西哲郎先生(元群馬大学、現在は立正大学教授)にお願いしました。実行委員会の始まりは毎回体操と、「教育全体の視点で(ルソーのエミールを引用しながら)」の発言でリラックスでき新鮮に向かうことができました。後半になると実行委員会参加者は250人程になり、前橋あゆみ保育園のホールは熱気に溢れました。みんなで「合研」の全体像をイメージするために、前年度の「岩手合研」の映像を見る、地域や各園で「合研ってなーに?」の寸劇やチラシを作り実行委員会で披露する等、繰り返し「合研」の意義や目的、仕事内容を共有、確認して進めてきました。地域や園での取り組み、「県民マラソンに参加しながら合研の宣伝をしよう」、「保護者の参加費捻出のためのバザー」、「おやじの会ができました」等の実践が実行委員会で発表されるとたちまち県内各地に次々と新しい動きが起き、楽しみながら動きだし交流も盛んになりました。

◇地域実行委員会の取り組み

 県内を東毛、中毛、西毛に分け、地域実行委員会として地域の園を中心に活動をすすめました。 東毛実行委員長に唐鎌直義先生(元専修大学教授)、中毛では深澤尚伊先生(前橋協立病院院長)、西毛は高橋弘子さん(かしの木保育園園長)にお願いし、先生がたからも学びながら活動しました。保育士を中心に地域の園や幼児施設、子どものいる場所へ訪問し、署名、合研の誘い、プレ企画への参加を呼びかけました。地域に伝えたい文化や学び(保育制度の学習会、絵本の学習会、保母学校、子育て講座、荒馬座公演)をプレ企画として園や地域合同で取り組みました。多くの新しい人たちが参加し、一つ一つの企画が好評に終わるたびに充実感や達成感を得ることができ、外に出ることで他の園、施設、自治体の状況を知ることができました。

◇「群馬らしさ」を全国につたえる

 群馬らしさをどう伝えていくか、オープニング、開催地企画にどう生かしていくか、地域、歴史、保育内容等実行委員会で出された意見を全国実行委員会で協議し、当日につなげていきました。オープニング350人の子どもたちと保育士の歌声は群馬の保育の今を全国に伝えたいという想いから、また弦楽5重奏は地方の楽団として活躍している群馬交響楽団の方を中心に、震災にあった方々へ、平和への祈りを込めて選曲をお願いしました。子どもたちの歌、群響の演奏ともに全国の参加者から「感動した」、「元気をもらえた」と、たくさん感想をいただきました。
 オープニングフォーラム(1日目)での東北の方たちからの震災、原発事故の体験報告に「生きる」ということの意味、保育の仕事の専門性、保育所の役割の大きさ等を感じ、「子どもの権利」より、経済優先の「子ども・子育て新システム」が制度化されようとしていることに対する不安と、最低基準があり憲法で守られている現行の保育制度の大切さを実感した感動の集会になりました。
 分科会(2日目)の提案では、保育センター園をはじめ、地域の保育園、無認可保育所、過疎地の保育所、院内保育所等子どもにかかわるたくさんの事業所が提案してくれました。開催地特別企画として、「子どもの発達、気になる子に対する講座」を設けましたが、全国からたくさんの参加の申込みがあり、具体的な対応が全国の現場で求められていると感じました。「親子であそぼう」は群馬保育のつどいを生かして設定し、山西実行委員長の「はだしで歩こう」、「丸山亜季講座」と開催地ならではの企画はすべてが好評でした。月刊誌「ちいさいなかま」の宣伝隊として102人の大人の「虎舞」も圧巻でした。「虎舞」は荒馬座から指導を受け、西毛を中心に各園に広がっていたので、保育士だけでなく保護者も積極的に参加し踊りました。東北岩手の民舞だったこともあり、東北の方にとても喜んでいただき、東毛地域では夏祭り、運動会にとまだまだ広がり続けています。
 群馬企画(3日目)では「群馬の保育と保育運動」の朗読と、音楽劇「オキクルミと悪魔」をおこないました。企画に参加することで、先輩たちが作り上げてきた保育内容、運動の歴史を若い人たちが改めて学ぶ機会になり、次世代に受け継ぐことができたと思います。

◇「合研」の広がり、つながりを出発点として

 今回の「合研」で、県内すべての自治体、教育委員会、社会福祉協議会に伺い、後援をいただいたことは大きな喜びと成果です。地域でもたくさんのつながりができました。東毛地域からは、たくさんの男性保育士たちが集まり、実行委員会に参加して要員として働いてくれました。中毛地域では公立保育園がたくさん参加し、西毛では行政から参加した方に、「この、いわゆる「新システム」制度が間違っていることがよくわかった」という感想をいただきました。
 新婦人、労組、民医連等の民主団体、群馬子どもの権利委員会はじめ各種団体の皆さんの協力と温かい連帯にも支えていただきました。「合研」という初めてのおおきな取り組みは県内各地に大きく広がり、たくさんの新たなつながりが生まれました。
 この経験を通して、実行委員一人一人が育ち合い、それぞれの園は自分の園の「今」と向き合いながら保護者と共に自信をつけ、園の課題や方向も見つけ出せたと思います。
 そして群馬保育センターの存在が県内に大きく広がったことを感じます。「合研」で得た広がりや、新しいつながりを大切にし、今後も子どもの笑顔が輝く平和な社会をつくる手つなぎへ、子どもを守る大きなエネルギーへと発展させていけるような活動をしていきたいと思います。


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