パートナー通信 No.50
地域の活動紹介ひきこもる若者たち
―家族はどうかかわったら良いか?―
「道草の会(ひきこもりを考える会)」主催第5回交流会
6月10日(日)伊勢崎ふくしプラザで「道草の会」主催第5回交流会が開かれ、群馬子どもの権利委員会から、小林、加藤の両世話人が参加しました。
主催者の挨拶のあと、25組のご家族の方が、ひきこもり傾向にある息子・娘・孫・甥姪のことを語り、互いの状況を共有し合いました。若者たちの年齢は30歳代から中学生で、いじめ・不登校、発達障害、精神疾患などさまざまな困難に立ち向かいながら道を探している本人・家族の思いに胸を締めつけられました。講演として、「さいたま教育文化研究所」副所長の白鳥 勲さんと同事務局次長の並木たい子さんのお話をお聞きしました。
白鳥さんからは、
病気でもない・育て方の問題でもない・自己責任でもない。人と対応するスキルなど統一的な力を持てないでいる若者が居づらい職場であったり、学校であるからだ。学校に行かないのは防御反応であり、それはそれで守られなければならないのだが、まだ一般的な考え方にまでなっていない。グチを言い合う/第三者の力も借りて外の風を入れる/出かけられるようならいつ出かけてもいつ帰ってきてもいい、仲間とのつながりから自分を発見できる/就労にあたって障がい者手帳を活かすことなどが道を開く手がかりになる、
などのお話をいただきました。
並木さんは、
特別支援学校で実践を積みあげられた経験を基礎に、子どもたちは想像よりは「つながり」を持っている。同じ仲間・かけがえのない存在ななんだという共感・障がいを持っていても同じ一人の人間なんだという認識に支えられることの大切さ。自分の力をどこで発揮できるか/居場所をどこにつくるか/希望があれば就労あるいは自分で何かするなどを考えてみることなどが手がかりになる、
などのお話をされました。
(文責:加藤彰男)
「道草の会」発足までの経緯について、世話人の方にまとめていただきました。
今回から「道草の会」として交流会を持ったのですが、春までは「(仮称)ひきこもり問題を考える会準備会」(略称「準備会」)として活動してきました。
「準備会」を結成したきっかけは、一昨年の群馬県母親大会の分科会でした。分科会の一つにひきこもりについて考えるものがあり、ここに参加した3名がそれぞれひきこもり傾向のある自分たちの子どもや孫のこれからの暮らしについての不安を語り合いました。そして、引き続きひきこもりについて考えあったり、状況を改善するために力を合わせたりする"場"をつくりたいということになりました。
そこで、同じ問題意識を持つ身近な人たちに呼びかけて最初の集まりを持とうと決めた時期にあの3.11東日本大震災とそれに続く福島第一原発事故が起こり、残念ながら延期とせざるをえませんでした。
やや事態が落ち着いた7月に、5人が初めての集まりを持ちました。集まった人はそれぞれが忙しく仕事や他の活動をしていましたが、子どもや孫のためにも同じ悩みを持つ他の人たちのためにも、なんとか自分たちの地域にひきこもりについての悩みや家族の対応について語り合ったり専門家の知恵を借りる機会を得たりするための会を作りたいと、思いは共通のものでした。そこで、正式な会の名称は後に決定することとして、「(仮称)ひきこもり問題を考える会準備会」として学習や交流の取り組みを何回か持つことを決めました。取り組みの中で少しずつ仲間が増えたら、その人たちと一諸に会のあり方について改めて相談していこう、ということにしました。
昨年9月下旬に持った初の交流会は「ひとりで悩まないで、考え合いましょう!」と題して、講師は呼ばずにとにかく「語り合う」ことに主眼を置きました。呼びかけ文として、チラシには以下のような言葉を載せました。
近年「巣立つ」ことができず家庭に引きこもり、人としての成長を円滑に遂げられない若者が増えています。親は先々を考えると悩みが尽きず、ゆっくりとその子の「育ち」を待つ「ゆとり」を持ち難いものです。
「経済効率第一」の社会から「一人ひとりを大切にする社会」に変わることが求められているのですが、まず身近で出来ることに力を合わせて一歩踏み出すことも大切です。寄り合い、知恵を出し合いませんか?
皆さんのご参加をお待ちしております。
この会では、各自が自分の子どもや孫の状況について、じっくりじっくり語り合いました。また、ひきこもり状況になった本人や保護者に対して援助活動を行っている人からの発言もありました。なかなかこのような「場」が無い中で、一人一人が手探りで歩んできた道のりが浮かび上がってくるような「語り」の重さに圧倒されるようでしたが、参加者の「ぜひ、会を続けて持って行きたい。」という要望は一致していました。
11月の2回目の集まり、今年1月の3回目の集まりも交流に主点をおき、心ゆくまで語り合いました。「機が熟した」と感じたので、3月に持った4回目の集まりは会の本格的発足に向けて名称や活動のあり方についての相談会とし、会の名称を「道草の会」と決めることができました。また、第5回交流会はさいたま教育文化研究所副所長の白鳥勲さんにぜひおいでいただき新聞にも報道してもらい広く知らせよう、ということも確認し合いました。1回目から4回目の参加者は、のべ31人でした。
このように、一歩一歩参加者で確認をし合いながら歩みを進めてきたのは、息長い活動をするために言い出した人にだけ頼る運営ではなく、会の必要性を感じた人が主体的・集団的に運営に関わる仕組みを作りたかったからです。
「ひきこもる若者たち―家族はどうかかわったら良いか?―」と題した第5回交流会の情報はそれまでの参加者から周囲の人へ、新聞記事を読んだ人が悩んでいる人へなど、様々なつながりで広がったようでした。当日はそれまでのこじんまりした交流会とは大きく変わり県内各地から30人の方にご参加いただき、椅子を足したりマイクを用意したりという嬉しい「誤算」となりました。
〔「道草の会」連絡先:真下久子さん Tel. 0270-24-1626 〕