パートナー通信 No.51

 地域の活動紹介  - ② 『放射能から子どもを守ろう安中の会』

 

 8月30日、安中市との「懇談・意見交換会」に参加した地元会員の今村井子さんは、市民団体「放射能から子どもを守ろう安中の会」の事務局員としても活躍されています。
 今村さんから「安中の会」の活動紹介をお寄せいただきました。

 

「放射能から子どもを守りたい… 
 ママたちの思い、その一心から」 今村 井子

はじめに

 みなさん、こんにちは!
 私たちは、今年(2012年)4月、「子どもたちを放射能から守ることは最優先されるべき事」という考えのもと、安中を拠点に結成された市民団体です。
 私たちの住むこの安中市(特に旧松井田地区)は、政府のモニタリング調査結果でも明らかなように、何カ所か空間放射線量が高い地域が点在しています。また、国からも、汚染状況重点調査地域として指定を受けています。(群馬県では、12の市町村が指定を受けています。)
 しかし、3・11福島第一原発事故直後には、放射能の飛散状況やその危険性について、何ら正しい情報は公開されませんでした。そして、結果的に私たちは、安中市での放射能汚染について何ら知らされないままに、我が子を雨の中へ外出させ、学校に通わせ、晴れた日には、いつものように普通に散歩に出かけるなど、事故直後、大気が放射能で最大限に汚染されている時に被曝するという最悪の事態を招いてしまいました。事故から1年半過ぎた今でも、後悔の念に苛まれる母親たちがいることを、政府はどう思っているのでしょうか。

 私たちはこれまで、「守る会」設立準備に至るころから7ヶ月あまりかけて、子どもを持つママたちや子どもたちへの放射線の影響を心配する市民たちを中心に、放射能について学び、対策を考え、行政に要望する機会をさまざま設けてきました。以下が、この間行ってきた活動記録です。

<食品分野>

  • 講演会「内部被曝を防ぐ調理法」
  • イベント「小豆を使ったおやつ作り」
  • 安中市シイタケ農家の方への聞き取り(その被害状況や対策、補償など)

<健康・除染分野>

  • 講演会「放射線の健康への影響」高木学校:瀬川さん
  • 座談会「野呂美加さんを囲む座談会」
  • 意見交換会「安中市の除染状況を考える」
  • 講演会「放射能汚染 安中市の現状と私たちにできること」県立県民健康科学大学:倉石先生
  • 上映会「内部被曝を生き抜く」

<市への要望、請願>

  • 安中市、市役所関連部署との懇談会
  • 安中市長との懇談会

※これまでも、文書で数回にわたり、放射能対策、除染についての要望書を提出しています。

<子どもイベント>

  • イベント「あんなかこどもサロン」
  • イベント「放射能ってなんだろう 実験編」

「3・11」前、後、そして未来

 3・11という原発事故は、私たちにさまざまなことを問いかけました。これまで、私たちが知らなかった(または、注視してこなかった)原発や放射能問題についてもそうですが、放射能を取り巻く社会環境について多くを問われた契機になったといっても過言ではないでしょう。経済性、利便性だけが重要視されてきた便利三昧の今までの暮らしは、多くの危険や矛盾の上に成り立ったものであったことに多くの人が気づきはじめました。そして、それを個々人が声にし「NO!」と訴えはじめたのが、毎週行われている脱原発アクションではないかと思います。私たちが放射能から体を守る調理について考える際に、今の日本が食の大半を輸入に頼っている現状や輸出本国では禁止されている農薬が輸入食材では利用され日本に入ってきている現状(ポストハーベスト問題)など、「放射能だけじゃだめ。放射能から、他のことも見ようとしないと」と話し合いを重ねてきました。日本の食のあり方は健全な状態といえるのか、人の暮らしの根本である衣・食・住について軽んじられている現実が今の日本にあるのではないか、そしてそれは、直接子どもを取り巻く環境でもある、ということを私たちは忘れてはならないと思いました。今も継続しているフクシマのかたがたの苦悩を決して忘れないためにも、私たちができることはたくさんあると私たちは思っています。

下仁田町の除染に関する報告を受けて

 下仁田町は、安中市と同様に国から汚染状況重点調査地域に指定されています。その下仁田町では、すでに放射能汚染の状況調査を詳細に国に報告し、除染費用数千万円の支給が決まりました。今では、その調査結果に基づいた本格除染が始まっています。
 「守る会」として、安中市の取り組みと下仁田町の取り組みとで何が違うのか、安中市でできることは何かを探るために、下仁田町に出向き、実際に除染を担当している方からお話を伺うことができました。お話をお聞きして改めて感じたことは、町として放射能問題にどう向き合うのかという姿勢がとても明確であるということでした。町として、放射能の危険を最大限に減らすために徹底的に除染しようという強い意志が、担当者のお話の随所に感じられました。具体的には、町民への地区別説明会の実施や、放射能の専門家を交えての除染対策の検討など、住民目線に立った丁寧な対策が練られていました。
 下仁田町は「下仁田ネギとこんにゃく」という地元特産品で観光に力を入れている町でもあり、風評被害にならないかという不安の声も少しはあったようですが、むしろ、今後の風評被害をなくし、安心してこれからも野菜を売っていくためにも、今きちんとし除染しておくことが大事だとの結論に達したそうです。

保育園合同保護者会の企画へ

 そこで「守る会」としては、下仁田町の取り組みから学んだことや安中市の状況をより多くの保護者に知ってもらいたい、子どもたちのこれからの生活をより安全なものに近づけるために保護者として何ができるかなど、地域の保護者の総意を集めるために「保育園合同保護者会」を企画することになりました。安中市の行政の方がたと共に、今、子どもたちのためにできることを、皆で知恵を絞りながら考えるきっかけにしていきたいと思っているところです。

群馬子どもの権利委員会のみなさんと共に

 私自身は、群馬子どもの権利委員会の会員でありながらも、仕事の忙しさを理由に『パートナー通信』だけのつながりになりがちな日常を送っておりました。ただ、私の住んでいる松井田町は、(超)少子高齢化で、近所に子どもがいない中での子育てでありまして、・・・4歳の息子との一対一の時間は、時々息切れすることも多く、親として自信をなくすことも多々ありました。そんな中で、『通信』は私の心の支えであり、穏やかな気持ちに戻れる時間をいつもいただける貴重なものでした。
 今回、放射能問題で安中で活動をはじめるにあたって改めて、「子どもの人権」と「原発」・「放射能」は相容れないものであると痛感させられました。
 3・11以降、『パートナー通信』には被災地の子どもたちへ思いを馳せ、常に暖かな言葉がつづられていました。そこで改めて私自身が、群馬子どもの権利委員会の皆様と共に、「子どもの人権」という視点から、3・11を問い直せたらと思っています。
 これからも、多くを学ばせていただきながら、共同しあえたらと思っております。

その後の取り組み


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