パートナー通信 No.52
「子どもの命と健康を守るために…
放射能対策、はじめの一歩…」市民団体「放射能から子どもを守ろう安中の会」
事務局員 今村井子
パートナー通信』No.51の地域の活動紹介のコーナーで紹介した「放射能から子どもを守ろう安中の会」の事務局員で本会会員の今村井子さんから、その後の取り組みについての報告が寄せられましたのでご紹介します。
放射能から食を考え、食を見直す
~「モンサントの不自然な食べ物」上映会
300人超の参加者~
昨年11月17日(土)、18日(日)に、遺伝子組み換え市場の90%を握っているモンサント社のドキュメンタリー映画の上映会を開催させていただきました。群馬子どもの権利委員会の皆様にもご協力をいただきましたおかげで、両日で300人超の参加者に来ていただけることができました。遅ればせながらこの場を借りましてお礼を申し上げたいと思います。
その際150人以上の方々がアンケートを寄せていただき、「このショッキングな現実を知らなかった。」「とても勉強になった。」「もっと、多くの人に知ってもらいたい、知らせたい。」という意見をいただくことができました。
また、なかなか大手メディアでは取り上げられないドキュメンタリー映画を、今後も是非上映して欲しいとのご意見を多くいただきました。
主催者としては、今回の上映会を実施するにあたって、事務的にも全く初めてのことばかり、不安を抱えながらの取り組みだったのですが、多くの方々から嬉しい反響をいただいたことで、一主婦一ママでしかない自分たちの活動にも、少しの自信を持つことができました。
皆様からいただいた貴重なご意見を基に、今後もより時代を映し出すようないい映画を見つけ、上映会を開催していきたいと思っております。また、その際にはどうぞご協力のほど、よろしくお願いいたします。
モンサントから、改めて放射能対策を問い直す
~保育園の土壌測定結果から~
1 保育園の放射能対策実施に向けて
~合同保護者会の開催~
昨年のパートナー通信にも今後の予定として掲載させていただきました息子の通う保育園と近隣の保育園の二園で、「放射能対策合同保護者会」を昨年12月13日に実施しました。
というのも、保育園の園庭の土壌測定をしたところ、キロあたりセシウム137が800ベクレルを超える高い数値が検出され、(近隣の保育園で3000ベクレル)早急に園庭の除染(土をはがし入れ替える作業)を実施してもらいたいと考えたからでした。
この情報を、一保護者だけでなく多くの保護者と共有するところからはじめ、その対策を考える最初の機会として考え設定したのがもともとの意図でした。
しかし、当初考えていた内容は二転三転、いろいろなところからクレームがあり、直前に保護者への案内のお知らせを書き換えるなどを余儀なくされ、結果的には5日前にお知らせを配り終え、何とか実施にこぎ着けるという形になりました。
そして、様々なクレームが、私たちのもとに寄せられました。
- 「保育園の名称は出さないでくれ。保育園の名前が出ると、保育園主催と思われる」
(「放射能から子どもを守ろう安中の会」主催と記載してあってもだめ?) - 「こういうことをやると、脱原発とかって思われるのではないか?中立な保育園でどうなのか」
(お知らせには「脱原発」といった文字はどこにもないのに?)
などなど。
結局、私たちは、再度園長と話し合いを持ち、何か問題が起こったらすべて「守る会」の責任としてもらっていいということ、脱原発の文字はないし、あくまで子どもたちのための除染対策を皆で話し合いたいということであり、保育園で一番大事にしなければいけないことは命と健康を守ることではないのか、と言うことを確認させてもらい、再度了解を得ました。
この一連のクレームから私たちが学んだことは、「名前が出ると今後何か問題が起きたときに困る」という特に理由のない漠然とした「地域の空気」の難しさや、そのことで、「責任をとらされるかもしれない」、「ここの保育園だけ汚染されているように思われると困る」といったようなことが保育園の当事者としては「たいへんやっかいなこと」なんだということでした。
地域として、放射能について漠然とした不安を持ちながらも、すぐに健康被害が出ないことや、実際それが何十年後に出るかもしれない、といったわかりにくいことへの対応の難しさも改めて感じました。
2 20人の参加者 2時間半の意見交換
~立場を超えてつなげた意見や思い~
正直なところ、会を開催するだけでこんなにたいへんな思いをするなら、いったん保留にして仕切り直しては、という意見もありました。しかしこの間、この会の準備のために測定からデータ収集までたいへんな準備をして来たことを考えると、とにかくやってみよう。集まるのは一人でもいいから、とにかく来た人に知らせていこう、ということになりました。
しかし、当初のプログラムには、二園の園長からの挨拶や事故直後からの除染の実際などの報告が含まれていて、会主催であっても両保育園園長名も入ったものであったのが、それがすべて無くなり「保育園の除染」といった一般的なお知らせになってしまったことは、保護者にとって参加する必要性の薄いものにつながってしまったように思いました。また、双方の園長自身から保護者に向けて、会への参加への呼びかけをいただけなかったことも大きかったと思います。
放射能対策会議の内容と目的はとてもシンプルなものでした。
報告内容は、保育園の土壌汚染の科学的データと除染の具体的な方法についてであり、除染の方法もある程度の実現の方向で提案できる内容を兼ねていました。
しかし、当日は、お知らせが直前になったことや時間帯が平日の夜ということもあったためか、参加者は20人、そのうち保育園関係者は5人という結果に終わりました。(対象保育園の家庭数は約80) 参加者が思ったより集まらなかったことは、主催する側として、残念な気持ちでなりませんでした。いろいろな場面で、放射能に対する危険度を訴えてきた会でしたが、想像以上に参加者は少なく、放射能に対する意識の「風化」も正直感じました。
一方で、私たちが今回独自に行った園庭の土壌調査の結果や専門家の意見や判断を、公の場で発表、共有できたことはとても意義のあることだったのではないかと思っています。
以下、参加者して下さった方々の意見の抜粋です。
- ◎保育園関係者「自分の子どもだけでなくすべての子どもたちを守りたい。この土壌調査の結果を除染につなげていきたい。」
- ◎保育園関係者「自分の子どもだけでなくすべての子どもたちを守りたい。この土壌調査の結果を除染につなげていきたい。」
- ◎学校関係者「放射能の影響が強い小さな子どもほど、早い対策をとった方がいい。」
- ◎地域の市議会議員「安中市の空間放射線量の測定方法が、生活実態に則った測り方をしていない。近隣の妙義児童館では、すべてのグランドの土を5㎝はいで、土を入れ替えて除染している。市議会でも保育園の除染を要望している。是非当事者からも声をあげて欲しい。」
- ◎他市町村の除染業者「3・11以降、安中市の皆さんが真剣に放射能汚染を減らそうとしている意識が感じられない。まず、きちんと測り、危険を知る事が大事。私たちは3・11以前に戻すために命がけで除染している。安中市の人たちは、まるで他人事のように発言していないか。」
- ◎地域の方「現在でも0.15ある。安心できるレベルでない。事故前に戻すことが私たちにとって当然の権利ではないか。しかし、測ろうとすると地域で怒られたりもする。だからこそ、早く署名などして私たち自身が動いていかないと、声を上げていかないと。」
- ◎保護者「将来息子に『放射能の危険が解ってたのに、お母さんは何もしてくれなかった』と言われないように、今自分ができることを頑張ってやっていきたい。」(*会場から拍手がわきおこる)
この会は、その主目的だった「保護者の総意を集めながら保育園の除染対策を考える」という所までには至らず失敗に終わったとも言えるかもしれません。しかし、いろいろな立場の20人が意見を交わせた、一同に会することでつなげた思いは、参加者の皆さんに何かを残したのではないかと思っています。
〔自分自身への宿題として〕
「日常の中で、子どもの人権や放射能を話題にするためには」
同じ保育園に通うママからでさえも、「放射能から子どもを守ろう安中の会ってどういう団体なんですか?どういう人が入っているんですか?」と怪訝な顔で聞かれました。
同じ保育園に通う保護者同士であっても「信頼」より「不審」を先に抱かれることがあります。
日々の子育てや仕事、生活でいっぱいいっぱいの毎日を過ごしているママたち。目の前のことに追われる毎日。でも、それでも、3・11を忘れない、福島の子どもたちを思う気持ちを忘れずにいたい、と思いますし、まわりのママたちにもそれを伝えていきたいと思っています。
放射能の問題は、子どもの人権に関わる大事な問題と、前回のパートナー通信で書かせていただきました。でも、その大事な問題を、地域で、保護者で、どうきちんと話し合っていけるのか。
私たちの会だけではなく、もっと多くの、すべての大人たちが向き合っていかなければならない問題であることも痛切に感じながら、日々悩みながら取り組んでいるところです。
まず、私自身ができることからと、保育園園長への要望書提出や、保育園保護者会の役員招集のお願いをしました。あえて、会の名前でなく一保護者としての要望として、そこで話し合いの場がもてないかと模索し行動を起こしました。
同じ保育園に通う一人の保護者としての悩みから、まず共感、共有できないか・・・そこからまたスタートしたいと思っています。