パートナー通信 No.56

地域の活動紹介―②「放射能から子どもを守ろう安中の会」から
「NPO法人Annakaひだまりマルシェ」設立へ 今村 井子

 昨年は、「放射能から子どもを守ろう安中の会」としての活動報告を、パートナー通信51号52号に掲載していただきました。一市民として「放射能」を問題にし、活動することの困難さなどの報告をさせていただいたのですが、一方でこのパートナー通信に書かせていただくことで、私自身が自分の課題を整理し、前に進むエネルギーを頂いたことに、まずお礼を申し上げたいと思います。
 「書く」という行為のありがたさを改めて再認識させていただいたように思っています。

「放射能から子どもを守ろう安中の会」をより発展させ、前に進めるために

 この一年間「安中の会」では、市への除染要望をはじめ給食の放射能検査や、国への「被災者支援法」への働きかけ、放射能関連の上映会や学習会など様々な取り組みを駆け足で行ってきました。その中で、市民の皆様にいろいろな形で協力して頂き、支えて頂き、意見や要望も頂きました。そして、これらのことを通して改めて考えさせられたことは、3・11以前の生活を振り返る中での、様々な「気づき」でした。
 子どもたちを健やかに育てたい・・・親なら誰もが思う願いですが、いざ自分たちの周りを見回してみると、食の安全や環境問題、いじめや体罰などの教育問題、子育てのしにくい社会、政治・・・どれ一つ取り上げても、子どもたちを取り巻く問題は山積し、3・11以前から厳然と存在しているということ。私たちの抱える問題は、放射能だけではないのではないかということでした。

「NPO法人Annakaひだまりマルシェ」設立へ

 そこで、「安中の会」で中心になって活動していたママたちで話し合いを重ね、「食も、環境も、教育も、地域でつながり問題を解決していけるような場所を作ろう」と、NPO法人Annakaひだまりマルシェを立ち上げることになりました。
 また、放射能の問題を取り上げない訳ではなく、むしろNPOという公的な役割を担う市民団体を作ることで、「放射能問題」も今後もきちんと取り上げていこうということになりました。
 そこで、いったん3月で、会員や市民の皆様には「安中の会」の発展解消を総会で説明させていただき、新たな「NPO法人Annakaひだまりマルシェ」へのご協力をお願いすることになりました。

松井田商店街の空き店舗を「人が集う手作りカフェ」に

 私が住むこの安中市松井田町は、5年後(平成30年)には高齢者人口が全人口の3割以上となり、一方で子ども人口は1割になるという、少子化を伴う超高齢化を体現している地域で、松井田商店街でも年々、空き店舗が目立つようになっていました。
 そこで、 この松井田商店街にコミュニティースペースを作ることで、町に様々な世代の方が集うきっかけ作りをするという取り組みを始められないかと、空き店舗を探し始めました。喫茶店が1軒もない松井田商店街で、軽食やお茶を飲みながら会話の弾む「町の縁側」的存在になることを目指したいと、大家さんのご理解をいただきながら、ドラッグストア跡地の店舗の改修をなんとか終え、11月にようやく「手作り感満載?カフェ」の開店にこぎ着けることができました。
 とにかく資金ゼロでのスタートなので、会員の持ち寄り金や、カンパのお願い・・・自分たちができることは自分たちでと、店舗内のペンキ塗り、床のモルタル塗り、などなど皆さんの協力でできあがったカフェといえるかもしれません。

みんながカフェに集い、助け合える、ほっとできる場所をつくりたい

 現在は、地域の方々の話を伺ったり、様々な方々のニーズを拾いながら「地域に根ざした活動」を目指して活動しているところです。
 先日は松井田町の区長さんが、この地域支え合い体制つくりの応援をするよと、連名の署名を市に提出していただくなど、ありがたいご協力もいただき、少しずつですが、動き出している予感があります。
 群馬県の各市で、児童館もない、ファミリーサポートセンター事業もないのは、安中市だけですが、まず地域の中で住民ができることを探っていきたいと思っています。
 もっと、気軽に土日も、夏期休業中も子どもが集まれる場がほしい、子どもだけでなくいろいろな人が集い、自由に楽しめる場があればと思います。
 高崎のNPOでは、毎日居場所作りのイベントを企画することで、高齢者も障がいを持った子どもたちも、不登校やニートの方たちも集い、参加できるような取り組みが始まっています。「認知症カフェ」などの名称で、気軽に立ち寄れる場を作ることで、家族への負担軽減の企画作りもしています。この安中でも、そのような居場所作りを目指したいと思っています。

NPO法人Annakaひだまりマルシェで、夢を実現したい

 3・11以降、これからのコミュニティーの大切さを実感し、子育て不安も、高齢者問題も、食の問題も、安全安心も、普段から顔の見える地域だからこそ助け合い、乗り越えられるのではないかと思っています。
 息子が3歳の頃、同じ3歳の松井田町在住のお子さんが虐待事件で亡くなるという悲しい事件がありました。何とかして、助けられなかったのかと、今でも同じ地域に住む母親として忘れられません。それが、私の活動の原点といえるかもしれません。「もう2度と・・・」という気持ちでいます。

 おそらく、高齢化の波は日本全国どこでも、さけられないことですが、この地域作りが全国の動きに波及できるくらいのパイロット的役割も果たせたらなんて、夢みたいなことも(子どもたちでペンキぬり) 考え始めました。私の実家のある神奈川県平塚市に住む母も、体が不自由な中、なんとか自宅で生活していますが、もし平塚にもこのような市民が気軽に立ち寄れるコミュニティースペースがあればなあと思うこともしばしばあります。
 そのためにもいろいろな方のニーズや意見をいただく機会をつくり、進めていきたいと思っています。
 私自身もこれからの安中市をもり立てながら、皆さんの力を集め「地域のセーフティネット作り」につなげていけたらと思っています。

 正直なところ、自分がこういった活動をスタートさせることになるとは夢にも思わなかったですが、3・11以降、地域の問題を地域で解決し、乗り越えるための様々な地域の役割を考えたいと思ったのも事実です。忙しさを理由にせず、きちんと日々のことに向き合い、考えることを大切にしたい。それは、子育ての問題、高齢化の問題、根っこは同じではないかと思うのです。私自身の反省でもあり、息子たちに今の大人としての姿勢を見せたいという気持ちも大きいです。
 数年前、ふと考えました。自分のこれからの人生は、私が生まれてきた意味が最大限に生かせるように、「社会のためになにができるか」考えて生きようと。

 でも、私一人の力では何も始まらず、無力です。そこで、大人としての夢(未来の社会を、子どもたちに胸を張って手渡せる社会にしたい)に、向かって楽しみながら活動しているところです。


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