パートナー通信 No.60

目次

「合同記念集会」2日目の報告から 加藤彰男

1 保育をめぐる問題

(小泉広子氏・桜美林大、熊倉聡氏・保育士、浅井春夫氏・立教大)
 子ども・子育て関連3法の新自由主義的特長は条件整備に対する国家責任の後退+教育内容統制である。その問題点は、 ◆保育の現物給付から金銭給付へ、設置基準の緩和-企業参入への道、保育労働の非正規化・非専門職化、保育の公定価格の低下であり、 ◆乳幼児保育に、義務教育の準備段階としての「学校教育」を取り込むことにより、満3歳以上の子どもを対象とした乳幼児期の教育課程の国家による内容統制を明確化、などである。「新制度」はこれからの社会・自治体のあり方と対応を問われる分岐点となってきた。

2 教育をめぐる問題

(小野方資氏・福山大)
 福山市立のある中学校の「生徒指導規定」は「全4章・10条で110を超える小項目」によって生徒の学校内外の生活や「問題行動」に対する特別指導を事細かに「規定」している。広島県教委は生徒指導体制のあり方に関連して規定の「ひな形」を出しており、各学校での「規定」作成が相次いでいた。学校には「例外なき指導・毅然とした指導・ゼロトレランス」などの言葉の前に異論を挟めない息苦しさがある。子どもたちは、◆先生は話を聞いてくれないと思い、◆罰や排除が日常化し問題行動を繰り返し、◆「かーちゃん、めんどくさいけー」と、学校・教師に期待しない、といった状況に追い込まれている。

3 子どもの自由世界の喪失の問題

(増山均氏・早稲田大)
 子どもの権利条約第31条「休息・余暇、遊び、文化的・芸術的生活への参加」から見た日本の子どもが直面する困難は、◆「子ども」へのまなざしの変容―寛容さ・許容度の縮小、◆「安全・安心」の強調と子どもの監視・管理の拡大、◆子どもの生活の「学校化」「学習化」、◆「放課後児童健全育成活動」の拡大、◆とりわけ「児童期(ギャングエイジ期)」の子ども仲間集団・仲間文化・地域生活が全く失われている、などである。
 また、「3・11からの教訓」に学ぶとして、❤被災地の子どもを癒し・励まし・元気づけたのは「遊びと文化」であった。❤エアポケットに現われた「子どもの自由世界」と子ども組織の展開(小学校体育館の避難所での『ファイト新聞』)、❤被災地の子どもからの発信(気仙沼高校生団体「底上げYouth」)など、子どもの力への注目が集まり、子ども観の転換が求められている。

4 子どもに対する暴力をめぐる問題

(中川明氏・弁護士)
国連子どもの権利委員会・一般意見13号「あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利」(2011年)に結実するまでのさまざまな国際人権文書の歴史をたどりながら、「子どもに対する暴力はいかなるものも正当化できない」。また、体罰が、家族・家庭の中、学校等の教育施設の場、福祉・擁護施設や矯正施設等の場で起きている。「体罰」とは「どんなに軽いものであっても、有形力が用いられ、かつ何らかの苦痛または不快感を引き起こすことが意図されたすべての罰」と定義し、体罰その他の残虐なまた品位を傷つける形態の暴力から保護される子どもの権利が保障されなければならない。

5 高校生の貧困をめぐる問題

(鈴木敏則氏・民主教育研究所)
 「朝6時からコンビニ、9時から回転寿司、学校が終わって22時から飲食店で午前2時までのトリプルワーク、睡眠は駅のトイレ」という事例をはじめ、経済的困難の解決の見通しが立たず、兄弟や父母を責め、自分自身を責める定時制高校生たち。お金がなく修学旅行や部活動を断念したり、高校生活の継続にも不安を抱えていて、一日一食は定時制の給食のみという生徒もいる。学びと健康のセイフティーネットという役割を果たせているか不安になる。奨学金ですら生活費や通学費に使わざるを得ず、しかもいずれ返済しなければならない「教育ローン」である。「高校生首都圏集会実行委員会」や関西の高校生が、関係省庁との対話や院内集会などを開いている。


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