パートナー通信 No.62

〔子どもととらえた自然〕
どこまで伸びる? たんぽぽの茎
群馬理科サークル 宇敷輝男

 「総会」第二部で、沼田の宇敷さんが「たんぽぽ」の話をされていました。本当に長く伸びるたんぽぽの茎を探して活躍した子どもたちのことを振り返っていただきました。

◆たんぽぽ、いろいろ

 子どもたちと散歩していて、日本たんぽぽがどんどん減って、西洋たんぽぽが増えているのが気になった。理科サークルの人に教えてもらった方法で、子どもたちと日本たんぽぽを探していた。川田小の学区でも、日本たんぽぽのある場所は限られた場所だけになっていた。
 「日本たんぽぽを守るためにも、西洋たんぽぽを見つけたら、根まで掘って、コーヒーにして飲んでしまおう」と言って、たんぽぽコーヒーをつくった。たんぽぽコーヒーをつくる時は、鼈甲(べっこう)あめづくりもセットにすると、子どもたちも夢中になった。あめをなめながら、たんぽぽコーヒーを味わうと、本当に幸せなひとときがやってくる。
 日本たんぽぽを探していたら、シロバナたんぽぽにも出会った。関西の方には、シロバナたんぽぽがたくさんあると聞いていた。片品の友人から、利根にもシロバナたんぽぽがあると教えてもらったが、自分では見たことがなかった。でも、子どもたちは、校庭の鉄棒の所にあるのを知っていて教えてくれた。また、上野(うわの)に行く道で一面に咲いているのを見つけた。利根村でも一面に咲いている所を発見した。
 たんぽぽコーヒーをつくるために、たんぽぽの根を掘っていたら、根がどこまで伸びているのかも気になった。家のまわりにあるたんぽぽの根も掘ってみた。80センチぐらいまで掘ったが、ちょっと切れてしまった。子どもたちも、できるだけ長く根を掘ってきた。いままでで一番長いのは、利南東小の角田恵ちゃんが持ってきた根だ。105センチもあった(98センチの所で切れてしまっていたが)。
 たんぽぽのことでは綿毛がどこまで飛ぶのかも調べてみたい。

◆たんぽぽ探し

 さて、たんぽぽの茎がどこまで伸びるのかということだが・・・
 93年のころだったかな。家族で散歩していたら、材木置き場の大きな木と木の間から、茎の長いたんぽぽがたくさん出ていた。4人で競争して長いのを探した。その時は、妻が一番長いのを見つけた。70センチぐらいだった。その後、道端やりんご園など、たんぽぽの長いのがあると、いつでも競争して取るようになった。その時、私は川田小で4年生を教えていた。妻は、沼田小で1年生を教えていた。
 子どもたちに話すと、子どもたちも夢中になって長い茎のたんぽぽを探した。長いのを見つけると、新聞紙でていねいにくるみ、宝物でも持つように大切に持ってくるようになった。お母さん方も夢中になった。
 「先生、たんぽぽを見つけると、つい長さが気になって、車をとめて、見てみないと落ちつかないんです」
と楽しそうに話してくれるお母さんもいた。

 その年、一番長いたんぽぽを持ってきてくれたのは茂木清晃君だ。90センチを越えるものがあるなんて、信じられなかった。生活ノートに蛇のようにとぐろを巻いていたたんぽぽにもびっくりしたが、そのたんぽぽがすっと立っているところも見たいと思った。
 私も妻も子どもたちに負けないように、たんぽぽを探しまわった。87センチというのを見つけた時は、やったと思い、思わず跳びはねて喜んでしまった。でも、90センチを越えるたんぽぽに会いたかった。
 次の年もたんぽぽ探しをやった。妻は川場に転勤になり、川場でもたんぽぽ探しをやった。その年は90センチを越えるたんぽぽには、私たちも子どもたちも出会えなかった。

◆まだまだつづくたんぽぽ探し

 また次の年もたんぽぽ探しをやった。川場小の子どもたちと川田小の子どもたちは、学区以外でも、長いたんぽぽ探しを始めていた。前橋に買い物に行くと、帰りには赤城の方に入ってたんぽぽ探しをした。片品のおじいちゃんの家に行くと、おじいちゃんも巻き込んでたんぽぽ探しをした。
 そんななかで、川田小の生方幸司君が100センチのたんぽぽを持ってきた。まさかと思っていた1メートルのたんぽぽに、本当にびっくりした。お母さん方からも、
 「あんなに長いたんぽぽが、本当にあったんですね。なんか信じられません」
という声が届いた。
 私たち夫婦も、生方君が神社の近くで見つけたというヒントを参考に、いろいろな神社を探した。1メートルのたんぽぽは、いろいろなところで話題になった。
 翌年、私は利南東小に転勤になった。6年生の担任になった。たんぽぽの話をいろいろした。そうしたらなんとシロバナたんぽぽがプールサイドに咲いていて、びっくりした。たんぽぽの茎の長いもの探しにも、すぐに夢中になった。5月20日から始めたが、23日には、91センチのたんぽぽを川田達也君が持ってきた。30日には、98センチのたんぽぽを川田正矩君が持ってきた。教室にはたくさんの長いたんぽぽが磁石でさげられた。90センチ以上のものだけでも10本以上になった。そして、31日には1メートル3センチのたんぽぽが届いた。吉野君と川田君で見つけたのだ。生活ノートに、次のように書いている。

 きょう、正矩君ちへ、遊びに行きました。たんぽぽをさがしに、ヒミツの場所に行きました。どんどんと、おくに入っていったら、2本長いのがあって、とってみたら、めちゃながかったです。そして、はかってみたら、1本は104センチでした。ちぢまぬように水につけておきました。そして、どっちが長いほうをもらうかジャンケンしたら、ぼくがかって、もらいました。

吉野 奨

 97年の5月11日に、沼須の砥石神社の近くで、私たち夫婦は1メートルを越えるたんぽぽを見つけた。長いたんぽぽが何百本とあった。一番長いのは103センチだった。また、川場小の星野祐樹君は、家の裏庭で105センチのたんぽぽを見つけた。その時、3年生だった祐樹君は、
 「先生、先生、あったよ、あったよ」
と言いながら走って妻に報告してくれたそうだ。
 99年、砥石神社のところは宅地として造成されてしまった。草ぼうぼうの桑畑だったので、長いたんぽぽがたくさんあったのだ。妻とも、「また、新しいところを見つけないと、子どもたちに負けちゃうね」と話し、別のところを探し回った。でも90センチを越えるたんぽぽも見つけられなかった。
 砥石神社のところにも行ってみた。ほんの少しだけ、造成されないところがあった。かけのぼってみた。すみの草の間に、すっくと伸びたたんぽぽがあった。すぐ近寄り、手をのばした。長いぞと思った。できるだけ根元からとった。近くにも、もう1本長いのがあった。103センチだった。これで子どもたちには負けないと思っていた。
 しかし利南東小の千明敬輔君が107センチのたんぽぽを見つけてきたのだ。

 たんぽぽの茎はどこまで伸びるのか、私にはわからない。でも、まだまだ探し続けてみたい・・・と言う宇敷夫妻の笑顔はきっと子どもたちの笑顔と同じですね。


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