パートナー通信 No.64

市民・NGO報告書をつくる会「学習会」に参加して(2015年11月28・29日)
  石 橋 峯 生

 私は、2日目(11/29)の討論に参加しました。私には所属する専門委員会部会はありません。門外漢のような立場ですけれど、群馬子どもの権利委員会の一会員として、地方の具体的な事実が大事であること。子どもの事実が私たちの運動の主人公であること。主人公が中心の活動が大事であることを、事々に発言しました。

学習会ではっきりしてきたこと

  1. 教育や子育てを将来の労働力育成としか捉えない「人材」養成論のもとで「教育」が学力向上へ一元化され、また、子育て全体が、規格化され細分化された商品の売り買いの場へと変質していることです。このために、子どもに直に接して働く大人である教師や保育士の地位が劣化せしめられ、学校などの教育インフラがリストラされ、さらには、生徒指導が非教育化していっていることがはっきりしてきました。
  2. 学校や保育、そして、社会的養護のための施設が全体として縮小し、子どもの成長発達を日常的に実現するための体制がやせ細っていく一方で、いじめや自殺等の個々の問題に関連して子どもの権利を救済するための仕組みが肥大化していることです。政府によって整えられた救済策も、もともとは政府の失策を覆い隠すための「イチジクの葉」でした。しかし、それでもなお、関係者の努力によりよりましなものにつくり変えていけることもわかりました。

私たちの大きな課題

  1. 子どもが現に直面している困難を私たちがどのような指標を用いて国際社会に向けて表現していくかという課題:
     これまで指標として用いてきた校内暴力、いじめ、不登校・登校拒否、そして自殺の4つの指標が現在でも有効。しかしそれだけでは不十分で、子どもの自己肯定感の低さ、それに起因する精神疾患、ADHDや愛着障害の増加も指標にすることを確認。
  2. 乳幼児期、小中学校、高校、高校卒業以降の時期それぞれについて、子どもが直面してい る困難の独自の性格を明らかにしていかなくて はいけない。例えば、①幼保一元化のもとで進められている保育の「教育化」が乳幼児の発達に何をもたらすのか。②小中の教育が学テ成績向上だけを目指すようになっている中で、そして、かつての生活指導が消滅する中で、子どもはどうなってしまうのか。③高校卒業以降は、奨学金という名前の借金以外は高等教育を受けるための支援が存在しないことが貧困層の青年の将来にどれほど暗い影を落としているのか。
  3. 現状を変えていくコンセプト
    「子どもが問題を起こしたときこそが、本当はよい学びの機会となるはずなのに、処罰の対象にしかならないのはおかしい。」「高校での生活指導が大きな意味を持っていたのは実感できたが、もう一歩すすんで高校生の学びを組み替えていくことができなかったのか」。 ―子どもが主体的でありうる人間関係の上に、困難を克服できる学びを大人と一緒につくりあげていく、「学習権」あるいは「学ぶ権利」の意味を再構築し、現状を変えていく力をもっともっと持たせていく必要がある―と確認。

「つくる会」運動の課題

  1. 専門委員会部会の仕事を活性化すること。
  2. 地域の取組みを強化しなくてはいけない。「第3回最終所見がせっかくすぐれたものだったのに、これを地域で広め、自治体にその実現を迫っていく活動ができなかった。」「子どもの権利条約といっても政府や自治体が動かないという現状を変えていくために、市民社会に条約や最終所見を理解してもらい、市民社会の応援をもらえるような運動にしていかなくてはいけない。」  これらの発言はつくる会のこれまでの活動の弱点がどこにあったのか、そして、なぜ、その弱点を克服しなくてはいけないのかをよく示しています。
  3. 12月から開始される政府との非公式協議を意味あるものにする。
     群馬子どもの権利委員会がしてきた仕事が、全国に広がり始めている・・・か?
     全国の同じような闘いが、つくる会の中央に届きはじめた・・・か?

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