パートナー通信 No.65

地域の活動紹介「家庭教育支援条例」について考える パネルディスカッション

 群馬県議会の「家庭教育の支援・こどもの未来に関する特別委員会」で「家庭教育支援条例(案)」が審議されるということで、「教育ネットワークぐんま」が、1月31日(日)に「家庭教育支援条例について考えるパネルディスカッション」を開催しました。参加者の交流・討論をもとにまとめられた「特別委員会」への申し入れ書を紹紹介します。なお、この条例案は「ぐんまの家庭教育応援条例」として、3月県議会で可決・成立しました。

2016年2月22日

家庭教育の支援と子どもの未来に
関する特別委員会 委員 各位

憲法・子どもの権利条約・1947教育基
本法を生かす教育ネットワークぐんま

「家庭教育支援条例案」に関する申し入れ書

 去る1月31日、前橋市で「教育ネットワークぐんま」主催の「家庭教育支援条例」を考えるパネルディスカッションが、45名の参加者のもとで開催されました。
 参加者は幼児を抱える母親、保育士、現役教師、OB教師、塾講師、法曹関係者、医療関係者、地方議員など多岐にわたりました。
 7名のパネラー・フロアーからの発言全てが条例案に関して批判的なものでした。その論点は以下の通りです。

  1. ① 今日の家庭教育を困難にしている社会的背景の分析が欠落しており、その責任の主体がどこにあるか明確にされず自己責任論に終始している。「必死で頑張っている親にはプレッシャーになるだけ」というある母親の発言が参加者の共感を呼んだ。
  2. ② 日々、困難さを増している家庭教育を支援する教育行政の役割と具体的な支援の方法を明示し、その中身を県民に提示することこそが急務ではないか。
  3. ③ 条例案全体が憲法第13条の「個人の尊重」の精神から逸脱している。「支援」の名の下に画一的な家庭教育を押しつける恐れがあり、「個」の領域である家庭教育に公権力が介入することになりかねない。
  4. ④ 保護者や祖父母に努力義務を課しているのは、「支援」の範囲を逸脱するものである。個々の家庭で子どもにどのような教育をするかは、それぞれの家庭・親の価値観に依拠するものであり、公権力が介入すべきではない。また、核家族が主流となっている今日、祖父母に「支援や協力」の努力義務を課すのは、伝統的な家族観を押しつけることにつながる。
  5. ⑤ 地域住民や事業者にまで努力義務を課しているが、教育行政の責任主体を曖昧にすることになる。また、県や市町村の施策への協力義務は無条件とされており、行政への白紙委任を求めるものであり、不当である。
  6. ⑥ 既に条例を制定した熊本・鹿児島・静岡・岐阜の4県では立場の異なる県内外の有識者から意見を徴し、パブリックコメント等を経た比較的丁寧な手続きを経て条例を制定しているが、本県の制定過程は拙速すぎはしないか。
  7. ⑦ 先行する4県の条例と本県の条例案の内容はきわめて類似しており、親学推進協会・家庭教育支援議員連盟の考え方とほぼ同じことから、特定の政治的意図をもった運動体が条例制定を推進しているのではないかとの疑念を持たざるを得ない。

 以上の論点を踏まえるならば、今回の条例案には反対せざるを得ません。貴委員会が少なくと もパブリックコメントを実施することを含め、今議会での議決にこだわらないで、慎重な審議を 行っていただくよう申し入れます。


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