パートナー通信 No.71

目次

「遊び」が育ててくれるもの「子どもの権利条約31条」を通して子どもの生活を見直す

「遊んでばかりいないで勉強しなさい!」
「勉強ばかりしていないで遊びなさい!」

 皆さんは、子や孫に向かってどちらを言うことが多いですか。それとも、地域のクラブ・スポーツや学校の部活動、あるいは塾やお稽古事でそれどころではない、といったところでしょうか。
 英語の授業の冒頭でこんな挨拶をしたのを覚えていますか。
先生: How are you today?
生徒: I am fine, thank you. And you?
先生: I am fine, too. Thank you.
 ところが、最近の子どもたちの中には I am tired.(疲れた)とか I am sleepy.(眠い)と正直に答える生徒が多くなっていると聞きます。子どもたちは大人以上に過密なスケジュールで息つく暇もない日々に追われていると言えそうです。
 とは言え、子どもたちは遊びの名人ですから何かしら「自分の時間」を作り出しているはずです。でも、その時間がどんな「中身や場所」で過ごされているのか、「子どもの権利条約」の視点からもう一度見直してみる必要があると思います。

「子どもの権利条約31条」(国際教育法研究会訳)
1 締約国は、子どもが、休息しかつ余暇をもつ権利、その年齢にふさわしい遊びおよびレクリエーション的活動を行う権利、ならびに文化的生活および芸術に自由に参加する権利を認める。

2 締約国は、子どもが文化的および芸術的生活に十分に参加する権利を尊重しかつ促進し、ならびに、文化的、芸術的、レクリエーション的および余暇的活動のための適当かつ平等な機会の提供を奨励する。

 国連子どもの権利委員会は、「子どもの権利条約」の条文について「ゼネラルコメント(総合的解説)」を出しています。31条についてのコメントの中から少し抜粋してみます。

◆休息:休息の権利は、子どもたちの最大限の健康と幸福を保証するために、子どもたちが、仕事、教育、あらゆる種類の激しい活動からの十分な小休止を与えられることを求めている。
◆余暇:余暇は、自由で束縛のない時間として定義され、公式の教育、仕事、家庭内の責任、生活を維持する他の役割の実行、個人の外部から指示される活動への従事を含まない。言いかえれば、余暇は、主として、子どもが思うように使用できる自由裁量の時間である。
◆遊び:子どもたちの遊びは、…子どもたち自身によって開始され、管理され、組み立てられる。遊びは、機会があればいつでも、どこでも行われる。…遊び自体は、非強制的なものであり、内発的な動機によって行われ、…それ自体のために企てられる。…遊びの主な特質は、喜び、不確実性、挑戦、柔軟性、非生産性である。
◆レクリエーション活動:レクリエーションは子どもが自発的に選択する活動や体験によって構成される。子どもがそれらを選択するのは、直接的な満足が得られるためか、それらを達成することによってなんらかの個人的価値や社会的価値が得られると考えるためである。…レクリエーション活動は大人たちによって組織され、管理される場合も多いが、レクリエーションは自発的活動でなければならない。

 言いかえれば、「こどもには、自分がしたいと思うことや楽しいと思えることをあきるまでやったり、何もしないでのんびりと寝転がったりする権利がある」(『こどもの権利条約絵事典』:PHP研究所より)ということですね。
 今号では、2つの野外活動の報告から「遊び」や「子どもをどう見るか」について考えてみたいと思います。

(編集部)


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