パートナー通信 No.73

2025年3月6日

子育てシンポジウム 
子育てから「子育ち」へ ぐんま少年少女センター  芦田朱乃 ・ 高徳康行

 2018年2月18日、「群馬子どもの権利委員会」と「ぐんま少年少女センター」の共催で子育てシンポジウム「子育てから『子育ち』へ」を開催しました。ぐんま少年少女センターの芦田さんと高徳さんから報告を寄せていただきました。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 73-02-01.jpg

 NPO法人あそびの学校の山崎さん、岩倉自然公園水辺の森を愛する会の関口さん、元NPO法人役員の今村さん、ぐんまセンターの芦田の4者によるパネルディスカッションで、子どもは大人の思惑で育てられるのではなく自ら育つ力があるという「子育ち」をテーマに実践報告を行いました。司会の高橋さんのトークに誘われフロアからも積極的に発言があり、活気あふれる会になりました。最後に、子どもの権利委員会の加藤さんが子どもの権利の視点からまとめを行いました。このシンポをきっかけに団体の横のつながりが強まり、あそび中心のネットワーク作りや共同でのイベント開催の模索が始まっています。

NPO法人あそびの学校 山崎茂さん

 あそびの学校校長です。「泥団子のおっちゃん」と呼ばれています。
 最初は神社や公園で、就園前の幼児とお母さんを、放課後は学校帰りの子どもたちを対象に、週1で外遊びをしていました。これは5、6年続きました。
 あるとき6年生の女子が、「超忙しくて遊んでるひまがない」と、参加費を置くだけで帰ってしまいました。このような状況から日常的に居場所を作る必要を感じ、市中心部に駄菓子屋つき遊び場(スーパー駄菓子屋)を開きました。
 商店街に子どもの遊ぶ声を響かせたいと、毎日開店しました。日常的な遊びの中で、コマ遊びが広がりました。コマのバトルをしながら子どもたちの遊びが進化していきました。6年生がきっかけとなり、異年齢の子どもたちの中で、遊びが伝承されていきました。
 その後、古民家に場を移して発展したのが「Alwaysあそびの学校」です。ほっとする居場所の中で子どもたちがのんびり過ごしながら遊びが発展していきました。

―フロア: 駄菓子屋は儲かりますか?
―山崎: 家賃5万円を駄菓子の売り上げで払っていました。
―今村: 子どもが来るようになったきっかけは?
―山崎: 近くの小学校にチラシも配りましたが、子どもがクチコミで友だちを呼んでくる力の方が大きかったです。
 学校と折り合いの悪かった中学生が、あそびの学校に来ていた。家庭にも学校にも居場所が見つけられない子にとっての居場所が必要だと思いました。

ぐんま少年少女センター 芦田朱乃

 子どもの自主的、民主的な活動を育てようという団体です。主な活動は、夏のキャンプ、桐生市周辺で行っている「あおぞら学校」、親子で遊ぶ企画などがあります。中高生向けの学習支援も開催しています。
 特徴は、高校生になると「指導員」になることです。指導員は、子どもたちといっしょに遊び、活動します。子どもたちの近くで気持ちに寄り添うことが大事な仕事です。子どもとの関わり方を学ぶ指導員学校も実施しています。
 下は幼児から上は60代までの異年齢の集団で、学び合いや育ち合いを大切にしています。子どもたちは、五感が刺激される外遊びや、みんなでやる楽しさを知る集団遊びの中で、けんかもあるが仲直りもするといった、いろんな関わり方を学びます。
 キャンプの生活やプログラムは、すべて子どもたちと指導員で行います。少しずつできることが増え、あてにされる中で、子どもたちは自信をつけ、居場所になっていきます。

―フロア: 子どもをどのように集めていますか?
―芦田: チラシを広範囲に配布しています。今までの参加者には、多めに渡して、クチコミで活用してもらっています。
―フロア: 若い人の盛り上げがよかった。そういう力は長年参加していると培われるのでしょうか? 
―芦田: 彼らは小学生の頃からの参加者です。センターでは場は提供するが、最初に子どもたちに何をやりたいか聞いていきます。プログラムは白紙で、自分たちで決めたことを実現する楽しさの中で培われるのかと思います。
―フロア: 今の子どもは多忙です。年齢が上がるにつれ参加が減る傾向はありますか?
―指導員: 小さいときは、遊んでもらえる楽しさがあり、指導員になったら教える楽しさがあります。その楽しさから教師をめざしています。
―指導員: 中高生の頃は部活の後に短時間でも参加していた。

元NPO法人役員 今村井子さん

 結婚前は教師をしていました。3.11をきっかけに環境、地域づくり、子育てに関する市民活動に携わるようになり、子ども食堂も立ち上げました。
 長男が小学校に入学したとき、持っていく鉛筆の本数を指定されてびっくりしました。「子ども自身が考えて持って行くことが大事ではないですか」と担任に聞いたら、先生は「そんなこと言われたのは、はじめてです」と驚いていました。画一性が求められ、違いを認められる機会が減っていると感じます。
 子どもたちは他者と出会うことで可能性を広げていきます。子ども食堂など、さまざまな人が集う中で自分も相手も大切に思う、そういう場所が大切です。本来の人権感覚を養えるのは自由な場所。子どもたちが自由に遊べるよう工夫しています。
 親は、たくさん遊ばせたいと思う一方で学力も重視し、対立させて考えています。対立ではなく、「遊びの中で学ぶ」ことが大切だと思います。

―フロア: 遊びは、子どもが主体的に始めること。勉強も遊びにならないと、自分のものにはならない気がします。
―フロア: 勉強は大嫌いだったけど、計算問題をぼくの興味のある内容に読み変えて教えてくれた人がいて楽しくなった経験があります。
―山崎: 地域の中に居場所を作って育つことができなくなっています。子どもを地域で育てること、だれもがいっしょに遊ぶことを復活させたいと思います。
―今村: 子ども同士の響き合いはすごいです。ボランティアの大学生が思春期に入り始めた子どもたちの気持ちを安らげてくれています。

岩倉自然公園水辺の森を愛する会
関口信子さん

 7年前、地域に呼びかけて、荒れ果てた河川敷の清掃活動を始めました。子どもたちが集う公園にしたいと思っていたら、貴重な鳥や植物の生息地だとわかる予想外の収穫もありました。定期的な整備のときは地域の子どもたちも参加します。こういう活動を通して地域と関わり、自然をたいせつに思う心が育ってほしいです。

 自然で遊ぶ機会が減っている中、8月に「子どもの森まつり」を実施し、自由に遊んでもらいます。無条件に遊ぶという体験が少なくなっていると感じます。子どもも大人も、来たときと帰るときの顔が全然違います。
 気をつけたいのは大人の関わり方です。まつりの準備で、パーツがすべてそろった工作キットを用意した団体があり、「子どもの力をつんでしまうのでは」と心配になりました。話し合って、子どもが自由に選べるパーツも用意してもらいました。大学生のボランティアは子どもたちといっしょに自然を学んでいます。

―フロア: 親も自然体験をしたことがない人が多いです。若い人にも伝えて行くことがたいせつだと思います。
―芦田: 割り箸でゴム鉄砲を作ったとき、子どもは、大人の説明よりも年齢が近い人に教えてもらうと反応がよかったです。おもしろい工夫は子ども同士の中から出てくると思います。
―フロア: 公園など、どこへ行っても「○○禁止」という縛りがあります。自由に遊ぶこと、子どもといっしょに清掃することを通して、自然をたいせつにする心が育つと思います。
―今村: 子どもが自主的に何かをやれるようにするために、お世話型のイベントから脱却した地域活動にしたいと思っています。

自由に意見交換

―フロア: 蕎麦屋をやりながら、家裁の嘱託で少年の育成をやってきました。食べたものを書いてもらうと、インスタント食品や化学調味料を使った食品で育っていることが見えます。自然の出汁で簡単なレシピを教えたいと思っています。
―フロア: 子どもが息苦しさを感じています。不登校の子どもと関わってきて、安心していられる仲間がいることが必要で、そういう活動に若者が関わることがだいじだと思っています。
―フロア: 家庭や学校以外に居場所を作る(サードスペース)と言っても、子どもだけでは作り出すことができません。子どもの要求から大人が場を提供することが必要だと思います。
―フロア: 子どもの自主性がだいじと言う人は、子どものときに自分たちでコミュニティを作ってきた人ではないでしょうか。今の若い世代は自主的な活動の経験が少なく、興味がないと感じています。もっと自分たちに可能性があること、相談できる場があることを伝えたいです。

まとめ
群馬子どもの権利委員会 加藤彰男さん

 「子どもの権利条約」をわかりやすく言いかえたパンフや「子どもの権利カルタ」を作ったり、自治体キャラバンなどの活動をしています。今日のみなさんの話を、子どもの権利の視点から見直してみましょう。
 「子どもの権利条約」には、子どもたちが生まれながらにして持っているさまざまな権利が書かれています。今回は「育つ権利」「参加する権利」に関わったシンポでした。
 子どもは本質的に自分で育っていく力を秘めています。大人が一方的な「子ども像」を作って育てるのではなく、子どもを受け止めて価値を見出していくことがだいじです。今日聞いた実践では、子どもたちがみずから参加し、自分たちで決めて動く中で、異年齢や大人、地域などとつながりを作っていました。
 発達のそれぞれの段階で、子どもにとっての最善の利益を保障することが大切です。何が最善なのかを知る糸口は、「子どもの声を聞くこと」「子どもの表現や願いをまるごと受け止めること」です。すると子どもは安心し、自己肯定感が生まれます。自己肯定感をエネルギーに子どもが育つ環境を作ること、それが大人の役割です。

参加者アンケートから

30代女性 チラシを見て参加
 いろいろな話がきけてとてもよかったです。各団体のイベント等に参加したいと思いました。
 各団体の話がもう少し長く聞けたらよかったなと思いました。

20代男性 チラシを見て参加
 子どもたちの居場所をつくる団体がたくさんあって嬉しいと思う反面、批判してるわけではありませんが、増えているということは子どもがどんどん生きづらい社会になっている、地域で育ちにくくなっているのだと感じます。何とかしていかなければいけないと考えて実行していくことで地域に戻って自然発生的に育ちあうことができれば良いのではないかと思います。
 子どもの権利条約=自己肯定感、子どもの権利条約を聞けて良かったです。

50代女性 友人からの紹介
 実際に活動をしている方々の話はとてもためになり面白かった。このように一つ一つ自分たちで社会や地域と関り、それぞれとても大きくうなづけるものばかりだった。また参加したい。若者が加わっているのも良い。

50代男性 新聞記事を見て参加
 本イベントの理想を実現させるのは現状では非常に困難なのだなと感じました。

60代男性 ブログを見て参加
 いろんな子どもに関わる団体が横のつながりを持って進めることが大事だと思う。自分たちもこれから横のつながりを大事にしていきたいと思います。

60代女性 チラシを見て参加
 子どもは宝です、いろんな可能性の芽を持っています。その芽を力強く育てていける社会にするために何ができるか考えていこうと思いました。


inserted by FC2 system