パートナー通信 No.79

シリーズ:
 『子どもの権利条約31条:
  余暇・休息、遊び・体験、文化・芸術』―④

~「おはなしの会 もこもこ」の誕生~ 

 あるいは図書館の片隅だっ たり、病院の待合室だったり。 絵本を読むことで親と子どもが時間や空想の世界を共有する。その瞬間のなんと豊かなことか。
 子どもと一緒に絵本を読む、それはやわらかな陽のふりそそぐ午後だったり、お休み前のお布団の中だったり。
 そんな経験のある方、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

-地域の子どもにも絵本を届けたい-
 わが子と絵本を読むことで豊かな時間を過ごしてきた母親たちの思いから、平成9年11月、地元の下川淵公民館で「おはなしの会 もこもこ」は誕生したのです。

 その年は神戸連続児童殺傷事件など、子どもたちを取り巻く事件が相次ぎました。親たちは自分の子どもが被害者になる心配とともに、加害者になる不安をも抱えることになったのです。
 そんな中で、私たちは「子どもは地域で見守り、育てなければ」との思いを強くし、単なる読み聞かせの場だけでなく子どもの居場所になるよう心掛けました。
 発足から22年を経過し、現在は公民館のみにとどまらず小学校、幼稚園、保育所、児童館、また、専門学校や老人施設など、様々な場所で活動しています。

「活動紹介①」
   ~絵本とのふれあい~

 現在、地元の小学校、前橋市立図書館上川淵分館、市内の書店より依頼を受け定期的な読み聞かせ活動を行っております。
 この定期的な読み聞かせ活動の一つに未就園児への読み聞かせ「おはなしとんとん」があります。これは地域の公民館で民生委員さんや母子保健推進員さんによって運営されている「子育てサロン」のなかで、0~3歳児を対象に行っているおはなし会です。真剣に絵本を見ている子もいれば、後ろの方で走り回っている子もいたりします。

  お昼寝中の子もいれ昼寝中の子もいれば、泣いている子だっています。そんな風景もこのおはなし会ならではです。さっきまで走り回っていた子が絵本のとあるページに吸い込まれるように寄ってくることも珍しくありません。

また、「大人向けのおはなし会(不定期)」も開いています。普段絵本を手に取ることの少ない大人の人たちに、絵本の魅力や読んでもらう心地よさを広く知ってもらい、「癒しのひととき」を過ごしてもらっています。
 絵本には大人や子どもの関心を引きつける絵と、選び抜かれた珠玉の言葉があふれているのです。

「活動紹介②」
  ~地域とのふれあい~

 -子どもたちを地域で育てたい-そんな思いで結成された私たちの会は、地域との連携も大切にし、公民館事業などにも積極的に参加しています。
 平成11年から10年間「下川淵地区のびゆく子どものつどい」に参加し、なかでも平成19年のこの行事では子どもが楽しめるような開会式の演出を行いました。
 下川淵地区文化祭にも毎年参加し人形劇を公演しています。しかし地域あげてのイベントに子どもの姿が少ないことに違和感を覚え、平成19年より「こどもの広場」を企画、実施しました。会場に縁日を模したコーナーをつくり、ゲームにチャレンジすると「ぷち券」というチケットがもらえ、模擬店でお菓子と交換ができます。これにより地域の大人たちとふれあう場にもなり、大人ばかりだったこの行事に子どもの元気な声があふれるようになりました。
 現在では地域団体との連携、協力も進み、地域行事での子どものコーナーは子育連やPTAに引継ぐことができました。
 地域の大人が地域の子どもたちを見守ることのできる街。「もこもこ」の活動が、こんな街づくりの一助となれたらうれしい限りです。

「活動紹介③」
   ~伝える手段はさまざま~

 一口に「おはなしを伝える」といっても、その方法はたくさんあります。 絵本の読み聞かせはもとより、物語や詩の朗読、紙芝居や人形劇などその形は様々です。
 「おはなしの会 もこもこ」にはここ数年、特に人形劇の依頼が増えており、子どもから大人までたくさんの人に観ていただいています。
 この人形劇は台本、人形、舞台装置などすべてが会員の手作りで、子どもたちの興味関心を高めるため、会員みんなで取組み、何度も何度も意見交換をします。

 さて、私たちと一緒におはなしの世界を作ってくれる人形を紹介しましょう。 人形の素材として選んだのはウレタンです。これはとても軽くて形も作りやすいため、もこもこの人形はほとんどウレタンで作っています。

初期のウレタン人形は、動かせる部分が少なくうまく表情が出ませんでした。そこで首を動かせるようにし、手足に関節をつけ、試行錯誤の後に表情豊かな可愛い人形が完成しました。
 みんなで作り上げた、「もこもこ」オリジナルの人形です。

幼稚園や保育所公演では、普段見慣れているホールに設えた大きな舞台に子どもたちの期待は一気に高まり、みんな目を輝かせます。人形劇が始まると、人形のコミカルな動きに歓声を上げたり追いかけっこのシーンでは身を乗り出して応援してくれたりもします。
 同じ公演内容でも、子どもたちの反応は様々で、その反応こそが私たちの活動の源になっているのです。

「最後に」
   ~種をまこう~

 子どもたちに絵本やおはなしの世界の楽しさを伝えたい、そのまっすぐな思いだけで活動してきました。しかし、その私たちに力を与えてくれているのは、紛れもなく子どもたちのキラキラした瞳です。

 読み聞かせや人形劇を通して一人でも多くの子どもの心に「楽しい」という種がまけたら。
 やがて、その種から花が咲き「生きる力」という実がなってくれたらどんなにすばらしいことでしょう。

-収穫には立ち会えないかもしれないが
 できるだけ多くの種を蒔こう-

 私たちの大好きなこの言葉を糧に、「もこもこ」はこれからも活動していきます。

「もこもこの足跡 (抜粋)」

平成9年
  
「おはなしの会もこもこ」結成
公民館にておはなし会を行う
平成11年~地域行事に参加
平成13年~下川淵小学校にて、朝の読み聞かせを始める
平成14年
  
下川淵こども演劇教室SKIP
立ち上げ演劇指導にあたる(平成23年まで)
平成17年~
 
未就園児への読み聞かせ「おはなしとんとん」を始める
平成20年 前橋市社会教育活動功労者として表彰を受ける
平成22年 群馬県読み聞かせボランティア顕彰を受ける
平成22年~「まえばし人形フェスタ」参加
令和元年 前橋教育文化功労者として表彰を受ける

その他:

  • ◎下川淵公民館、上川淵公民館、南橘公民館等で読み聞かせ講座の講師
  • ◎明和短期大学、群馬パース大学福祉専門学校において読み聞かせや人形劇の実演及び講義 などを行う。

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