パートナー通信 No.80

目次

【地域の活動紹介】「親の学び場 Manabuono(マナボーノ)」
~子育てを通してみる世の中~Manabuono スタッフ 阿部 功

はじめに

 親の学び場「Manabuono(マナボーノ)」は2017年から観音山ファミリーパークを拠点として、子育てをする親向けのセミナーや親子で楽しめるワークショップを開催 しています。
 基本的には、スタッフが学びたいことの講師を探してセミナーをお願いする。または、セミナーを開きたい人もしくは、開けそうな人を見つけてきては半ば無理やり場所を提供してお願いする、というスタンスでこれまで月一回程度の活動を継続してきました。

 発足のきっかけはというと、自分たちの子育てが大変だった時期に、子育て支援の場で仲良くなった仲間たちとの交流が、子どもの成長とともに希薄になったことでした。
 高崎市は子育て支援に力を入れていて、子ども達が未就園の時は、子育て支援センターや各種子育て講座など、色々な交流や勉強の場が用意されています。高崎くらいの都市の規模だと、行く先々でよく会う人がいて「こないだも○○でお会いしましたね」なーんて、地域に縛られないつながりが自然にできていました。しかし、子ど もが幼保、小学校と上がっていくにつれ、だんだんと親同士が交流する場が少なくなっていったように思います。

 「子育て支援」と聞いてどんなイメージが思い浮かびますか? 若いママさんが、赤ちゃんを抱えて四苦八苦している姿を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
 確かに乳幼児期は大変です。自分も、どんなふうにしてお昼寝させようかあの手この手で色々やっていましたし、兄妹を文字通り「おんぶにだっこ」で歩き、太ももがパンパンになることもしばしばでした。毎食ごとに床の食べこぼしが山になる毎日に疲れ果てたこともありました。

 でも、ちょっと待ってください・・・、 親への支援が必要なのは、乳幼児期だけなのでょうか? 小学校は、朝送り出してしまえば給食を食べて勝手に帰って来ます。一人でできることが増え、直接手をかける事は激減します。しかし、子どもの世界は急速に変わり、友人関係や勉強の事、メディアとの関わりや習い事といった、内面的な心配事が増えてきます。そして、幼児期と違ってこれらの問題は必ずしも親が把握できるわけではありません。親が存在しない子どもだけの世界がどんどん広がっていきます。

 そんな時に、幼児期に様々な場で知り合った戦友たちの存在を思い出します。SNS等のおかげで、会わなくなっても繋がりを維持するのが比較的簡単な時代ですが、やはりリアルで会 って語れる場がないとダメだ! 小学生から思春期のお子さんを持つ親が集まれる場所が欲しい!と切に思いました。
 そこで、小学生以上の子を持つ親を対象にした子育てセミナーを開催してくれる講師の先生を探し、未就園時代からの友達に声をかけて勉強会を開いたのがはじまりでした。
 その後も継続的に、もっと子どもの事について勉強したり、悩みを話し合ったり、時には大人だけで楽しくお喋りしながら工作等のワークショップをおこなったりしています。子ども向けのワークショップは、みんなの興味関心が広がるような事を題材に、自分たちと同じように子育てをしている方に講師をお願いしてやってきました。

これまでのManabuono(マナボーノ)の活動をいくつか紹介します。

『みっちゃん先生の自然探索』

 講師の野澤さんは自然科学のエキスパートで小学生のママ。動植物の話はもちろん、森の成り立ちや、化石のでき方、そして発掘まで!(観音山丘陵は昔海だったそうで、貝の化石などが発見できます。)

『親子木工教室~多用途に使えるいす作り』

 やはり小学生パパママの建築士須田ご夫妻を先生にお迎えして開催しました。ただ作るだけではありません!まずは尺貫法の講義から始まりました。
 一寸法師やしゃくとり虫の話も交えて、子ども達も興味津々。幼稚園児も材料を切り出すところから頑張りました。

『増谷先生の子育て講座』

 高崎市社会教育講師の増谷さんを講師に迎え、毎年子育て講座を行っています。
 子どもの発達と、親の役割を中心に、自らの経験に裏打ちされたズバっとした語り口で参加者も自然に背筋がピシッと!

Manabuono(マナボーノ)の活動を通して感じたこと

 色々な方の講座を聞いたり、参加者の方とお話しして感じるのは、子どもを取り巻く社会環境の変化です。

 「子育てが大変だ!」ということで、行政が色々な施策を打ち出します。子育て支援センターも増えました。支援センターや児童館の予定はすべてスマホでチェックでき、そこに行けば経験豊かな先生が趣向を凝らした企画を用意してくれています。高崎では子育てSOSサービスがはじまり、たいへん人気だそうです。
 「介護も大変!」ということで、介護保険を使ったサービスが充実し、今ではデイサービスの送迎車を見ない日はありません。まさに「ゆりかごから墓場まで」だなあと感心しきりです。
 「核家族でも子育てができるように」「お年寄りだけでも暮らしていけるように」公助が充実した結果どうなったでしょうか。隣に住むおじいちゃんの体調もわからない(そもそも家にいるのか入院しているのかもわからない・・・) 子どもの泣き声がするけど、その引っ越してきたばかりの親子の顔が分からないから児童相談所に電話してみる。
 子育て中の親子を楽しませてくれる場所が増えたので、自分たちでそういう場を作る必要がなくなり、地域の子育てサークルに人が集まらず解散。なんてことが実際に身の回りで起こりました。
 困っている人を助ける施策が悪いと言いたい訳ではないのですが・・・。そこに「自己責任」という言葉に象徴される、少々行き過ぎた感のある個人主義的な風潮や、個人情報の保護が重なり、支援を必要とする人のもとに公助が届くようになった結果、家族や世代、地域がどんどん分断されて、地域の力も家庭の力もかなり弱くなっていると感じます。

 子どもを取り巻く環境の変化は、これだけではありません。自分たちが子どもだった頃とだいぶ変わったなあと思う事を書いてみます。

〇小学生は結構忙しい

  • 自分が子どもの頃「学童」はありませんでした。この30年で共働き家庭が増えました。学童と言っても大人の目がある場所ですから、子どもにとってそこは「公」の場でしょう。今の子には、のびのびと悪さができる環境(?)が少ないなあと感じます。
  • 自分たちが子どもの頃「学校からそのまま習い事に行く子」なんていせんでした。今は学校に車でお迎えに行ってそのまま習い事に行くなんて風景をも見ます。土曜のお休みがなくなったし、学ぶことは増えてるので6時間授業が多いんですね。習い事のある子はそのまま行かないと間に合わない。複数の習い事をしている子も多く、習い事のない子は放課後遊び相手を探すのに苦労するほどです。
  • 自分たちが子どもの頃に比べて「宿題が多い」。自分はあまり宿題で苦労した記憶がないのですが、今は泣きながらやってるなんて話も聞きます・・・
    子ども達、家でボケーっとしてリフレッシュしたり親子で話したりする時間があるのかと心配になります。

〇変わる社会と変わらない学校
 自分たちが子どもの頃「不登校」の子どもは今ほど多くありませんでしたし、低学年の学級崩壊もありませんでした。ところがいまは、自分の身の回りだけでも、学校に行っていない、もしくは行っていない期間があった子が何人もいます。学級崩壊が原因で行けなくなった子もいます。国が「不登校の対応は学校に戻す事をゴールとしない」という方針を打ち出していますが、そもそもなんでこんなに増えちゃったんだろうと悶々としています。
 PTAや読み聞かせなどでよく学校に行くようになって感じたことがあります。それは「学校は驚くほど変わっていない」という事です。こんなに社会環境が変わり、求められる人間像も変わっているのに、まるで自分の子ども時代に戻った気分でした。
 世の中の変化に学校がついていけず、しわ寄せがみんな現場に行っているように見受けられます。

〇失敗を恐れる子どもたち
 自分たちが子どもの頃は、まだ「群れ遊び」がかろうじて残っていました。放課後にクラスのみんなで集まって他のクラスと野球の試合をしたり、山の中に秘密基地を作ったりしていました。一口にクラス対抗で野球の試合と言っても、試合を決める、人を集める、場所を確保する、苦手な子に合わせてルールを決める、等々段取りは山のようにあり、わざわざ学校で話し合いの仕方を教えなくても、日々の遊びの中で交渉や気遣いがありました。今は外で遊ぶ子はあまり見ないし、屋内では用意された遊びをしているのでしょう。外で複数の子で遊んでいても、みんな液晶画面を見ているなんて場面にもよく遭遇します。
 自分が子どもの頃、分からない事は「とりあえずやってみる」そして「試行錯誤」するという場面が、今の子よりも多かった気がします。なんだろ、親がそうなのか社会がそうなのか、今は、事前に「うまくできる方法」を検索してから「失敗しないように」する事が多いような気がします。幼稚園の先生が言ってました「最近の子はすぐに、どうやるの?って聞いてくる」と。失敗を恐れる風潮は、挑戦できない大人が増えることを暗示しているような気がしてなりません。

 とまあ、今の子を見ていると色々と思うところはあります。原因は一つじゃない。何かを改めれば、すべてが解決するなんてことは絶対にない。では、どうするか・・・僕にできることは未就園時代からの友たちと、自分たちが良かれと思う環境を発信、構築していく事くらいです。そのためにこれからもManabuono(マナボーノ)で魅力的な企画やライフスタイルを発信し続けたいと思います。

 次の世代のために、自分ができることから粛々と・・・

お問合せ先:manabuono2017@gmail.com


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