パートナー通信 No.82

コロナ特集④コロナ禍とこども食堂
「あつまれ前橋スポット」編清水 紅(あつまれ前橋スポット)

 「事実上、緊急事態宣言と同じなんですよ」 前橋市上川淵公民館、館長は電話の向こうで無機質なトーンで言った。

  2021年1月24日、今年初めて開催するこども食堂が大雨になりそうなのだ。 空き地のような駐車場使用のドライブスルーでは何もかもずぶ濡れになってしまうだろう。雨具を着たボランティアと実行委員たちが真冬の雨に打たれ長時間表に立つというツラい経験になるに違いない。
 「大雨の日に駐車場での開催は超絶困難だ。公民館利用が無理なら苦肉の策、公民館の軒下を使わせて!」 そんな熱量高めのお願いの答えが「前橋市は事実上緊急事態宣言と同じなんですよ」だったのだ。

 新型コロナウィルス感染拡大が高止まりし、群馬県は都道府県内上位16位維持が続く、先日、前橋のこども食堂の一つが開催中止を決定した。無理もない。人を集めれば密になる。年長者は命をかけることになるかも知れない。

 大勢のこどもと保護者さん、おじいちゃんやおばあちゃん、おじさん、おばさん、お姉さん、お兄さん、みんな集まって勉強して、手作りご飯を食べて、読み聞かせを聞いて、面白いイベントを楽しむ。帰りにお菓子やお土産をもらって、ニコニコ顔のこどもたち。公民館和室の入り口に小さな靴やカラフルな靴が驚くほどたくさん脱いであり、「足の踏み場もないってこれだよ」、と笑みがこぼれた。
 一念発起してみんなで作ったこども食堂とはそんな笑い声の溢れる居場所だったな、と思い返す。コロナ前のこども食堂の記憶が薄れていく気がする、なぜなら、世界がコロナと共に生活してもう一年近くになるのだ。

 貧困や、孤食のサポートと居場所活動で市民権を得たこども食堂、コロナ禍で失職や減収した家庭が増え、休校により給食の機会が失われたことにより、困難が利用人数として見え、不安や嘆きも聞こえてくる。

 事前自宅検温、手洗い、健康チェックと検温、頻繁な手指消毒、手袋、マスクとフェイスシールド装着、屋外、ドライブスルー、60歳以下や若手起用、朝礼にてボランティア全員に感染対策告知のプリントを渡す、距離を保ち密集しない、子供と参加者に接近禁止、髪や顔を触らない、マスクと手袋はこまめに変える、手袋は帰るまで外さない、体調が気になったらすぐ帰る、終了後すぐ撤収、体調管理シートを毎回記入、定期的に保健所に相談、イベント保険加入

 前橋市の感染者数がじわじわと増え、現在、前橋市公民館は使用不可となり、私達は活動の拠点をなくした。それでも、何とかしてこどもの支援を、と公民館に頼みこみ、特別に駐車場を借りる交渉をした。野外ドライブスルーに変更され、CoCo壱番屋キッチンカーを依頼し、150人分のランチを購入し手渡している。他にパン、麺、米、菓子、缶詰、レトルト食品、野菜、物資なども。その予算はランチのみで毎回10万円におよぶ。陰では、何か助成金はないだろうかと、躍起だ。後1回でも開催できるように。ボランティア人員も若手が欲しい。リスクが高い、既存65歳以上ボランティアは出られないルールになったからだ。

 毎回150人分の食材を発注、保管、運搬、仕分けをする。そんな中、支援物資の重さと量の多さにひどく肩を痛めることに。また、転倒して骨折するものも出た。女性、年配の多い活動はこんな時にデメリットがあるのか…

 新型コロナウィルスとその変異種、様々な後遺症、まだまだわからないことだらけである。 県内、頑張るこども食堂も若干残っているが、資金枯渇、そして緊急事態宣言が出れば即活動ストップだろう、実際先がどうなるか知ることはできない。そんな中、今日も医療関係者はベストを尽くし命を守っている。そうそう。私達は私達でルールを守り、出来ることを精一杯やれば良い。

 とは言うものの「やれやれ、こども食堂運営とは全くもっていろいろなことが様々起こるねえ。まあ、どうにかなるんじゃない?」実は得意の、半ばやけくその境地なのである。


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