パートナー通信 No.84

目次

シリーズ「『第4・5回最終所見』を読み解く」③G.障害、基礎的健康および福祉(その2)清水 秀俊

【障害を持つ子ども】

 評価された点は、「障害者基本法」改正(2011年)および「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」制定(2013年)です。
 一方で「障害に対する人権を基礎とするアプローチを採用すること」、「障害を持つ子どものインクルージョンのための包括的な戦略を確立すること」をはじめ、6点にわたる勧告(「障害を持つ子どもにかかわる専門的スタッフの養成、増員」など)がされています。

【健康および健康サービス】

 2点の勧告(※)がされています。

【生命の誕生に関わる健康およびメンタル・ヘルス】

 4点の「懸念」、5点の「要請」(「注意欠如・多動症との診断の徹底的な検証、薬の処方が最終的手段とされること」など)がされています。

【環境的健康】

 東京電力原子力事故に関わって、被災者の生活支援等に関する施策の推進などに留意(評価)しつつ、7点にわたる勧告(※)がされています。

【気候変動の子どもの権利への影響】

 6点の勧告()がされています。

【生活水準】

 ひとり親家庭の子ども手当等の措置に留意しつつ、3点の勧告()がされています。

勧告の具体的な内容については、次号のパト通信で紹介する予定です。

◎「子どもの権利条約市民・NGOの会」の『最終所見の分析と解説』より
 中村尚子さん(障害児部会)は、「人権を基礎とするアプローチの採用」および「インクルージョンのための包括的な戦略」を強調していることは評価するが、 「包括的戦略」が何をさすのか、踏み込んで言及してほしかったとしています。
 まとめとして、「競争的な社会」と定義された日本。そうした社会への「インクルージョン」をめざすのでは本末転倒である。インクルーシブな社会そのものを問いつつ、「インクルージョンのための包括的な戦略」を議論していくことが必要なのではないかと提起しています。
 内田良子さん(子どもの発達部会)は、「最終所見」が「注意欠如・多動症による行動障害と診断される子どもが増加し、社会的要因および非医療的措置が無視されながら、精神刺激薬の投与による処置がなされていること。」に強い懸念を示していることに注目し、以下のように述べています。
 2005年に「発達障害者支援法」が施行されて以来、発達障害と診断される子どもたちが年々増え続けている。精神科医の学会で「発達障害バブル」という言葉が飛び出すほどである。しかも、精神刺激薬が簡単に投与される子どもが増え続けている。
 しかし、「発達障害バブル」の背景には、いじめや体罰などによるストレスから不登校となった子どもたちの言動を「発達障害」と誤診断している可能性が色濃い。「最終報告」の勧告にもとづいた検証が急がれると指摘しています。

学習会での意見
  • 薬を処方したがる医師、薬を投与されてぼーっとしてしまった子、これが現実ではないか(内田さんの指摘の通り)。
  • なぜ発達障害が増えているのか?根本的な原因を明らかにする必要がある。
  • この「最終報告」を受けて、私たちが具体的にどう実践するかが大事。

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