パートナー通信 No.85

新年のご挨拶代表 加藤彰男

 明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。 1946年に日本国憲法が制定されて今年は76年です。1947年に「児童福祉法」が制定され、1951年に「児童憲章」が制定されました。「憲章」全文を見てみましょう。

 『児童憲章』             1951年5月5日
 われらは、日本国憲法の精神にしたがい、児童に対する正しい観念を確立し、全ての児童の幸福をはかるために、この憲章を定める。
 児童は、人として尊ばれる。
 児童は、社会の一員として重んぜられる。
 児童は、よい環境のなかで育てられる。

  1. すべての児童は、心身ともに、健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される。
  2. すべての児童は、家庭で、正しい愛情と知識と技術をもって育てられ、家庭に恵まれない児童には、これにかわる環境が与えられる。
  3. すべての児童は、適当な栄養と住居と被服が与えられ、また、疾病と災害から守られる。
  4. すべての児童は、個性と能力に応じて教育され、社会の一員としての責任を自主的に果たすように、みちびかれる。
  5. すべての児童は、自然を愛し、科学と芸術を尊ぶように、みちびかれ、また、道徳的心情がつちかわれる。
  6. すべての児童は、就学のみちを確保され、また、十分に整った教育の施設を用意される。
  7. すべての児童は、職業指導を受ける機会が与えられる。
  8. すべての児童は、その労働において、心身の発育が阻害されず、教育を受ける機会が失われず、また、児童としての生活がさまたげられないように十分に保護される。
  9. すべての児童は、よい遊び場と文化財を用意され、わるい環境からまもられる。
  10. すべての児童は、虐待、酷使、放任その他不当な取扱からまもられる。 あやまちをおかした児童は、適切に保護指導される。
  11. すべての児童は、身体が不自由な場合、または精神の機能が不十分な場合に、適切な治療と教育と保護が与えられる。
  12. すべての児童は、愛とまことによって結ばれ、よい国民として人類と平和と文化に貢献するように、みちびかれる。

 日本国憲法に立脚した優れた内容です。「子どもの権利条約」の『3つのP』の内の「子どもたちの豊かな成長・発達に必要な保護(Protection)、条件整備(Provision)を受ける権利の保障」とも一致しています。
 しかし、残念ながら戦後の日本社会の推移を見ても「憲章」に謳われた施策が十全に行われたとは言い難いですし、今日の新自由主義や競争的な社会システムの下で子どもたちの生きづらさは一段と深刻になっています。
 昨年、日本の子どもたちが追い込まれている極めて厳しい状況に直面して、政府内で「こども庁」設置の議論が始まりましたが、議論の途中から突然「子ども家庭庁」へと名称変更の案が出されたことに注目する必要があると思います。国連子どもの権利委員会『最終所見・勧告』が求める「子どもの権利に関する包括的政策・調整機関・監視機構」などと対比して、私たちも議論と学習を深めましょう。
 その際に欠かせない視点が、『3つのP』の3番目=子どもたちは「自らに関わることに参加する(Participation)という主体的な権利(意見表明権)」や「表現・情報、思想・良心・宗教、集会・結社などの市民的自由権」を保障され、子どもたちが「条約」に示されたすべての権利行使の「主体」である、という位置づけだと考えます。


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