パートナー通信 No.92

2024年5月12日

パートナー通信91号「人権と教育を希望に」への返信
ジャニーズ問題から人権と性教育を考える 小林 美代子

 パートナー通信91号(2023年10月)誌上に清水紅さんの怒りのメッセージが炸裂しています。旧ジャニーズ児童虐待、性加害、子どもの人権侵害に対してです。
 私は読後すぐに紅さんへメールを送りました。共感し、興奮し、いたたまれなかったからです。電話での返信をいただき、しばし熱く語り合いました。でもまだ語りたいことがあります。少しだけ書かせていただきます。

☆なぜ60年以上も放置されてきたのか

 紅さんのことば通り無知と時代遅れの思考です。
 この国の長い歴史と風土の中で人間の性や人権に対する知識や認識、感性があまりにも欠落したままなのではないのでしょうか。なぜなら成長の過程でまともな教育を受けていないからです。性や人権をおざなりにした公教育がまかり通っているのです。そればかりではなく、遅れた現実を少しでも変えようと、子どもの現実的要求に根ざした全うな性教育を実践している少数の教育関係者に対して、激しい妨害やバッシングがおそいかかりました。
 2003年7月、都立七生養護学校(日野市、現七生特別支援学校)事件では、東京都議と都教育委員会が学校独自の性教育実践に不当介入しました。今年は事件発生から20年、「こころとからだの学習裁判」での勝利判断から10年となります。

☆子どもの人権をどう守るのか

 性加害事件が発覚し、日を追うごとにその真相に迫る重大性が増しています。
 特に子どもの人権をどう守るのか‼このことへの追求は喫緊の課題です。
「いかにして自分の身を守るのか」「何が性被害なのか」「どう対処すればいいのか」「性的な加害・被害を避けるための知識や行動」をしっかり教える、そのためには基本的な性教育を原点からはぐらかすことなくカリキュラム化して実践することです。学習指導要領にきっちりと盛り込んで全ての教育現場で全ての子どもたちに確実に伝えることではないでしょうか。性は人権、性は科学、性暴力は人権侵害であり、生命そのものへの脅威なのです。
 性と人権を結びつけて問題に向き合う力をつける教育、人権、科学、子どもの実態、要求を基盤にした包括的性教育を実践することで、権利としての教育を実現できるのではないでしょうか。そのための法整備が求められます。

☆政府、行政機関への要請

 芸能界という分野を舞台に、メディア企業、スポンサー企業、出版企業…が自社の収益最優先に走る中で、子どもやタレントの人権が著しく踏みにじられていったのです。
特権的、権威性を持った旧ジャニーズ事務所に対して盲目的に沈黙し、忖度し続けた結果の事件です。みんな共犯者なのです。
 今、それぞれの部所できびしい検証や反省が行われていますが、その本気度が問われます。
 さらに国内各地で子どもと関わる複数のNGO法人や組織・政党などから政府、行政に対しての提言や要請が相次いで行われています。

  • 「芸能分野」、「子ども」に特化した相談窓口や検証機関の設置を!!
  • 人権侵害からの救済と人権保障を推進するための政府から独立した国内人権機関の設置を!!
  • 調査分析を行う第三者機関の設置を!!

 前述の七生養護学校関連では、人権の視点から性や人間関係について広く学ぶ包括的性教育を求める声が高まる中、教員や市民を中心に「包括的性教育推進法の制定をめざすネットワーク」が設立されました。
 法律をつくることで国や行政の基本方針として位置づけることができると強調しています。
 世界各国でも性教育の発展を促進するための法整備や法改正の動きがあります。
 日本も遅れることなく、性の尊厳、ジェンダー平等などへの取り組みを加速するため、こども家庭庁などの奮闘を強く期待します。
 私達も二度とこのようなことを起こさないためにそれぞれの持ち場持ち場で踏ん張りたいものです。

性教育、ジェンダー平等教育へのバッシングの発端は1992年旧統一教会の「新純潔宣言」にあるといわれています。当時地方自治体では男女共同参画条例が議論されていました。各地方議会では保守系の議員が反対を表明しました。そこに統一教会との関りがあることが判明しました。2005年故安倍晋三氏と山谷エリ子氏を中心として「過激な性教育、ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」が発足し、教育現場へのバッシングの波が拡大しました。


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