パートナー通信 No.92

2024年5月12日

会員からの寄稿「笠懸図書館に自衛隊がやってくる」の問題について
群馬県高等学校退職教職員の会 須田 章七郎

 笠懸町のけやき保育園の國井園長(子どもの権利委員会会員)から「みどり市教育委員会へ配付資料を取りにいったらこんなチラシがあった」という知らせを受け、早速なぜこうした企画をすることになったのか、図書館長(森氏)に会って説明を求めました。

  • 私:この企画はどういう経緯で行うことになったのか。
  • 森氏:自衛隊の広報の方が来館し、開催依頼を受けた。過去にも2回受けており、南極の氷の展示が珍しいと思い、やることにした。
  • 私:チラシが保育園に配られているようだが。
  • 森氏:図書館から依頼した。
  • 私:元高校の教員として生徒達には平和問題を話してきた。自衛隊は基本的には軍隊であり、今の世界の情勢からもし何かあれば自衛隊はアメリカの軍隊と一緒に殺し殺されることになるかも知れない。公的機関である図書館がこういう企画をすることは大いに疑問もある。
  • 森氏:自衛隊は災害救助などもしているので。
  • 私:確かに災害救助では大変な苦労をしているが、今回の企画は小さな子ども達に理解できるか分からないけれど、戦車や軍艦の塗り絵や戦闘機の折り紙づくりなどをさせて興味を持たせるというのは大いに問題がある。

 このやりとりから森氏は問題の本質に少しは気付いたようでした、
 この問題を地域の民主団体に呼びかけ、早速「笠懸図書館に自衛隊がやってくることに反対する市民の会」を立ち上げました。要請書をつくり、教育長と図書館長との面会を求めましたが、所管の社会教育課長が対応することになり、図書館長も同席しました。
 私からは「ロシアのウクライナ侵攻や中東でのハマスとイスラエルの紛争によって毎日子どもを含む一般人が犠牲になっている。このような情勢でこの企画はあまりにも市民感情を軽視している。子ども達に戦車や軍艦の塗り絵や戦闘機をペーパークラフトでつくるなどよりも、今やるべきことは戦火に苦しむ人々に思いを馳せ、悲惨な状況を写した写真展や朗読会ではないか。市内にはウクライナからの難民もいるが、戦争の道具となる装備品の展示がどんなにか感情を傷つけるか配慮に欠ける。こうした企画は中止すべき」と訴えました。
 課長は「2021年の林野火災や防災訓練など、危機管理や災害について自衛隊と連携を取っているので、社会教育施設として災害時の救助などを含めた自衛隊の仕事を知ってもらう機会として企画した」と経緯を説明したが、市民感情への配慮が不足していたとして内容の変更を含めた検討を約束しました。
 当日は災害救助をメインとした展示となり、予定していた塗り絵や折り紙、ミニ制服を着ての写真撮影などは無くなりました。
市民の会は、図書館前にて「憲法九条を守ろう」などの横断幕を持ってスタンディングを行いました。親子連れが20組ほど来館しましたが、私たちに理解を示す人もいれば、反発する親もいました。
 自衛隊側は一般受けしそうな南極の氷の展示を用意していますが、本音はいかにして自衛隊員を募集するかにあり、これからもこうした動きには注意を払っていくことが必要と思います。


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