パートナー通信 No.93
- 1. 2024年5月/No.93(通算109号)
- 2. 報告:30周年記念企画から始まりビッグイベントに!第1回 子どもまんなかフェスタ芦田 朱乃(事務局長)
- 3. 子どもまんなかフェスタ報告② 対談「e-sportsのリアルとゲーム依存」 Aki行政書士事務所 田中友里
- 4. 子どもまんなかフェスタ報告③ 子どもの権利劇場 参上! フェスタ実行委員 清水紅
- 5. 若者世代の投票率を上げるために学校教員ができること
― 意見表明権の尊重と主権者教育 ― 増田 秀樹(公立中学校教諭) - 6. 報告:自治体訪問のとりくみ - ① 群馬県生活こども部との懇談代表 加藤 彰男
- 7. 会員からのお便りパートナー通信No.92の感想など
- 8. 権利委員会 今後の予定
子どもまんなかフェスタ報告② 対談「e-sportsのリアルとゲーム依存」 Aki行政書士事務所 田中友里
令和6年2月11日開催の子どもまんなかフェスタでは「子どもたちが楽しめる企画を」ということで盛りだくさんの案が出ました。その中で子どもたちが夢中になっているオンラインゲームのプロを呼び、生の声を届けたらどうか、ということからゲーム依存予防の活動をしている私との対談形式にすることでゲームの楽しさやプロになるための話が聞け、ゲーム依存症の啓発もできることを目的としたイベントを実施しました。
今回対談の相手としてお呼びしたのはプロのe-sports team「IINSOMNIA」を率いる代表の本橋壮太さんです。本橋さんとは「e-sportsを正しく知ってもらうことでe-sportsの発展とゲーム依存予防に繋げたい」という共通の理念の元、群馬県庁でも一緒にイベントを行うなど共に活動している方です。初めてお会いした時に「ゲームがあって良かったと思える人生になってほしい」との想いを伺い「子どもたちがゲームを通してよりよく生きる」をテーマに共に活動していくきっかけとなりました。
子どもの権利の観点から見ても、子どものゲームが好き!楽しい!という気持ちは尊重してあげたいと多くの親や大人は思うはずです。一方で依存症や知らない人とオンラインで繋がる、課金をし過ぎてしまう、もっと日常で考えるとゲームによって勉強や習い事の時間が取れなくなるなどの不安から子どもを守るために強く制限をかけたくなりがちです。そのバランスをどう考えるか、親子で考えてもらうきっかけになるようなトーク内容でした。
e-sports選手を目指すこと、選手の日常などリアルな話しを聞き、またゲーム依存症というのも「子ども自身がゲームをやめたくてもやめられない、苦痛を伴う状態」と位置付け、子ども期を子どもらしく過ごす権利の侵害からは子どもたちを守りたいという私の意見と、本橋さんからも「ダラダラとゲームをするのは自己肯定感も下がり良くない。ゲームをする自分を責めるような状況は改善させていきたい」といったような意見がありe-sportsの魅力を知ってもらうことも、ゲーム依存を防ぐことも私たち共通の願いであるという内容でした。
対談の様子を一部抜粋して紹介させていただきます。
田中:どうしたらプロチームに所属できるのか、もしくは「こんな風にしてるだけではプロにはなれない」など。プロになれるのと、ただゲームをしている人との境目とはどんなところにあると思われますか?
本橋:そうですね。Eスポーツ自体、その言葉が出てきたのが2017年頃なので、まだまだ新規産業の一つではあります。なので確立された方法論がある訳ではなく、これをやっていけばeスポーツ選手になれるよといったものは基本的にはないと思っています。
とはいえ、「これやってるとeスポーツ選手としての道は難しいんじゃないかな。プロゲーマーにはなれないんじゃないかな」っていうのはあります。ひとつが惰性でゲームをする。長時間ゲームしまくっていればいいっていうわけではないです。基本的に弊社のチームにいる選手もそうですし、今世界で活躍している選手というのはすごくゲームに対して真摯に取り組んでいます。「ゲームに対して真摯にってなんだよ」って思われるかもしれないですけど、例えば自分でノートを書いて、「こういう練習をしよう」とか、「こういう意識でこういうプレイをしよう」っていうのをやって、時間を決めてゲームを取り組む。終わった後には、自分で反省点を見直して、何がダメだったかっていうのを考えて、明日までの課題にしてくるみたいな。そういったPDCAのサイクルをちゃんと回している人たちが、トッププロになっているイメージありますね。
学校の勉強、しかも受験勉強のようなハードなことを日常的にしているとのこと。またプロ選手の生活についても1日8時間練習するために8時間寝ましょう、残りの8時間で人間らしい生活をしましょうとなっているそうです。朝走り、夜は筋トレ、お風呂にちゃんと浸かり、三食体にいいものを食べ、夜はぐっすり寝まる。翌朝起きたらまた走ってから練習に取り組みます。このようにe-sportsに本気で取り組むには生活習慣を整えなければならないという話しも皆さんは目から鱗だったのではないでしょうか。
また、親御さんや先生から多くいただく質問も本橋さんに聞いてみました。
田中:子どもがeスポーツを目指すとなった場合、親御さんはその後が心配な点としてはあると思います。eスポーツは若い年齢の方が活躍しているイメージがあるので、その後どうするんだろうとか、その辺りもお子さん自体はそんなこと気にせずに夢中で進んでいるのだと思いますが、やはり若いうちからその先も見据えておいた方のがいいのかとか、それはいかがでしょうか?
本橋:そうですね、僕個人としての意見ではそこまで先は見せなくていいんじゃないかなと思ってます。なんかそれはeスポーツやってる身としてではなく、ビジネスやってる身として、やっぱり30年後何が起きてるかわかんない。この日本という社会において、何が役に立つかとか、何に役に立たないかってすごい結果論な話だと思っていて、僕も昔はeスポーツっていうもので食べていけるとは思ってなかったですし。でもその中でその一番やんないといけないのは、お子さんの自己肯定感を下げないことと、今一生懸命取り組んでいるものに対して理解を持って愛情をもって接してあげることなのかなとは思っていています。で、それが役に立つとか社会に出て、こうどうこうなるっていうのはまた別の話なんじゃないかなと感じます。
子どもは今好きなことを夢中で頑張ること、大人が一番大切にするのは子どもの自己肯定感を下げないこと。そのために子どもが一生懸命取り組んでいることに対して理解と愛情を持って接することというのは、子どもの権利の観点からも正にその通りですよね。それがe-sportsだけではなく社会に出る上で非常に重要なポイントだと、ビジネスをしている側の方からのお話しとして聞けたのが興味深かったです。
親が思う通りに子どもが育つ訳ではなく、社会の変容も読めない中で子どもにとって最善の選択とは何か皆さん不安に思われるところかと思います。本橋さんのお話からはその時々で夢中になれることを一生懸命する。飽きたらまた他の楽しいことを見つけて夢中になる。それを繰り返していく中でたまたまこうなった。ということでした。ここでは詳しく紹介できませんでしたが。親からゲームに対する理解を得るために本橋さんも努力をしていて、お互いの努力あっての今であると感じました。子ども目線でも大人目線でも学ぶことが非常に多い有意義な対談でした。