パートナー通信 No.94

報告:自治体訪問のとりくみ‐2群馬県教育委員会との懇談代表 加藤彰男

はじめに

  2020年~2021年に実施した「子どもの権利に関する県・市町村アンケート」の結果を踏まえた県および県内自治体訪問を昨年の秋から開始し、今年1月25日に群馬県教育委員会事務局との懇談を行いました。
 県教委事務局からは義務教育課の人権キャリア教育推進係長・同係・生徒指導係3名、高校教育課の生徒指導係長・同係2名、特別支援教育課の企画係長・同係2名、生涯学習課の社会教育係長・同係2名、総務課の行政係1名、合計10名の担当者が出席し、群馬子どもの権利委員からは世話人5名が参加しました。

子ども行政の一元化・連携について

 アンケート調査でも細かく質問項目に挙げた子どもの貧困・虐待・いじめ・不登校・障害など子どもの命や心と身体の健康に関する様々な事案に関して、「保護(ケアcare)および救済」の視点に立った教育の現場や教育行政と福祉行政部門・機関との連携がどのように進められているかお聞きしました。
 教育委員会としては、高校教育課・義務教育課・特別支援教育課の3課で福祉・子育て支援行政部門関連機関に出向いての視察・研修を行っています。昨年度は中央児童相談所・発達障害者支援センター・群馬学園など。今年度は群馬病院・心の健康センター・県警少年サポートセンター(中央児相内)・地域の警察署など。いま学校が抱えている具体的な課題を出しながら、学校現場が学校外の関連機関と直接連絡を取りスピーディーに対応ができる道が開かれるように、また教育委員会としても適切な対応ができるように、視察・研修を進めているということです。

 参加者からは、群馬にも民間のアドボカシー協会ができ、児童相談所での取り組みを始めた 県内にも子どもたちのために素晴らしい活動をしている様々な民間の組織・団体があり、2月に予定している「子どもまんなかフェスタ」ではそれらのネットワークづくりにもつながることを期待している 経済的な困難を抱えている子どものための無料学習塾でも学習障害と思われる子どもが増えていて、学校でもサポートしきれていないように思える。教育行政が民間とも連携しながらサポートできる場所を用意してほしい 民間企業でキャリアを積んできた経験からすると、若い人たちが人権感覚を上手く養われていないため、コミュニケーショントラブルやうつ症状を抱えていたと考える。子どもの頃から、家庭環境などでも人権感覚を育てる「法教育」という視点で活動している。「こども大綱」も出されたが、well being=今の幸せが将来の幸せにつながるという視点で行政と民間組織が一緒に取り組み、継続させていきたい、等々が出されました。

「子どもの権利条約」等の研修・学習・広報について

「条約」等についての研修、子どもたちの人権学習、県民への広報等の実施状況をお聞きしました。
 教職員の研修としては、毎年、「管理職」「初任者」「人権教育担当者」に対しての研修や協議会の中で「子どもの権利条約」も扱っている。「人権教育・啓発の推進に関する群馬県基本計画」の「人権重要課題(11項目)」の中に「こどもたち」という項目があり、ここで「条約」にも触れている。また、令4年に改定された「生徒指導提要」では子どもの権利に関する内容が前面に出されるようになっている。全生徒指導担当者や市町村生徒指導担当指導主事の会議等で「こども基本法」や「条約」も含めて子どもの権利についての研修が始められており、継続的に進められるようになるということです。
 各学校では、社会科での基本的人権についての学習、人権週間・月間などで「条約」について触れられる機会があるということです。
 生涯学習の分野では、今年度、中部教育事務所管内で行われた人権教育指導者研修会で、こども基本法11条に基づき、「子どもの人権を通して子どもとの向き合い方を考える」というテーマの研修を行った。講師の喜多明人さんは、制定当時のことにまで遡って、いま「条約」がとても大事であると話された。参加者の内容理解が深められた素晴らしい研修会となったということです。また、教委の家庭教育支援が福祉部局の子育て支援と連携して「家庭教育支援チーム(現在11チーム)」を作り県内各地で活動してる。このチームが横のつながりも作って家庭教育や子育て支援を応援しようと1/19に研修会を開催した。各チームの活動の交流やチーム同士の連携・福祉部局と教委の連携などについて共通理解を深めた。今後も関係者・事業対象者を広げていきたいということでした。
 参加者からは、子ども食堂を行っているが、1/19の研修会に参加した。自分の行っている活動が子育て支援のみならず家庭(教育)支援やその他の様々な支援としての大きな意味があると視野・認識が広がった。行政レベルだけでなく、様々な支援活動をしている民間のチームも参加した研修がとても大事だと思うのでぜひリードしてほしい 保護者の立場で学校から届けられる人権関連のパンフなどを見ると、「差別の禁止と人への思いやり」に終始一貫しているように思える。子ども本人がどのような権利を持っているか、例えば、休息の権利、遊びの権利、教育で言えば子ども自身が分かるように教えてもらえる権利など、子どもたちが自分を守り、成長するためにどのような権利を持っているか教えてもらいたい、などが出されました。

子どもの意見表明の尊重と参画について

 子どもたちの声を受け止める実践事例などについてお聞きしました。
 知事部局の取り組みになるが令5年度から「高校生リバースメンター」を始めた。知事に対して様々な提案やアドバイスがなされ、県の事業として具体化されたり、趣旨を事業実施に反映させたりしている。
 県立学校には、生徒主体の活動を学校として取り組めるよう働きかけている。その中で、自分たちの学校生活のきまりについて自分たちで考え、教職員と話し合い、時には地域の方の意見も聞きながら変更をした事例も出てきているということです。
 参加者からは①「条約」では「子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に自己の見解を表明する権利」となっていて、学校現場で言えば授業・学級・生徒会・行事・施設設備などあらゆることで子どもたちの思いや願いをどう受け止めどう対応していくが問われている。その意味でも研修が大事だ②保護者としての経験で、子どもから思いもよらないことや「~したくない」などと言われたときには決まりや建て前が先行しがちだが、子どもはその思いを否定されたり叱られたりせず、受け止め認めてもらえたことから前向きになれた。日常的な生活の中でこんな対話ができる関係性を先生も作ってほしい、などが出されました。


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