パートナー通信 No.94
取り組み:国連への基礎報告書づくり 子どもの声や姿を国連に届けよう 事務局長 芦田 朱乃
今年の春先、「子どもの権利条約 市民・NGOの会」から、「あなたの声を国連に届けよう」という呼びかけがありました。この会は子どもの権利に関する日本の状況の監視や調査を行い、国連子どもの権利委員会に報告している市民団体です。またこの呼びかけは、2025年に国連子どもの権利委員会が日本での条約の施行と子どもを取り巻く状況を審査するのに合わせた取り組みです。
子どもの権利条約に批准・締約した国の政府は、5年ごとに国内の子どもの状況を国連に報告する義務があります。それと同時に国連は市民サイドからの報告も受け付け、両者を比べて子どもを取り巻く状況の実態を把握します。
このシステムが今回から変更になりました。国連は政府からの報告を待つのではなく、特に重要なポイントに絞って質問状を出すことにしました。理由は、政府と市民サイドからの報告の量が膨大であり、それが締約国196か国すべてに言えるためです。また、日本政府による第4回と第6回の報告が遅れ、近年は5年ごとのはずの報告が10年ごとになっていることも、もしかしたら原因の1つかもしれません。
ともあれ、国連審査の大まかなプロセスは、①国連から質問状、②政府と市民サイドから回答、③審査と勧告、となりました。この「①国連から質問状」の前に国連子どもの権利委員会に報告書を提出し、国連から日本政府に重要な質問を投げかけられるような情報提供をしよう、というのが今回の報告書募集の趣旨です。
群馬子どもの権利委員会ではこの呼びかけを受け、5月から7月末まで、県内の子どもの状況について子ども本人やその周囲の大人たちから声を集める取り組みを行いました。その結果、子ども・若者6人と大人10人から報告が集まりました。
市民・NGOの会に集まった報告のうち、子ども・若者の声については直接国連に届けられるということです(大人による報告は基礎データとして活用され、統一報告書にまとめられます)。子ども・若者からの報告は、権利侵害の事例に限らず、自分の好きなことや夢など、何でも表現できます。
群馬子どもの権利委員会に寄せられた報告の中から、特に子ども・若者からの生の声をここで紹介します。
- ★R.M.(小学生)
今年の担任の先生は優しい先生でよかった。去年の先生は面白かったけれど、宿題をたくさん出すので大変だった。特に金曜日に漢字3ページの宿題を自分で考えて書くのに時間がかかった。
野菜が苦手。きゅうりとじゃがいもは食べられる。クラスのみんな知っていて給食の時、当番さんが野菜を少なくしてくれる。他の人よりおかずが少ない(半分くらい)けれど、その分ご飯を食べている。
ヒップホップダンスを習っていてとても楽しい。
5月の連休にお父さんとお父さんの仲間と富山県にキャンプに行った。夜ホタルイカをみんなで取りに海に行った。取れたてのホタルイカの掃除もやってみた。手が真っ黒になった。 - ★S.T.(中学生)
友達と遊ぶとき、公園が少ない。
天気が悪いときに遊ぶ場所が一か所しかないので、もう少し遊べる場所が増えてほしいです。友達と遊ぶときに困ることが多いです。 - ★匿名希望(中学生)
学校でも家庭でも、何でも、「当たり前」という考え方をやめてほしいです。
夏休みでも宿題がたくさん出るので休みではないです。本当の休みが欲しいです。 - ★匿名希望(高校生)
未来を担う若者が参加しやすい政治をしてほしい。 - ★S.U.(高校生)
今私の家ではお金に困っています。お金に余裕がなく、私が親にお金を貸す事もあります。自分にお金を使えず困っています。周りの人達からも、「お金がない!」という声をよく聞きます。少しでも良いので税金を減らしたりして、私達が過ごしやすい国づくりをして欲しいです。 - ★Y.Y.(専門学校生)
すべての人が生まれた家庭の経済力によって受けられる教育が左右されていることを改善してほしいと思う。お金を気にせずに自分の行きたい学校に進学して学び将来の夢を実現できるような社会を作ってほしい。
大人からは、以下のようなテーマの報告が寄せられました。ありがとうございます。
- 災害訓練と子どものプライバシー
- 障がい児教育の諸問題
- 障がい児支援の地域差
- 子ども期を子どもらしく過ごすこと
- 子ども期の過ごし方と、親になるための勉強
- 子どもの困窮のまん延
- スポーツにおける指導者の暴言
- 豊かな発達を保障する遊びや体験の喪失
- 子ども人口の減少による部活動の問題、常設の子どもの居場所
- 子どもの放射線被ばく
市民・NGOの会による報告書の募集は、2025年に向けて今後も何度かあると思われます。また、国連審査は5年ごとに行われるため、群馬子どもの権利委員会では今後、常時このような報告を集めてデータを蓄積していきたいと思います。
身近な子どもの様子や過ごし方、子どもを取り巻く状況で「これっておかしくない?」と思うこと、逆にもっと広まってほしい優れた取り組みなど、見つけたとき、気づいたときに書いて、いつでも権利委員会にお寄せください。