パートナー通信 No.95

2025年2月1日

目次

「ぐんまこどもモニターアンケート」の実施について 世話人 田中友里

 皆さま本年も宜しくお願いいたします。群馬子どもの権利委員会世話人の田中友里です。
 令和6年は県を始めとした多くの行政機関よりお声がけをいただき子どもたちのネットトラブルやゲーム依存の課題を子どもの権利と法教育の視点から予防・改善するための講座や子どもの権利に関連するイベントなどに関わらせていただきました。
その中で特に印象的な事業のひとつとして群馬県生活こども課が実施した「ぐんまこどもモニターアンケート」があります。
 子どもの声を聴くことで、子どもたちから教えてもらったことが沢山ありましたので皆さまと共有したいと思います。

群馬県の子どもたちの声を聴く事業

 この「ぐんまこどもモニターアンケート」は、令和5年4月施行の「こども基本法」第11条の規定を受け群馬県が定める子ども分野の最上位計画「ぐんま子ども・若者未来ビジョン2020」に基づき推進する各こども施策に対し、こども・若者から直接意見を聴く機会を設け、群馬県のこども施策を当事者とともに推進する体制を定着させる目的で行われた事業のひとつです。
 令和6年度中に計4回実施予定となっており、令和7年1月17日の私がこの記事を書いている時点では第1回分のアンケートが公開状態となっています。
 この調査の目的は

  • 群馬県のこども施策に当事者の意見を反映するため、こどもや若者の皆さんの意見を聴く。
  • アンケートの結果は、群馬県が新たに策定する「こども計画」の参考とする。

 対象は県内有志の小学4年生から大学生までの298名(第1回時)です。
 ※詳しくは群馬県H P
 https://www.pref.gunma.jp/page/673573.html

 なお、以下はアンケートの記載に習って「子ども」→「こども」に統一して記載します。(こども基本法の“こども“表記からきていると思われます。同法ではこどもを18才未満と年齢で区切るのではなく、保護が必要な若者も対象としています。)
 ここではアンケートの全ては紹介しきれないのですが(第1回報告書はA4サイズ28ページ)私からは皆さんがぜひ読みたくなるようなダイジェストと所感をまとめたいと思います。

アンケートに答えながら権利を知り、自分を知る

 まずは第1回アンケートの質問テーマは以下の通りです。
【すべてのこどもたちが幸せに生活するために】質問1〜8
【こどもたちの安心・安全】質問9〜14
【みんなで話してみたいこと】質問15〜17
 全体的に自由記述の質問が多く、答える方もかなりの時間を要したであろうと思われます。
 この質問の中から権利条約に関連するものを特筆するならば、やはり我らがこどもの権利条約の認知度(質問1)
そして
質問6 周りのが、あなたやあなたの考えを大切にしてくれて、「よくわかってもらえた」と思うのはどんな時ですか?
質問7 周りの大人から、あなたやあなたの考えが大切にされていないと感じたり、「こんなことを言われるとやる気をなくしてしまう」と思うのはどんな時ですか?
質問8 「こどもだからこそできる」(おとなになったらできない?やりづらいかな?)と思うことは何ですか?

 最後の質問15、16も読み応えのある内容でした。大人に聞いてみたいことやこのアンケートへの感想や群馬県に伝えたいことが書かれています。
 子どもたちにとっても初めて問われた質問や考えたこともなかったような問いが多くあったことと思います。問われることで改めて考え、自分の思想に気付くことも大切な体験です。施策のためだけでなくこどもたちにとっても有意義なものであって欲しいと願います。

すべてのこどもたちが幸せに生活するために

 質問1の権利条約の認知度、「名前だけ聞いたことがある」まで入れても48.3%と過半数を切りました。実際の割合はぜひ県のホームページで確認していただきたいですが、聞いたことすらない子どもたちが半分以上という現実…うーん。もっと頑張らなければですね。
 因みにこども基本法の認知度はさらに低く、「こどものための法律が、こどもたちに届いていない」という現象が起こっています。伝え方は様々ですが、私は「法教育」という手段を使って今後も普及啓発に力を入れて参ります。
 質問6がこどもたちの「しあわせ」に直結する質問であるのに対し、質問7は何が幸せではないかを教えてもらうことで、大人が大いに考えさせられる質問となりました。
 全体的に大人でも嫌だと思う事ばかりだなという印象。質問8も大人はそう見られているのかーという意味でなるほどという感じですね。
 ぜひ皆さまもアンケート一読してみてください。

第1回ぐんまこどもモニターアンケート報告書
https://www.pref.gunma.jp/uploaded/attachment/642703.pdf

 そしてこのアンケートと同時進行で開催されたイベントが令和6年10月28日の群馬県民の日に県庁で開催された「ぐんまこどもみらいフォーラム」です。
 アンケートの内容もベースになっていますが、その場で登壇者の大人もこどもも、観覧者も交えて意見交換をするというイベントです。
 こどもの意見は大人が思っているよりシンプルで鋭い。大人たちもハッとする意見が多くあったことと思います。

<今回掲載のお写真3点は全て群馬県生活こども課提供>

実はこどもの意見を聴くことに慣れていない大人たち

 そもそも、なぜこどもの意見を聴くのか。聴くことがどう良いのか。についてですが、冒頭のこどもモニターアンケートでもあったようにこどもたちはどんな時に自分が大切にされていると思ったり理解されていると感じるかというと各世代の4割以上が「話を聴く・共感」と回答しています。つまり話を聴き共感してもらうことで自分が大切にされているという安心感や自信を得て幸福度につながっていきます。(こども家庭庁の「こども1万人意識調査」でも親・先生に意見を尊重されていると感じるこどもは幸福度が高い傾向になることが示されています)
 また、こどもの声を聴くこと、意見を尊重することが注目されていますが、その「聴き方」や「尊重するとは何か」についてはあまり広まっていないように思います。
 私も常日頃心がけているつもりでも失敗したなと思うことが多々あります。例えば我が家ではこどもたちにとって両親に「見守られている中で遊ぶ状態」が一番幸せな状態と教えてくれています。それでも私の「見守っている(つもり)」は長男の「見守られている(安心な幸福を感じている状態)」ではなかったというシーンがありました。
「ちゃんと見守ってもらえてると思えるように見ていて欲しかった」
という長男の主張に崩れ落ちる思いでした。こどもから教えてもらわなければわからなかったことです。しかし一般的に大人の主張(しかもできていると思っていること)に対しこどもから反論があったとき、大人はその意見を尊重できているでしょうか。意見を押さえ込まれたり、圧倒され主張をやめ、諦めてしまう。こんなシーンが家庭や学校でもあるようです。
 私の講座はゲームやスマホ関係が多いですがそういったシーンでの親子の会話でも意見を聴くこと、尊重することにまだまだ慣れていないのが現状です。

好きも嫌いも尊重する姿勢

 こどもみらいフォーラムでも改めてこどもたちの生の声を聴くことで「話の聴き方」や「心構え」を皆さんと共有できた良い会でした。
 私たちは「何が好き」「何が心地よい」の話はよくしますが、「何が嫌い」「何が不快」かはあまり話し合うことがないように思います。しかし私たちは「好きと嫌い」から成っていてそのどちらも尊重されることで「ぼく(わたし)はここにいていいんだ。これでいいんだ」とこどもたちも安心することができるのではないでしょうか。
 そしてこれは私がいつも話していることなのですが「好きや嫌いを尊重する」とはこどもが学校が嫌だと言ったら休ませるとか、宿題をしたくないと言ったらやらなくて良いと言うとか、そうではありません。「そういう気持ちだったんだね」と受け入れどうしてそうに思ったのか、どうしたいのか「話しを聴く姿勢」のことを言っています。話し合った結果、こどもの主張通りになるかもしれませんし話し合いながら自分の気持ちを整理し、受け入れてもらった安心感からやっぱり頑張るとなるかもしれません。大切なのは子どもが自分の気持ちを受け入れてもらった安心感を得られること、それによって自分で判断できる力を得ることです。
 こどもの幸せを実現するならまず「こどもの言葉に耳を傾ける」ということ、また思いを伝え合い話し合うことでお互いにより良く生きていける道があるということがこのこどもモニターアンケートとこどもみらいフォーラムの登壇から改めて学び実感したことでした。貴重な経験をさせていただき改めて感謝です。


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