2018年度定期総会
議案1 「2017年度 活動のまとめ」
2 活動のまとめ報告
1 「子どもの貧困」問題への取り組み
◆2017年度「総会」第2部企画『子ども食堂と子どもの育ち』
2015年度の総会・第2部企画として「ぐんま教育文化フォーラム」「教育ネットワークぐんま」と共催で「子どもの貧困対策と学習支援」の問題を「待ったなしの課題」として取り上げて以来、3回にわたってシンポジウムを継続開催して、学習支援に取り組む多くのNPOやボランティア団体が集い、県や市町村の行政担当者も参加して、成果とこれからの課題を明らかにしてきました。その中で、子どもたちの「食」の問題がさまざまな場面で指摘されていました。子どもの成長・発達にとって、「学ぶこと」とともに「食べること」も欠かすことのできない基本的な権利であり、2017年度の総会第2部企画では同じく3組織共催で「子ども食堂」の取り組みを取り上げることにしました。今日の政治・経済がもたらす構造的な「格差と貧困」が子どもたちの生きる権利を脅かしている実態を明らかに、地域でのさまざまな取り組みの交流を行政担当者も交えてすすめることができました。
冒頭の3つの報告と交流・討論を通して、「子ども食堂」の取り組みは、単に貧困救済・支援ということではなく、子どもも高齢者も含めて地域の人たちだれもが気楽にやってきて、食事をしながら語り合ったり、遊んだり、学び合ったりできる「居場所づくり」となっている。子どもたちの社会的関係性の貧困への対策としての意味が大きいということが見えてきました。また、子ども食堂を運営する側にあっても、地域の人たちからの寄付やフードバンクの取り組みが食材確保の大切な軸になり、さまざまな人たちがボランティアで参加しているなど、地域の人々が結び合う「地域づくり」の場にもなることが見てきました。
このような取り組みと並行して、県の福祉課・子ども課・教育委員会、県社会福祉協議会なども意欲的な施策や取り組みを進めており、行政と市民組織との連携の可能性が広がってきています。
◆「第56回群馬県母親大会(2017/9/10)」及び「国際婦人デー集会(2018/3/4)」
第56回群馬県母親大会の第1分科会「子どもの貧困と学ぶ権利の保障」の助言者として小林美代子さんが参加し、2010年9月から2017年5月までの7年間に計5回にわたって「子どもの貧困」問題をとりあげたフォーラム・シンポジウムの成果にもとづいたレポートをしました。成長と発達に不可欠な「食べること」「学ぶこと」「遊ぶこと」などの基本的な日常生活が脅かされ、かけがえのない「子ども期」全般が崩壊・剥奪されている現実を目の前にして、「何か自分にできることはないのか?」「何もせずにはいられない!」と、県内各地に広がっていった学習支援や子ども食堂の取り組み、また、県の福祉課・子ども課、社会福祉協議会、各自治体行政などとの連携などが交流・共有されました。「国際婦人デー集会」でも小林さんが報告を行いました。
2 『子どものけんりカルタ』、パンフ『わかりやすく言いかえた子どもの権利条約』の普及と活用の取り組み
◆玉村町の小学校での「子どものけんりカルタ」を活用した出前授業、親子行事や人権学習が教育活動の中にしっかり位置づけられ、充実してきています。親子行事に参加した保護者が「自分自身一人ひとりの大切さがわかりやすく書かれている。子どもたちも人権について知り、身近に考えるきっかけになっているのではないか。また、読み札を見返すと、プラスになれる言葉がたくさんある。もし、子どもが何かうまくいかなかったり、悩んだりしたときに、このような前向きになれる言葉をかけてあげようかと、私にとっても参考になった」という感想を寄せるなど、カルタの言葉への共感が広がっています。
◆「子どものけんりカルタ」出前授業を広める試みとして、「出前授業チラシ」を作成して配布する取り組みを継続中です。今のところ成果として現われていませんが、引き続き多方面への配布・宣伝の取り組みが必要です。
◆「子ども食堂」での活用も進んでいます。安中・前橋・桐生などの子ども食堂では、遊びや交流の時間に「子どものけんりカルタ」を活用して、楽しく遊ぶことを通して、子どもの権利についての気づきや学びを実現しています。
3 「子どもの権利条約31条」を実現する取り組み
◆子育てシンポジウム『子育てから「子育ち」へ~心地よい居場所と自由なあそびから~』
2018年2月18日に「ぐんま少年少女センター」と共催で子育てシンポジウム『子育てから「子育ち」へ~心地よい居場所と自由なあそびから~』を開催しました。
家族や地域社会環境、学校教育などの変化によって、子どもたちの「育ち」にもさまざまな変化が現われて来ています。子どもたちの人間らしい、豊かな成長・発達の「根っこ」を育てるには、「心地よい居場所と自由なあそび」が日々の暮らしに中にどうしても必要であるという問題意識から設定された今回のシンポジウムは、まさに「条約31条(休息・余暇、遊び、文化的・芸術的生活への参加)」を実現する大切な企画であると位置づけて、積極的に「共催」に取り組みました。
街中のほっとできる駄菓子屋付きの居場所で子どもたちがのんびり過ごしながら、自分たちで遊びを進化・発展させていった「Always遊びの学校」、サマーキャンプやあおぞら学校などので子どもたちの自主的・民主的な活動を育て、異年齢集団で学び合いや育ち合いを大切にする「ぐんま少年少女センター」、放射能から子どもを守る取り組みからスタートし、環境・地域・教育そして子ども食堂などに取り組んで、子どもたちが他者と出会う可能性を広げている「Annakaひだまりマルシェ」、地域の河川敷が実は貴重な鳥や植物の生息地と分かり定期的な整備に子どもたちも参加し、夏の子どもの森まつりでは自由に、無条件で遊ぶ体験を大切にしている「岩倉自然公園水辺の森を愛する会」の4つの活動報告を受け、子どもたちを、そして子どもの育ちをどう見るかの「子ども観」をいろいろな角度から交流し、学び合うことができました。
子どもの権利委員会からは事務局長が、「条約31条」の資料をもとに、子どもの権利条約の4つの柱(生きる権利・育つ権利・守られる権利・参加する権利)に触れました。また、発達のそれぞれの段階で子どもにとっての「最善の利益」を保障することが大切。子どもは自分の声に耳を傾けてもらい、思いや願いをまるごと受けとめてもらえることで自己肯定感を高め、それをエネルギーにしてぐんぐん「育つ」。そんな環境を作り出すのは大人の役割ではないかとまとめました。
「少年少女センター」で育った高校生・大学生の司会が明るく柔らかな雰囲気を作り出し、「センター」の全国の仲間からの貴重な発言もいただきました。チラシや新聞記事を見て参加した市民からも「自然、人、居場所、あそび、食、子ども、高齢者…キーワードがたくさん出てきて何かやりたくなりました」といった感想も寄せられています。パネリストの皆さんからは、これをきっかけに「居場所や遊び・体験」をテーマにした活動のネットワークを作りたいとの声も寄せられました。
4 『基礎報告書・群馬』の普及と『つくる会・統一報告書』の学習の取り組み
◆一昨年度末(2017年3月)に『第4・5回市民・NGO基礎報告書・群馬』を完成させ、「子どもの権利条約市民・NGO報告書をつくる会」(以下「つくる会」)に提出し、『つくる会・統一報告書:日本における子ども期の貧困化-新自由主義と新国家主義のもとで』の内容に群馬の子どもたちの状況や私たちの取り組みを反映することができました。2017年5月には『パートナー通信』No.69とともに『基礎報告書・群馬』をすべての会員に届けました。その後、「総会」をはじめ県内のさまざまな集会などで頒布に取り組みました。
◆『つくる会・統一報告書』は国内のさまざまな活動団体や地域から提出された合計104本の基礎報告書を基にして作成されました。「第4・5回日本政府報告書」が2017年6月末に国連に提出されたため、『つくる会・統一報告書(英語版)』は予備審査の日程などに間に合うように2017年11月に国連に提出されました。英語版の作成にあたって群馬の会員4名も英訳作業に協力しました。この間、「つくる会通信」に群馬からの活動報告が掲載されました(17年8月「子ども食堂と子どもの育ち」、17年11月「群馬の基礎報告書づくり」)。『つくる会・統一報告書(日本語版)』は2018年3月に完成し、3月18日に東京で開催された「統一報告書学習会」には群馬から2名が参加しました。学習会では『統一報告書』の基本的のイメージは、①格差社会日本における子どもの権利侵害=子どものしあわせのあらゆる側面の貧困化、②この流れを人為的につくりだしたのが新自由主義と新国家主義に基づく国家の組織と機能の大改編。したがって、子どもの権利条約に基づく国家の組織と機能の全面的再構築が求められている、③子どもの成長発達にもたらした悪影響=成長発達の「社会的条件」の剥奪〔1.相互的な人間関係、2.自由な時間(咀嚼する時間+自分の要求をつくりだす時間)〕の剥奪、④日本政府報告書に示された挑戦(高度に競争主義的な教育制度の否定、教科書検定制度を通じての政府の教育内容統制の否定)は虚勢である、などであると報告されました。
◆『基礎報告書・群馬』および『つくる会・統一報告書』はどちらも大部なものですが、さらに普及と学習をすすめて、2019年1月に予定されている国連子どもの権利委員会の「本審査」とその結果として出される「日本政府に対する最終所見・勧告」の普及と学習につなげていくことが大切です。
5 保育園・幼稚園・学校などの各種教育機関との連携の取り組み
◆「子どものけんりカルタ」の普及と活用の取り組みとして、玉村町の小学校(5校)の「親子行事」「人権教育」などでの連携が進み、子どもたちの自らの権利への気づき、教師・保護者の子ども観や子どもの権利への気づきを促すなどの成果をあげています。この成果をさらに県内に広げていくための活動の具体化が求められています。
◆「群馬県保育問題連絡会(群馬保育センター)」との連携も継続的に進められています。毎年開催されている「群馬保育のつどい」を後援し、開催地域に在住する会員が参加しました。国の「幼稚園教育要領」や「保育指針」の改訂、待機児童、保育現場の勤務条件や保育士の数、そして子どもたちの成長発達の課題など、保育をめぐるさまざまな問題への理解を深めるため、『パートナー通信』No.72(2018年1月)から1年間、4回シリーズ「保育園は今」の執筆を群馬保育センターに依頼しています。また、『パートナー通信』の紙面を飾る素敵な子どもたちの写真をセンターからも提供していただいています。
6 子ども会員の活動を保障する取り組み
子どもたちの「意見表明」の場として、『パートナー通信』に「こどもぺえじ」欄を設けて、子どもたちは、日々の生活の中で思うこと、それぞれの興味や関心のあることを、絵や文にして自由に、楽しく、そして思いを込めて表現しています。
編集にあたっては、紙面構成で若干のアシストをするほかは、保育園児の「ことのは」とあわせて、子どもたちの自由な表現を最大限生かすように心掛けています。「こどもぺえじ」をとおして、さらに多くの子どもたちとの結びつきを広げ、子どもたちの声が直接反映する活動が作り出せるよう工夫しながら、子ども会員を増やしていくことが望まれます。
7 組織運営(会員拡大、会費納入、会報、ホームページ、世話人会など)
◆2018年4月時点で会員数は大人174人、子ども6人となっています。高齢化や経済状況の悪化などにともなって会員数の漸減状態が続いています。会費納入率の低下も含めて会財政の不安な状況があります。会員・県民の願いに答える活動づくりの工夫や、世代的継承の課題を念頭に、子どもに直接関わる分野で働く人たちや子育て世代の親たちへのつながりを広げて、入会に向けた意識的なお誘いや会費納入促進の呼びかけを進める必要があります。
◆会報『パ-トナー通信』は、年4回発行は維持できました。内容的には、県内の「子どもの最善の利益」を発展させるために続けられているさまざまな活動を紹介してきましたが、ややもすると世話人レベルで関われる活動の報告などに限定される傾向にあります。県内の子どもの状況に広く目を配り、さまざまな活動の情報を集めて会員に伝えられる、あるいは会員同士の交流も図れる「魅力ある会報」づくりのために編集態勢の強化が必要です。
◆私たちの活動をより広く、多くの人々に知ってもらうために「ホームページ」が大切な役割を果たしています。会の活動や『パートナー通信』などの最新の紹介はもとより、ブログを通して全国のさまざまな動きを把握することができます。また、リンクをへて全国の関連組織や情報・資料源へとつながることができ、私たちの活動をより豊かにしています。ホームページ管理を全面的にお願いしている見城昌平さんのご奮闘に感謝と敬意を表します。
◆定例世話人会を12回、会報の印刷・発送のための臨時世話人会を4回実施しました。月1回の世話人会なので、運営実務処理のための内容がどうしても多くなりますが、「世話人各自の関わっている活動報告や近況報告」の時間を出来るだけ取るようにしました。これらの報告を通して、子どもたちの置かれている状況認識や分析、課題の発見などに役立つ交流・討論ができるようになりました。
新たな世話人の参加を得て活気あふれる活動が作り出されつつあります。経験豊かな世話人の実績を生かしつつ、世代継承を図っていくために、さらに新たな世話人の参加を増やしていくことが必要です。