パートナー通信 No.42
『広げよう 子育ての輪』
―「第9回 群馬保育のつどい」参加ルポ
中毛会場 (5月16日(日) 9:30 ~ 14:30)
<小林 美代子さん>
前橋市総合福祉会館にて「中毛地区保育のつどい」が開催されました。「考えよう私達の食生活」の分科会に参加しました。講師は八田純人氏(農民連食品分析センター)でした。
「今、私たちの食卓は多彩な食品であふれ、誰もが豊かだと実感できるものです。しかし、その裏側をのぞいてみれば、日本の自給率(カロリー)は40%しかありません。お店の商品をちょっとひっくり返してみれば、あれ?こんなものまで外国から?と驚くこともしばしばです。今日、私たちは、低価格、手軽、便利、長持ちする、見た目がいい、コマーシャルで有名、ブランド、おまけ付き、そんな素敵な食環境を手に入れることができました。でもその一方で、私たちは何かを見落としていないでしょうか。削ってはいけない部分まで削ってしまっていないでしょうか。食糧は国の礎であると言えます。残留農薬などの問題、飢餓人口の増加、穀物の国際相場の高騰、生産者所得の低下、農業従事者の高齢化、農地法の改正、さまざまな問題が目の前にあります。今、私たちはその礎を決める重要な分かれ道に立っています。私たちは食料の確保をどうするべきかについて考え、もう種を蒔かないといけないところまで来ています。安全で安心できる食料の自給率を高め、健康で楽しい食生活をこれからもずっと続けていくために、毎日の食卓を支える仕組みを見直し、私たちに何ができるのかを考えていきましょう」、と八田さんは呼びかけています。
当日、八田さんはコンビニおにぎり、お茶やジュースなどたくさんの食品をテーブルに並べ、出席者の参加を得て実験(?)しながらの熱演でした。会場からは“エッー”、“やだあー”などの驚きとも怒りともの声が上がっていました。「うめぼしおにぎり」ひとつを例にとってみても、自分で作るときは、ごはん・うめぼし・塩・のり、の4点あれば完成です。しかし、コンビニのおにぎりの裏に書かれた原材料名はなんと多いものでは11~12点もあります。その上どのメーカーも表示していないけれど確実にすべてのおにぎりに入っている「品」がありました。それは油です。コンビニおにぎりは時間が経ってもふっくら、つやつや、フィルムから取り出しても米つぶはどこにもくっついたりしない裏技の主役だそうです。みそ、醤油、うどん、そば、せんべい、菓子・・・。あらゆる食品の裏に生産コストを抑え、いかに利益を上げるかの熾烈なたたかいが地球規模で繰り広げられているのです。
どの食品も、食べたからすぐ病気になるわけでも死ぬわけでもありません。しかし、消費者はこのまま黙って無批判に受け入れるだけでいいのでしょうか?私たち一人ひとりの意識と確かな目が求められているようです。
西毛会場 (5月30日(日) 9:30 ~ 15:00)
<茨木 邦子さん>
全体会・増山 均氏(早稲田大学)の講演「子育ては親育ち・社会づくり」を聞いて・・・
育英短大の体育館にギリギリの時間に着いたときには、もういっぱいの人であふれていて、舞台では保育士の人たちが、踊りを披露していました。続いて子どもたちの元気な歌、一気に何十年前の子育てのときがよみがえってきました。
増山 均氏の登場に体育館全体が拍手に包まれました。1948年生まれの増山さんは1947年12月に児童福祉法が制定されたので、戦後の法律によって育てられてきたこと。また1977年ポーランドの医師、詩人でもあるヤヌシュ・コルチャックの考えが基になって1989年に子どもの権利条約ができたこと。平和であればこそ〈いのち・たましい〉をつなぎ人間の文化を開花させることができる。ご自身は3男2女の父親として子育てに関わってきて、子育ては〈矛盾〉がいっぱいだから〈面白く〉、子どもは枠にしばられないので、〈ユニバーサル〉な存在であると、ご自分のお孫さんのエピソードもまじえて話が進められました。
そして、子育てを豊かにする〈3つの育〉:〈養育〉〈遊育〉〈教育〉を切り離さないことが保育である。家庭で大切にしてほしい〈養育〉とは〈食・眠・雰囲気〉が大切で、特にフンイキとは家庭の空気を吸って育つ、その空気は親がつくるもので特に父親がつくるフンイキが大切であることを強調しました。〈遊育〉は子ども同士の育ちあいの力〈活力・協力・人間力〉、きびしい世界で育ちあう子どもの環境の必要性。〈教育〉は学びの楽しさが大切で、自然の中で遊びが少なく、遊んでいない疲れが多くなっていることを指摘しました。
さらに、人生80年時代をみきわめ、〈晴れの日・雨の日・嵐の日〉に備えるということでした。乳幼児期・思春期・思秋期・介護期ととらえ、3つの困難期の〈重なり〉の時が危うい。自分自身が思秋期で、子どもが思春期、親が介護期、その困難を乗り越える力を持つこと、そのために人間浴のできる仲間づくり〈3つの改革〉のすすめ。
- ひとつは、たいへんだけど子育ては面白くその中で親〈自分自身〉が育っていかなくてはならない、子ども観、子どもへのまなざしを改革していくことが必要。
- ふたつめは、身近な地域とのつながりを考え、自分の回りに親密圏をつくる努力をする。
- みっつめは、仲間とともに〈しくみ・制度〉を考えていこうとすることが大切。
まずは自分たちで親つながりをつくっていくこと。そして子どもも大人も人間として違いはなく、知識は違うが知性は一緒。経験はないが感性は大人より子どものほうが上であること。その子どもを通して未来のためにできることをやっていくことが大切であると強調しました。この日雨模様の天気、広い体育館の中で寒さが身にしみましたが参加してよかったと思いました。
東毛会場(6月6日(日) 9:30 ~ 15:00)
<田部井 三郎さん>
第9回という「保育のつどい」は3つの会場で行われた。私は伊勢崎市境総合文化センターで行われた東毛会場へお邪魔した。
何回か参加させてもらっているが、何故か他の集会にない緊張感みたいなものをおぼえる。年寄りなので場違いの所というように感じられるのだろうか。
そのこともあってか、分科会の中に入っていくのはちゅうちょした。大方の所をちょっとのぞかせてもらった。みなさんそれぞれに真剣にやっていて頼もしい様子だった。私の関心をひいたのは、外の芝生のあちこちでくりひろげられていたいわゆる「昔の遊び」と「泥だんご作り」だった。ことに「泥だんご」作りには20~30人位の行列ができていて、時々嬉しそうな声がひびいた。子どもより大人のみなさんが喜んでいるようだった。子どもたちのいっしょうけんめいな姿もみられ、子ども育ちもここでは正に順調というところだろうか。この範囲で見る限りは、親も保育士さんも子どもも大変良い伸び行く姿を見せていたのではないだろうか。
午後は伊藤千尋さんの講演です。実は私のお目当てはこれだったのです。以前にもどこかで拝聴したことがあり、著書も拝読したことがあるのですが、何度でも拝聴したいと思ったのです。一番私が引かれたのは、憲法を生活の中に活かすいわゆる「活憲」ということと、一人の声でも世の中を変える力になることがある、と言う熱弁でした。
言ってみれば決して新しいことではないでしょうが、それを実際に行動化した人(外国の人)の実際の話は魅力的でした。憲法が生きる社会をつくることを私たちはめざさねばならないわけですが、それには一人ひとりの意気と行動力が求められると言うわけです。日本では「正義」ではあっても、個人ではそれを貫くことが難しく、“偉い人”と言われるヒトの言うことに従うという悪習があります。政治を担う人をはじめ経済の主要な位置にある人、教育界を動かしている人たち、文化人と称される人など、一般市民から尊敬さるべき人たちが、まちがったことを平気でやっている、という日本の風土において、私たち一人ひとりの良心と決意が動き出さなければならない、というお話だったと思います。
憲法を活かすということとかかわって私は、“子どもの権利条約”を子どもが日常生活の中でどれだけ活かせるか、を考えていきたい。
憲法も私たち国民が使って世の中を変革することこそ意味があるのと同様に、子どもの権利条約だって普段に使ってこそ意味があるわけで、子どもたちが先ずこの条約を日常に活かせるようにしなければならないと思う。子どもたちが権利条約を持って大人たちを訴えることができなければならないと思う。権利条約を無視しては、たしかな子ども育ちはありえないという認識をすべての人に。