パートナー通信 No.43

なくそう子どもの貧困 まもろう子どもの権利
~子どもの権利の実態と貧困化について考えるつどい~

 2010年9月11日(土)、群馬子どもの権利委員会も参加している「教育ネットワーク群馬」主催の『子どもの権利の実態と貧困化について考えるつどい』が前橋市総合福祉会館で開催され、約60人の市民が参加しました。ここでは紙面の関係で概要報告といたします。

経済的格差と困窮の中で
 大野ゆう子さん(保育士)、平石隆則さん(中学校教諭)、船橋聖一さん(高校教諭)からの報告の中には、「保育園は小さな社会なんです。だから今起きている世の中の問題がほんとにギュッと詰まっている社会です。」「あるお父さんは、先生、子どもの進路のことも心配だけど、まず自分の仕事を探さないとどうにもならないんだよと…」「別のお母さんは「(私立)高校入試って理不尽ですね。お金のある家の子は塾にも行けて、成績がよければさまざまな優遇措置が受けられるけど、経済的に困難な子どもは塾にも行けないし特待にもかからない。」「支援を受けられる制度があるのに拒否してしまう。ここには何か経済的な貧困の問題とともに他者との関係性の貧困というものが見える。」「困難な生徒に寄り添って"支援"の取り組みに関わっていくと、それは学校の仕事の範囲を越えるといわれてしまう。」など、子どもたちが置かれているさまざまな現実や子どもたちの保護者の苦悩、保育士・教師たちの苦悩と粘り強い取り組みが語られました。

関係性の再構築・信頼の回復への道を探る
 現場からの報告を受けて、横湯園子さん(元中央大学教授)から課題提起がありました。
 はじめに、6月のジュネーブ国連子どもの権利委員会の様子に触れてから、今回の第3回勧告の91項目全体を通して、日本の子どもたちが貧困・困窮の中でどういう問題に出会っているかが丁寧に貫かれている。クラップマン委員からは、日本のスクールカウンセラーはそういったことをカバーできるのかという質問もされた。「福祉、医療、精神保健、教育、心理といった分野の専門家が、今日本の子どもたちが突き当たっている困難に、子どもの権利条約の考え方に立ってきちんと研修をするように」と勧告されているとも話されました。

 この困難な状況にどう取り組むかについては、横湯さんが関わってこられた事例を紹介しながら関係性の再構築、信頼の回復という視点から話されました。経済的貧困が心の貧しさをもたらすとは言え貧困イコール心の貧しさではない。健気に生きていく子どもも多い。しかし、「支えられ感」の喪失、人間不信、あきらめや絶望、「死にたい」と言う言葉、攻撃性、医療の手が及ばない一方で、治療依存・服薬依存も心配、重篤な症状に苦慮するという状況に対して、「経済的困窮」の視点からは、生活現実を直視し、現実を理解できる子どもに。「関係性の再構築」の視点からは、語り、聴き取られることによる主体性の回復と確立というプロセスが提起されました。
 後半の交流・討論では教師、弁護士、保育士、福祉施設職員など10人の方からの発言がありました。

(文責:加藤彰男)

《報告・課題提起・発言の詳細は次号で紹介いたします。》


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