パートナー通信 No.44

シリーズ国連子どもの権利委員会「第3回最終所見・勧告」を読む ②

 「第3回市民・NGO報告書をつくる会」主催の最終所見検討拡大総会に参加した、高橋清一さん(2011.1.9)大浦暁生さん(2010.11.27)からの報告を紹介します。(編集部)

第3回最終所見を読み解いて、日本を変えよう
<第3回最終所見検討拡大総会が訴えること>

高橋 清一

 国連子どもの権利委員会(以下、CRC)は、条約44条に基づいて、昨年5月下旬から6月上旬にかけて日本政府報告書を審査した。その際、われわれの統一報告書等がどの程度、所見作成に参考にされるか、注目してきた。その結果、われわれの提言が活かされ、さまざまな改善勧告を盛り込んだ最終所見となった。
 DCIを中核とする「つくる会」は、この所見をどう評価し、かつ読み解くべきか、全国の仲間に呼び掛けた。全国であたらしい流れが起こり、昨年の11月27日と今年の1月9日に開催された第3回最終所見検討拡大総会に結集された。ここで大運動が総括された。その成果は素晴らしいものとなった。この大運動の成果を文書にまとめて出版し、日本の変革の手引きにすることになった。

 さて以下、これからが本論である。

 この文書のタイトルは、『子どもの権利条約と「新自由主義社会日本における子ども期の剥奪」』(仮)とし、本年11月20日(条約制定記念日)に出版することになった。「善は急げ」、拡大総会は直ちに編集委員会を設置した。第1回編集委員会を翌る1月10日に発足させた。

 文書の内容は大雑把に言うと次のようになる。全体を7部構成にする。

 第Ⅰ部はこの文書の概要説明。説明事項は3つ。①「子どもの新しい権利について」のわれわれの主張、これに対する最終所見の見解・応答、②新自由主義社会についてのわれわれの見解・主張、最終所見の見解・応答、③子どもたちの訴え、これに対する最終所見の応答。以上が第Ⅰ部だ。

 第Ⅱ部では、①子どもの意思の尊重と子どもの指導、②子どもの生存と発達、③子どもに対する暴力、④家庭環境と生活水準、⑤代替的家庭環境と児童相談所、⑥教育と余暇、⑦障害を持つ子ども、⑧少年司法、⑨外国人の子ども等、9つの領域についての勧告について読み解く。

 第Ⅲ部では「勧告に基づいて日本を変えよう」と呼びかける。以下、その大胆な実践提起を列記すると、①子ども関連行政組織、子ども関連法、子ども予算を変えること、次に②財界を変えること、③親と教師の意識を変えること、④学校制度と教育政策を変えること、⑤福祉施設職員の意識、福祉施設・政策を変えること、⑥障害児関連施設・制度を変えること、⑦裁判官の意識を、裁判所を変える。これらを変えるには、どうしたらよいのか。これらを実現するために⑧日本国憲法の理解を深めよう、深め直そうと言うのが第Ⅲ部であろうか。

 第Ⅳ部は、国連の応答についての公式文書、すなわち、和文に正しく翻訳された①最終所見、②議事要録、③重要発言を収録する。

 第Ⅴ部では、提出された日本の子どものレポート、第Ⅵ部では、日本の大人と子どもの国連CRCでのスピーチを収録する

 そして最後の第Ⅶ部で、われわれが全力を尽くして仕上げた『新自由主義社会日本における子ども期の剥奪』を声高らかに叫ぼうというのであろうか、そうである。

 以上のことが本年1月9日に決定された。
 正直のところ、私には理解困難な部分がたくさんある。DCI日本支部から講師を招いて率直に質問して意見交流できたら、「変革」にむけての実践に役立つだろう。そういう知恵と行動が見つかるかも知れない。これが私の願いである。


群馬子どもの権利委員会は
「第3回国連勧告」をいかに受け入れたか

大浦 暁生

 群馬子どもの権利委員会は、この「第3回国連勧告」をどのように受け入れたか、簡単にまとめておきたいと思います。受け入れは大きく言って、勧告を学習する活動と勧告を生かす行動の2つになるでしょう。

世話人会で勧告を学習し通信で紹介

 まず勧告の学習が必要です。月1回の定例世話人会で議論し、その論議やDCIでの論議をふまえて、世話人が『パートナー通信』で勧告を順次紹介し論じることにしました。前号では「調整」と「国内行動計画」の項目が紹介されていましたが、本号では「資源の配分」つまり政府と自治体の予算配分を論じた項目をとりあげましょう。
 勧告は日本の社会支出が低く、「人口の約15%が貧困である」のに、「子どもの幸福および発達のための補助金および手当てがそれに対応して増加していない」と言います。また、子ども手当て制度と高校授業料無料化は歓迎していますが、「中央政府および自治体予算における子どものための予算配分がまったく明らかになっておらず」と手きびしい(以上、パラグラフ19)。
 こうした懸念をふまえた勧告は、「子どもの権利の視点から中央および自治体レベルにおける予算を精査」し、「子どもの権利の優先性を反映した戦略的な予算線を設定すること」になります。また、政策の成果を計る「評価制度を確立」し、あらゆるレベルで「市民社会および子どもとの協議を確保すること」も勧告しています(パラグラフ20)。
 要するに、真に子どもの幸福と権利に配慮した一貫性のある政策がなく、政策を裏付ける予算措置もなされていない不備を突いたもので、日本政府は真摯に耳を傾けるべきでしょう。

貧困と闘い子どもの権利を守る集会

 日本の「貧困」は国連勧告でも指摘された大きな社会問題で、なんとかしなければと多くの人びとが切実に考えています。そこで、他団体とも共同し「教育ネットワークぐんま」主催の形で、「なくそう子どもの貧困、まもろう子どもの権利」と題する集会を2010年9月11日に前橋で開催しました。
 集会では、実際に国連で日本の子どもの状況を訴えた横湯園子さん(DCI副代表)を招き、国連勧告を底流に各レベルの教育現場からの報告も交えて、子どもの貧困と権利の問題を話し合いました。その概要はこの通信の前号と本号に掲載されています。

全市町村に子どもの権利アンケート
 
 勧告を生かす行動としては、「子どもの権利に関するアンケート」を2010年10月14日付で県内全市町村に発送しました。国連勧告が出るたびに毎回実施していますが、今回は、回答が遅れぎみで、内容もやや薄いのが気になります。「国連勧告に関して国や県から情報や通達がありましたか」と毎回尋ねていますが、今回も全部「なし」です。
 ただ、このアンケートで初めて国連勧告のことを知ったという回答もかなりあり、それもアンケートの効果だと言えましょう。今後とも督促を重ねてできるだけ多くの回答を集め、その結果をもとに県当局や市町村と話し合うことにしています。

さまざまな集まりの場を活用して

 そのほか、各種の集会で子どもの権利条約と国連勧告を広める活動をしています。

 たとえば、3月12日・13日に水上温泉「松乃井」で開催される民研の全国教育研究交流集会では、「憲法・平和と教育、子どもの権利」と題する分科会を設定してもらい、群馬子どもの権利委員会からもレポートを出すことになっています。


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