パートナー通信 No.80
目次
- 1. 2020年1月/No.80(通算96号)
- 2. 〔年頭の挨拶〕
子どもたちの笑顔群馬子どもの権利委員会代表 大浦暁生 - 3. シリーズ:
『子どもの権利条約31条:
余暇・休息、遊び・体験、文化・芸術』―④
様々な世代が交流して創り上げる
合唱劇『ぞうれっしゃがやってきた』 - 4. 【地域の活動紹介】「親の学び場 Manabuono(マナボーノ)」
~子育てを通してみる世の中~Manabuono スタッフ 阿部 功 - 5. 第3回 世話人会合宿(2020年1月16日)「DVと虐待」
(東京都目黒区5歳児虐待死事件から) - 6. 子どもが子どもらしく生きる時代を
国連子どもの権利条約 採択30周年・批准25周年記念集会に参加して事務局長 加藤彰男 - 7. 子どもの権利に関する
自治体アンケートを計画 - 8. こどもぺえじ
- 9. 会員からのお便りパト通信No.79の感想・近況
- 10. 第5回 食育レストラン「 晴れのひ」
- 11. 世話人会だより学校のルールは誰のため、何のため?
第3回 世話人会合宿(2020年1月16日)「DVと虐待」
(東京都目黒区5歳児虐待死事件から)
認定NPO法人「ひこばえ」の茂木直子さんを講師に お招きして「DVと虐待」についてお話をお聞きしました。
世話人の清水秀俊さんが学習会の内容をまとめました。
認定NPO法人「ひこばえ」の茂木直子さんを講師に お招きして「DVと虐待」についてお話をお聞きしました。
世話人の清水秀俊さんが学習会の内容をまとめました。 講師の茂木さんは、詳細な資料にもとづいて、熱く語ってくれました。以下、お話の概略を列挙します。
- ◎様々な暴力が社会にあふれている-DV・デートDV・虐待・いじめ・体罰・しごき・パワハラ・セクハラ、そして戦争など。
- ◎「暴力を甘く見ていませんか?」-暴力容認とは、上記の暴力を軽く見ること、大したことないと加害者に加担すること。「何であれ、暴力した人が100%悪い。」「暴力は人権侵害である」と認識することが大事。
- ◎DV、虐待の特徴は「いじめの要素が強く、巧妙」であること。例えば船戸結愛さん事件の場合、被害者自らがするように仕向けていた。「態度で示せ」と言って「まだできていない。まだできていない」と畳みかけて、自分から髪の毛を引っ張らせたり、自分の足を強くアザになるまで叩かせたり、それでも「できていない。できていない」と責め立てる。声を荒げないで問い詰めていく。加害者自身が悪く言われないために非常に強圧的な、威嚇的な説得。非常に卑怯なやり方。
- ◎子どもの虐待は増え続けている。平成28年度122,578件。虐待死は年間50人、7日に1人の子どもが虐待死している。
- ◎DV加害者の目的は、力による支配。支配によって相手の自由をコントロールすること。被害者は「洗脳」されている状態。
- ◎「精神的暴力」は「魂の殺人」である。むしろ身体的虐待よりも精神的虐待のほうが子どもの脳に大きな影響を与えることが分かってきた。
- ◎面前DV(DVを見ること)も子どもに大きな影響を及ぼす。そして親から子どもへ連鎖する。
- ◎虐待と貧困は密接な関係がある。子どもが助かるためには、女性(母親)をしっかりサポートすることが必要。
- ◎性暴力の加害者の61.8%が「よく知っている人」(父親、兄弟、親戚)。
- ◎加害者の特徴は-自己正当化・特権意識・男らしさの優越・人を尊重、共感できない・社会が作る性差別価値観・相手をコントロールなど。
- ◎DVの全体像は"車輪構造"。真ん中は「権力と支配」。
- ◎支配・洗脳された被害者は-強い恐怖心・不安感・乖離。自信喪失・無力感・自責感。そして心身の障害。何とかして助けを求めても、そこで自分は助けられないという体験をすると、もうあきらめてしまう。無力感を学習してしまう(学習性無力感)。
- ◎DV加害者には行動サイクルがある-「緊張形成期」→「爆発期」→「ハネムーン期」。
この行動が繰り返される中で、だんだんと被害女性は無力化されていく。 - ◎被害者はなぜ加害者のもとにとどまるのか?-様々な事情や感情から「ここにいるしか生き延びられない」状況に陥る。
- ◎結愛さんの母親は結愛さんを「なぜ助けられなかったか」-DVによって心に傷を負った母親。子どもを助けようとするとDVされる。心の傷を思い出すことと現実のDVの恐ろしさが重なって子どもに近づけなくなる。
- ◎DVを引き起こす4つの要因-①歪んだ恋愛観、②力と支配、③暴力容認、④性差別(Gender Bias)。
- ◎「Gender Bias」=女と男の社会的役割、態度、行動の決めつけを良しとする価値観。
- ◎ジェンダー・バイアスに気づかないままいると-女性と男性の関係が上下関係・主従関係になってしまう。
- ◎「歪んだ恋愛感情」-嫉妬・執着・束縛=愛情と勘違い。暴力・性的暴力も激しい愛情と勘違いして受け入れてしまう。
- ◎自分らしさを持ちましょう-女性は「女らしさ」を跳ね返す勇気を。男性は「男らしさ」から外れる勇気を。
- ◎「対等」「平等」「尊重」の関係を築きましょう。
- ◎これからDV・虐待にどう対応するか。
*「依存的で無力な自己」を受け入れる
*嫌なことならNOと言ってもいい
*他者からの援助を受け入れる
など9項目。 - ◎DV行動をするほかの男性へのサポート
*暴力をけっして肯定しない
*人権侵害・犯罪行為との理解の助けを
*相手の気持ち・傷つきを想像するよう促す
*自分の問題に向き合うよう助ける
*怒り・落胆の感情にも耳を傾けてやる
*彼が助けを求められるよう助ける
など11項目。 - ◎今DVされていたら-「一人で抱え込まないように」「あなたは一人ではない」「安易に考えて諦めないように」。
- ◎「な・に・か」-「なんだか変!おかしい?」「にげる。離れる」「からだの感じを信じる」。
- ◎虐待・暴力を受けるために生まれてきた人は一人もいません!-「あなたは悪くない」「あなたはそんな目にあっていいはずがない」「何があろうと、暴力する人が100%悪いのです」。
- ◎あなたへのメッセージ-「あなたはあなたのままでいいんだよ。」
- ◎フォーカシング「心の整理」-心理療法。
質疑・意見交流(たくさんの発言がありましたが、その一部を紹介します。)
- ◎息子の学校では、ルールが細かすぎて、子どもたちが支配されている状況がある。子どもにとって学校が楽しくないところになっている。
- ◎「○○学校スタンダード」と称して、細かい校則を設けて生徒を管理しようとする学校が増えている。
- ◎無料学習会のチラシを配らせてもらおうと校長先生にお願いに行ったら、「教育委員会に聞いてください」と言うので、教育委員会に行くと「校長先生に任せてあります」とのこと。お互いに責任を回避しているように感じる。
- ◎少年野球の監督さんで、子どもたちを「バカ、バカ」と叱責する人がいる。その人は喫煙者だが、受動喫煙も虐待になると思う。話してみたがなかなか改めずに困っている。
- ◎ママ友の一人が夫からDVを受けていると感じている。彼女自身は誰かに助けを求めるなどの一歩を踏み出せないでいる。どうしたらよいか。
↑茂木さんから:ちゃんと話を聞いてあげることが大事。踏み出せない状況がいろいろあると思うし、不安がいっぱいあると思う。まずは話をよく聞いてあげること。警察に連絡しておくのも良い。「ひこばえ」に来た女性の多くは「こんなにも支援を受けられるとは思わなかった」と驚いている。 - ◎ある離婚した女性が実はDVを受けていたと聞いて驚いた。DVはなかなか外から見えにくいと痛感した。
- ◎ジェンダー・バイアスについて、自分自身(男性)も身についてしまったものがあると感じることがある。気をつけていきたいと思う。
- ◎小さな支配・被支配は、普通の日常の中にあると思う。
- ◎受け止める側の質が問われている。例えば、セクハラを訴えた裁判でジェンダー・バイアスにもとづいて判決を下したのではないかと思われる裁判官など、とらわれている男性はまだまだたくさんいる現実があると思う。
- ◎ジェンダーの課題を乗り越えていくには、子どもの頃からの教育が大事。絵本にはまだバイアスのかかったものが多い。女性の働く姿がほとんど描かれていない。
- ◎児童相談所に勤めていた頃を振り返ると過ちもあったと思う。それに気づかせてくれたのが「子どもの権利委員会」だった。今後も学んだことを生かせる取り組みをしていきたい。
◆「フォーカシング」の実技講習は時間切れで実施できませんでした。