パートナー通信 No.84

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世話人会だより主体的・対話的で深い学び加藤 彰男

 大阪市で英語を教えている友人から便りがあり、1枚のコピーが同封されていました。それは『週刊金曜日』(8月27日号)の記事で、見出しは「市教委、提言校長に文書訓告」となっています。
 今年5月17日、大阪市立木川南小学校の久保敬校長が、松井一郎大阪市長に提出した「大阪市教育行政への提言」について記憶されている方も多いと思います。コロナ禍によって前倒しになったGIGAスクール構想にともなう一人一台端末の配備の問題や「子どもの人権を尊重し「最善の利益」を考えた社会ではない」ことから生じている様々な問題の解決などについての提言でした。
 コピーされた記事では「8月20日、同市教育委員会は、久保校長が同提言で「他校の状況等を斟酌することなく、独自の意見に基づき、本市の学校現場全体でお粗末な状況が露呈し、混乱を極め、子どもの安心・安全が保障されない状況を作り出していると断じ、(中略)教育委員会の対応に懸念を生じさせた」などとし、「文書訓告」処分にした。」となっています。
 私たちは「子どもの意見表明権」の尊重を活動の大事な柱としていますが、子どもたちの学びの場である学校のリーダーが、学校現場の実情を踏まえ子どもたちに心を寄せて意見表明したのに、「処分」されたと聞いて暗い気持ちになり、怒りさえ覚えました。
 現行『小学校学習指導要領』の「総則編・第3:教育課程の実施と学習評価」の「1.主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」の項では次のように述べています。

…(前略)児童が各教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう過程を重視した学習の充実を図ること。

 久保校長が、教育現場の実践リーダーとして「提言したこと」は、まさにこの学習指導要領に示されたことに合致していると思いました。だとすれば、学校現場から『主体的』に、率直に意見表明されたことに対して、市長や教育委員会はこれにしっかり耳を傾け『対話的』に対応するべきではなかったでしょうか。対話を重ねてこそ、学校現場と行政との理解が深まり、問題の解決策や新たな教育実践の創造が可能になるのではないでしょうか。
 今、全国の学校現場では「主体的・対話的で深い学びを実現」するために「協同学習」という教育実践の思想と方略が重要視された教育活動が展開されています。子どもたちが互いに、自分の分からないことを出し合ったり、それぞれの見方・考え方を聞き合ったりすることで真理を探究する学びを深めています。教室全体が「競争」とは真逆の、明るく穏やかで信頼感に満たされた「子どもたちの居場所」になっています。


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