パートナー通信 No.59
地域の活動報告―① 3・11ドキュメンタリー映画「変身」上映会と
堀潤さんのトークショーを企画して Annakaひだまりマルシェ 今村 井子
東日本大震災から、早3年半が過ぎ去りました。大震災後、私は「きっとこれからの日本は3・11の原発事故を教訓にし、人間を大切にした進路に梶を切るだろうし、歴史的転換になるだろう」と、楽観視していました。しかし今、福島から群馬に移住された被災者の方の言葉を借りるなら、「フクシマでは何も始まっていないし、何も終わっていない」に象徴される現実が重くのしかかってきます。
9月14日、NPO法人Annakaひだまりマルシェが、映画「変身」上映会、及びトークショーを企画するに至ったのも、その根本的な問いからでした。「フクシマを思い、忘れないこと」とは?「私たちがこの群馬の地でできることは何か?」という思いで企画をスタートしました。
しかし、半年ほど前から準備を始めていたものの、当初、参加者が思うように集まらず、苦戦の日々。3年半経った今、「風化」という言葉まで頭をよぎるほどでした。
それでも、自転車操業のように、人に会っては思いをアピールし、店舗で試写をしては協力者を募り、県内の事業所にも賛同をお願いして回りました。そして、結果的に当日は150人を超える多くの方がたにご参加いただきました。また、ひだまりマルシェとしてのこれまでの企画の中で、アンケートの記入者数が今回が一番多かったことでも、この企画内容に手応えを感じることができました。
「風化」を心配していたけれど、結果的に多くの方がたが来て下さったこと、そこにこそ大きな意味を見いだしたいと思いました。
たくさんのアンケートに書かれていた、一人ひとりの皆さんの思い。それはどれも、皆さんそれぞれの「フクシマへの思い」であり、前を向いているからこその迷い、不安であったこと。私たち自身が、
その一つひとつの思いから学び、力を頂き、これからの私たちの役割も見いだせた気がしました。
堀潤さんがトークショーでおっしゃっていた「『忘れない』でなく、『思い出すこと』を大切に」ということ。そしてその思いをまず身近な人たちと共有することの大切さ。それから、「変化はゆっくり訪れる、だから焦ることはない」という、じっくり腰を据えて活動することへの温かなまなざしなど、そのお話の中でたくさんのヒントを下さっていたようにも思いました。市民活動のたいへんさを十分承知し、今の日本社会で主張しながら生きることの困難さを知っている堀潤さんだからこそ話せる内容だったのではないかと思っています。
堀潤さんの印象的だったお話しをもう一つ紹介したいと思います。
自分の話がなかなか相手に伝わらないとき、どのように考えたらいいのかという例として「言葉の因数分解が必要」とのお話しをいただきました。たとえば「今の政府が・・・」と話し始めたとして、相手の認識が「どんな政府像」をもっているかで話が違ってくるということ、だから相手にわかってもらうための言葉を持つことが必要であり「因数分解」という表現になぞらえて説明されていました。
人がわかり合うことの難しさを説きながら、安易に物事を捉えない冷静な視点として、いい言葉だなあと心に残っています。私が大学生の頃に、目指す人物像としてよく語られた「クールな頭脳と熱いハートを持つ人に」という言葉を思い出しました。
最後になりましたが、「群馬子どもの権利委員会」の方がたからも、さまざまなご協力をいただきました。改めて感謝の気持ちを紙面をお借りしてお伝えしたいと思います。