パートナー通信 No.91

シリーズ「『第4・5回最終所見』を読み解く」F.家庭環境および代替的ケア
(第5条、第9~11条、第18条1項・2項、第20条、第21条、第27条4項)                                関口信子

家庭環境

 今回の勧告では、以下の4つの勧告(パラ 27a~d)が出されました。

  1. a:仕事と家庭生活との適切なバランスの促進を含めた家庭支援策の提供および子どもの遺棄と施設入所の防止
  2. b:共同親権を承認するための法改正および面会交流の保障
  3. c:子どもの扶養料に関する裁判所命令の強化
  4. d:バーグ条約と関連議定書等の批准

 aは、第3回最終所見でも親子関係の強化、仕事と家庭生活との適切なバランスの促進について勧告されており、重ねての勧告となっています。政府は、2004年の少子化社会対策大綱で「仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し」を唱えていますが、現実は非正規・低賃金・長時間労働の拡大により、多くの子育て家庭が子どもと関わる時間を奪われています。親の労働実態と子ども・子育てへの影響の問題は、子ども期の貧困化の象徴的な側面であり、根源ともいえます。男性の育児休業取得率は未だ低く、子どもの生活リズムに合わせた勤務スタイルもほとんど実現されていません。困難を抱える家庭への適切な社会的サポートが充実すれば過剰な親子分離を防ぐことができ、子どもが家族と安心して暮らせると考えられますがまだ不十分な状態です。

 b~dについては、これらを推進させる社会的な動きが広がりつつあるがひとり親家庭の貧困率が高く、その一因として養育費(扶養料)の支払いが適切になされていないと言われています。子どもが安心・安全な生活を送るために経済面は無視することができず、子どもの最善の利益の観点からも養育費が確実に支払われるシステムが必要です。

家庭環境を奪われた子ども

 6つの懸念事項と以下の6つの勧告(パラ 29a~f)が出されました。

  1. a:家族分離の決定には司法審査を義務的なものにすること
  2. b:「新しい社会的養育ビジョン」を明確な期限をつけて迅速かつ実効的に実施すること
  3. c:児童相談所のおける一時的監護の慣行を廃止すること
  4. d:施設内虐待防止のため定期的な外部審査、通告・監視・救済システムを提供すること
  5. e:里親などの家庭的擁護への財政支援を強化し、里親が包括的な援助、適切な研修および監視を受けることを確保すること
  6. f:里親委託ガイドラインを改正して、実親の判断が子どもの最善の利益に反する場合、児童相談所は事案を家庭裁判所に申し立てる手続きを明確にすること

 勧告の背景として、日本の児童相談所による一時保護と施設入所措置が家庭裁判所の決定なしに行われていることは、子どもの権利条約第9条(親からの分離禁止原則、司法審査に従う場合のみによる分離)に違反しているという観点によるものと思われます。政府としては条約の趣旨に違反しない親子分離プロセスを確立すべきです。
 一時保護は、児童福祉法第33条第3項で「ふた月を超えてはならない」と規定されています。子どもの権利擁護の観点からもこの期間は数日とすべきであり、児童相談所による迅速な措置決定とそのための条件整備が不可欠です。今、児童相談所への弁護士配置も進められつつあり、親子分離の申し立て手続きに関する事務処理円滑化という観点ではなく、ソーシャルワークの観点に立った児童相談所と家庭裁判所の組織連携が重要です。同時にワーカー質と量の確保は不可欠であり、児童相談体制の担い手となる専門職の計画的整備が急がれます。

(読み解き資料:最終所見翻訳と解説)


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