パートナー通信 No.58

目次

「総会」議案書から 2013年度「活動のまとめ」(概略)

1 2013年度「総会」第二部企画

公開シンポジウム『体罰を考える-なぜなくならないのか』
 初めての「ぐんま教育文化フォーラム」との共同企画として第二部企画を開催しました。
 パネリストに山西哲郎氏(立正大学社会福祉学部教授)、松本稔氏(県立中央中等教育学校教諭)、須田章七郎氏(元高等学校教諭)、小山潤也氏(大学生)をお招きし、県内の体罰に関する実態調査報告を群馬県教育委員会の西村琢巳氏にお願いしました。
 2012年12月に大阪の市立高校バスケットボール部主将が自死し、それが監督教諭の日常的な体罰と関連があると明かになり社会問題にもなりました。体罰問題は部活指導の問題だけでなく、教育活動全体の課題として論議される必要があるということで今回のテーマを設定しました。
 学校現場にある管理主義的な指導や生徒観、スポーツの本来的な意味や教育的に利用されてきた歴史、スポーツ指導者の「ミスに対する指導」の捉え方や「言葉」の大切さ、子どもと同じ目線に立つことの大切さ、子どもたちの日々の姿をしっかりと見て受け止めていくことの大切さなどが話し合われました。
 条約の第28条2項に、「学校の規律」は「子どもの人間的尊厳に適合する方法で」運用しなければならないとあります。「体罰」が「服務規律」の問題として教育行政→管理職→教職員という流れで「指導」されているというところに限界があるように思われます。一人ひとりの子どもをどう捉えるか、その育ちをどう支援するかという「教育実践」の課題としてとらえ、その理念や方法を議論していけるよう、教育行政や学校に働きかけていく必要があるように思います。

2 県内市町村アンケートに基づく自治体訪問と懇談・意見交換会

 国連子どもの権利委員会から日本政府に対して「最終所見・勧告」が出されるたびに、県内市町村に「子どもの権利アンケート調査」を行い、その結果を踏まえて自治体を訪問し、懇談・意見交換を行ってきました。「第3回国連勧告」を機に2010年秋に第3回アンケート調査を行い、2011年から始めた自治体訪問を2013年度も継続し、館林市、富岡市下仁田町、渋川市みどり市桐生市を訪れ、2014年3月までに、群馬県当局および県内全12市と1町を訪問することができました。
 懇談の共通テーマは、「第3回国連勧告」に関する国からの通知の有無、条約・勧告の市民への広報や職員への研修、子どもの意見表明と社会参加、子どもの貧困と家庭での虐待、学校などでの「いじめ」・「体罰」・人権侵害の救済、子育て支援、東電福島第一原発事故に関連する放射線被曝防止対策などでした。
 いずれの話し合いも、率直に発言し合い互いに学び合おうとする姿勢が感じられました。国レベルでの条約・勧告へのフォローアップが消極的な現状にあるなかで、それぞれの地域で奮闘している子ども行政や教育行政の担当者と直接会って、日々の具体的な取り組みをお聞きしながら、子どもの権利条約や国連勧告について懇談・意見交換し、理解を深め合うことができたことは大きな成果だと思います。しかし、条約・勧告の具体的な内容についての市民への広報、職員や学校現場での研修という点では、引き続き勧告のパラ24にある「条約に関する情報の普及」と「体系的で継続的な研修プログラムの開発」を求めていく必要があると思います。

3 再改訂版パンフレット『わかりやすく言いかえた子どもの権利条約』と新版オールカラー『子どものけんりカルタ』の発行

 1993年に設立された群馬子どもの権利委員会は、1996年には初版パンフ『子どものけんり条約』を発行、2003年に初版『子どものけんりカルタ』を発行し、子どもたちに直接語りかける形で「子どもの権利条約」とその精神を届けてきました。
再改訂版パンフ『わかりやすく言いかえた子どもの権利条約』
 改訂版パンフ『こどものけんりじょうやく』が発行されて10年あまりが経過したので、2011年に再改訂版の制作に取りかかりました。
 今回の作業では、「子どもの権利条約」の条文を改めて読み直しながら、改訂版をできるだけ生かすようにして見直しを行いました。条約を項目で分け、その項目が条約の何条に当たるかを末尾に示しました。表記にあたってはできるだけ漢字を使いルビをふり、各項目には独自の見出し語をつけました。2014年1月に発行しました。
新版オールカラー『子どものけんりカルタ』
 2009年から、「一息で言える、新しい読み札(ショート版)」づくりに取りかかり、会員からの意見も参考にしながら世話人会で検討を重ねて、2012年にほぼ完成の状態に漕ぎつけました。2012年8月、このカルタに関心をもった次百(つぐも・筆名)さんに新しい読み札にあわせたカラー版「絵札」の原画制作をお願いすることができました。次百さんのご奮闘で、彩り豊かな、子どもたちに親しみやすい原画が完成し、2013年10月に印刷に入り、12月に完成しました。
 新たに作られた「パンフ」と「カルタ」は、子どもたちにはもちろん大人にも「条約」とその精神をいっそう身近なものとして届けることができる力を持っていると言えます。さまざまな方法と場を使って広め、活用していきたいと思います。

4 地域の活動との交流

NPO法人「Annakaひだまりマルシェ」:「放射能から子どもを守ろう安中の会」は、子どもたちを健やかに育てたいという親の願いから身のまわりを見て、放射能問題だけでなく、食の安全や環境問題、いじめや体罰などの教育問題、子育てのしにくい社会の状況など、子どもたちを取り巻く問題を、「地域でつながりながら」解決していける場所を作ろう、ということで「Annakaひだまりマルシェ」へと発展しました。松井田町商店街の空き店舗を手作りカフェにして、人々が集い、助け合える、ホッとできる場所として動き出しました。一連の取り組みをパートナー通信No.51/52/56で紹介しました。
「中学校特別支援教室読み聞かせの会」:会員の花岡麻子さんは「おはなし配達人」として、保育園、小学校で素話(主に昔話を覚えて語る)、わらべうた、読み聞かせなどを届ける取り組みをしています。同じ読み聞かせ活動をしている校医さんが富士見中学校の校長先生にお話しして特別支援学級での読み聞かせの会が実現しました。読み聞かせグループには地域の方がたや保護者も参加しています。『パートナー通信』No.56で紹介しました。
子ども日本語教室「未来塾」:伊勢崎市にある外国籍の子どもたちのための日本語教室「未来塾」には、毎週土曜日の午前中、多くの子どもたちが通ってきます。子どもたちの居場所づくりや多文化共生の地域社会づくりの役割を果たしていますが、子どもたちの教科学習への支援も重要な課題になっています。『子どものけんりカルタ』も使って楽しく遊び、学びを広げています。
「チャイルドラインぐんま」:「チャイルドライン」は18歳までの子どもがかける電話です。子どもの声に耳を傾け、寄り添い、受け止めることを大切にしています。毎年、電話の受け手講座を開催していますが、その内容の一つに「子どもの権利条約」も取り上げています。2013年度はパネルディスカッションで、パネリストとして児童相談所、高崎子ども劇場、エンパワメントぐんまの皆さんとともに、群馬子どもの権利委員会から事務局長が参加して、いろいろな側面から「条約」に関連する 県内の取り組みを学ぶことができました。
「足利っ子わいわいフェスタ」:2013年11月3日、足利市民プラザで開催された「足利っ子わいわいフェスタ」に、新版『子どものけんりカルタ』を持って参加しました。
 この「フェスタ」は、子どもが主人公の新しい文化フェスティバルです。小学生を中心とした子ども実行委員と子ども支援を担うおとな実行委員が、多様なアイディアを出し合い、中・高校生ボランティアの力も借りながら9年間続いています。「子どもの権利条約の実現の場」として子どもたちのエネルギーを結集する努力を続けてきたその成果が見事に花開いています。地域の子どもたちが集い、協働し、自由に自己表現し、自分が自分らしくいられる場を、自分たちの力で作り出していて教訓に満ちています。
◎県内外の地域のさまざまな活動との交流をさらに広げて、その成果を共有し、学び合い、私たちの活動に活かしていくことが大切です。

「総会」議案書から 2014年度「活動方針」

A 基本理念にそくして

  1. 子どもの権利、とくに意見表明権を守り育てる。子どもたちがさまざまな形で自分の思いや願いを表現できる場を保障するように努め、その子たちを励ましていく。
  2. 子どもの状況を知る。からだの状態・あたまの発達・食事・遊び・学習・貧困や虐待の問題など、保育園・幼稚園・学校・家庭で子どもたちの事実・実情をつかむ。
  3. 子どもと大人がいい関係性を構築できるように努力する。子どもをそのまま受け止めて思いに耳を傾け、子どもの状況を理解して行動するよう、大人たちに促していく。
  4. 子どもの願いを実現し、子どもの状況を改善するために行動する、カルタ、パンフ、会員の声、自治体訪問などを生かし、子どものいる場と行政への働きかけを進める。
  5. 「子どもの権利条約」と「第3回国連勧告」の普及と学習を推進する。また「第4回市民報告書」作成の準備に入り、状況の把握や資料の収集などに努力する。

B 活動経過をふまえて

  1. 第3回アンケート調査に基づいて県当局と県内自治体を訪問した成果を生かし、ひきつづき行政への働きかけを強めて、子ども行政のいっそうの改善を求めていく。
  2. DCI日本支部との結びつきを強化し、「子どもの権利条約 市民NGO報告書をつくる会」に積極的に参加する。「第4回市民報告書」作成の準備にも協力する。
  3. 「教育ネットワークぐんま」に積極的に参加する。そこに結集する諸団体や研究所などとの連携を深め、そこが主催する集会その他の行事でも能動的な役割を果たす。
  4. 新版『子どものけんりカルタ』とパンフ『わかりやすく言いかえた子どもの権利条約』の普及に努める。その活用についても、いっそうの研究と実践を進める。
  5. 保育園・幼稚園・学校などの教育現場と連携する道を探る。保育園と小学校への訪問活動を活発化し、特色ある文化をもつ各種の教育機関とも積極的に協力する。
  6. 放射能から身を守ることや子育て支援など、子どもの幸せのために地域で力を尽しているさまざまな集まりや団体と交流し、相互理解と連携を深めていく。
  7. 学校での「いじめ」や「体罰」、家庭での「虐待」や「子育て放棄」など、子どもに対する暴力とその悲惨な結果に留意し、それをなくすための学習と行動を強める。
  8. 『活動の紹介と入会案内』をはじめ、カルタ、パンフ、『パートナー通信』など、さまざまな資材を活用し、多くの人に声をかけて、会員拡大の行動を強化する。
  9. 機関誌『パートナー通信』の年4回定期発行を守り、内容をさらに充実させて、一般会員と世話人会、ならびに会員相互の理解と交流をいっそう進める。
  10. 「群馬県青少年健全育成条例」の運用を見守り、「児童生徒支援カルテ」の導入計画も注視しながら、子どもの権利が不当に侵害されることのないよう監視していく。
  11. 高校生たちの自主活動を援助する。また、教育裁判を見守り、必要な支援を行う。

2014年度「役員」:
大浦暁生(世話人・代表)、石橋峯生(世話人・副代表)、河嵜清松(世話人・副代表)、加藤彰男(世話人・事務局)、藤井幸一(世話人・組織)、小林美代子(世話人・会計)、茨木邦子(世話人・会計)、高橋清一(世話人)、八木清江(世話人)、阿比留とき子(世話人)、今村井子(世話人)、関口信子(世話人)、田辺純子(世話人)福田利明(会計監査)、須田章七郎(会計監査)
※退任役員:阿藤和子さん(世話人)<長い間のご尽力に感謝申し上げます。>


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