パートナー通信 No.58

目次

「Annakaひだまりマルシェ」 を
世話人会で訪れて 大浦暁生

商店街のまん中に

 くもり空の7月10日木曜日、私は石橋さんの車に乗せてもらって朝9時40分に前橋を出発し、松井田の「Annakaひだまりマルシェ」に向かいました。県内の自治体訪問が前年度で一段落し、今年度の方針が地域との交流に重点を置くことになったのを受けて、世話人の今村井子さんを中心の一人として最近その活動がめざましいこのNPO法人を訪問し、交流を深めながら、世話人会もすることにしたのです。
 だが、事前調査が不十分で、私も石橋さんもひだまりマルシェがどこにあるのか正確にはわかりません。JRで行く人は信越本線の西松井田10時47分着に合わせて迎えが来るというので、それまでに西松井田に行くことを目指しましたが、松井田の町に入ったところでもう10時45分。やむをえず旧道の商店街を進み、「安中市松井田支所」の看板を見てとっさに左に折れ、支所で尋ねることになりました。でも、わかるだろうか?
 そして、みごとにわかりました。支所の受付嬢は地図のコピーをくれ、「少し古いから出ていませんが、ここです」と赤い丸をつけました。なんと、いま来た商店街のちょうどまん中、いい場所です。駐車場もすぐ近くにありますよ、と受付嬢は笑顔で教えてくれました。

放射能問題から子育て全般へ

 「Annakaひだまりマルシェ」は、3・11を契機とした「放射能から子どもを守ろう安中の会」が出発点です。やがて放射能問題だけでなく食の安全などにも関心を広げ、2012年11月には映画『モンサントの不自然な食べ物』の上映を行ったりしました。そして昨2013年6月、子育て全般への活動を目指して、暖かみのある現在の名称に改名。11月にはNPO法人の認可も取って、新たなスタートをきりました。

 心強いのは、商店街のまん中に活動の拠点ができたことです。空き店舗を改装して、昨年11月にオープンしました。入って左とその奥に、10人あまりの人たちならゆっくり話し合えるススペースがそれぞれあり、入って右には「ひだまりカフェ」という名のカウンターバーがあって、カレーライス、スパゲティ、コーヒーなどが楽しめます。おいしいものを食べながら語り合う、考える――こんな楽しいことはありません。

地域と結びついて

 私と石橋さんが着いたとき、集合時間の11時を10分ほど過ぎていました。世話人は加藤さん、小林さん、藤井さん、と予定の人がみな来ています。マルシェからは、代表の神戸(旧姓岡崎)るみさん、農家の山田秀一さん、カフェのマスター永井雄二さん夫妻、それに途中から看護師の佐藤美保さんが2歳の娘さんを連れて参加しました。今村さんは権利委員会とマルシ ェの両方に属しています。自己紹介から話し合いに入りました。
 山田さんはこの土地で16代続いてきた里山 の農家ですが、有機無農薬の農作物を作っています。野菜はもとより、しいたけ、それに米までもです。農産物が地域で循環すればいいと言います。子どもたちのためにも何かできることはないかと考えて、マルシェでの農産物の流通に行き当たり、昨年11月加入しました。
 神戸(当時は岡崎)さんは高知の出身ですが、原発事故のいちばんの被害者は子どもだと訴えて、地域に入っていきました。「放射能から子どもを守ろう安中の会」には、たちまち90人が集まったと言います。とくに子どもは内部被曝を受けやすく、食べ物の問題には敏感になったそうです。「地域を変えるのはよそ者、わか者、ばか者、と言いますからね。私たちはばか者じゃないですけど」とだれかが言って、みんなを笑わせました。

こだわりのメニュー

 食べ物といえば、マルシェにはひだまりカフェといってランチや飲み物を出すコーナーがあります。お昼の食事のために、みんな思い思いのものを注文しました。私はマスターお勧めの「平飼(ひらが)い地鶏(ぢどり)のチキンカレー」(750円)です。出されたものは一見ふつうのカレーですが、鶏肉を一切れ口にして驚きました。これがチキン? ウソでしょ。この奥深いまろやかさはまさしく牛肉、ビーフのものではありませんか。

 マスターの永井さんにきいてみると、いかにもひだまりマルシェらしいこだわりがありました。鶏は土を踏ませて飼った地元産のものを使い、ガラ(肉を取った残りの骨など)を2時間煮出して黄金色のスープを作る。玉ネギをじっくり炒め、10種類以上の本格スパイスを加えて、黄金色のスープといっしょに肉を3時間半煮込む、というのです。しかも、米は山田さんが作った有機無農薬のもの。地域と自然への強いこだわりが明瞭に見えるのです。
 永井さんは吉井町の地鶏ラーメン「自給屋」で修行した本格的な自然食系のシェフですが、メニューにはほかにも「はつらつ豚のキーマカレー」「特製豚丼」(以上3品はテイクアウトもできます)など、こだわりを感じさせる品が並んでいます。コーヒーもひだまりカフェのオリジナルブレンドでした。

人と活動の広がる輪

 「Annakaひだまりマルシェ」の活動はますますの広がりを見せています。すでに、山田さんたちの「西毛農民連」による季節の野菜が常時マルシェで販売され、子どもの一時預かりや買い物代行などの生活サポートも始まりました。毎月最終土曜日に「ひだまり土曜市」を開いていますが、7月26日は商店街の七夕祭りに合わせて、午前中の朝市のほか、かき氷やこどもクジ、大人にはビアガーデンといった夕市を出すといいます。
 一方、放射能問題などを学習するイベントの企画も精力的に実行しています。7月19日(土)には「ヒマワリからの報告」と題して杉内清繁氏がグリーンオイルプロジェクトについて松井田文化会館で講演しますし、9月14日(日)には、元NHKリポター堀潤が監督した日米原発事故のドキュメンタリー映画『変身』の上映と監督トークショーが高崎市総合福祉センターで開催されます。いずれも主催はひだまりマルシェです。
 こうした多彩な活動によって広がってゆくのは人と人とのつながりの輪でしょう。その広がりによってまた活動の輪が一回り大きくなる。そしてそれが子どもたちを守り、大人たちの心を豊かにしてゆくこともつながるのです。Annakaひだまりマルシェでは会の活動を支援する賛助会員を募集しています(年会費3000円、連絡は027-384-3131)。私も会員になろうと心に決めながら、帰途につきました。


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