パートナー通信 No.58
子どもの姿が見えない 「子ども・子育て支援新制度」
――わかりにくく複雑な制度
当事者である保護者には現在も説明は無く――
群馬県保育問題連絡会事務局次長 石川芳子
子どもの姿が見えない
「子ども・子育て支援新制度」
―わかりにくく複雑な制度
当事者である保護者には現在も説明は無く―
群馬県保育問題連絡会事務局次長 石川芳子
2015年4月実施をめざす「子ども・子育て支援新制度」とは
2012年8月に、自民・公明・民主の三党合意により、「社会保障と税の一体改革法」の目玉として成立しました。同時に新たに「社会保障制度改革推進法(推進法)」が突如出され、短時間の審議で同時に成立したのです。この「推進法」は、公助・共助・自助の考え方を、自助・共助・公助へと大転換させる内容を持っています。児童福祉法による、自治体の責任を明確にしている公的保育制度を、「子ども・子育て支援新制度」と呼ばれるように、市町村責任が大きく後退し、あくまでも「支援」する制度として大転換させることを目的にしています。
また、「市場参入を妨げてはならない(政府通達)」として、全国展開する株式会社経営の保育所がすでに登場しています。政府の産業競争力会議、規制改革推進会議などが一体となって、産業化への道を進んでいるのが実態です。 このように政府の施策のどこをみても「豊かな成長が期待される子どもの姿」は見えてきません。
"危険な社会変革は、暴力によってではなく、すべて国会での法律制定によって「合法的に」行われ、マスコミの沈黙で国民にはほとんど知らされない。ひとつひとつの法律が生活を大きく変える可能性を秘めている"(朝日新聞 堤末果氏)
と言われるように、県内多くの保育所関係者の意思に関わらず、「支援法」の実施への準備が県内すべての自治体で進められています。
子ども・子育て支援新制度の主な内容は
◆「新制度」の適応施設として、
- ①施設型保育(保育所、幼稚園、認定こども園:4種類)、
- ②地域型保育事業(小規模保育、家庭的保育、事業所内保育、居宅訪問型保育)など、
10の分野に拡大します。
利用者と施設が直接契約します。
施設によって基準も別々に作られるため、職員の配置や保育室の面積などが異なることになり、保育環境や保育条件に格差が生まれます。
すでに本年4月から先行実施された「小規模保育事業(未満児の19人以下の施設)」では、保育士の資格のない人も認められ、また「保育支援員」という主婦のお手伝いも認知される事態となっています。
◆「新制度」の申し込みは、事前に保育区分認定を受けなければなりません。子ども中心ではなく保護者の働き方で短時間保育と長時間保育(標準時間保育)に分かれます。自治体で認定証が発行され、各種施設を選択するしくみとなります。施設の選択は保護者の自己責任となり、入れない場合は入れるまで保護者が申し込みを続けることになり、介護保険と同じしくみとなります。
「保育度」認定は、
- 1号認定子ども:満3歳以上の学校教育のみ(保育の必要なし)の就学前の子ども。
- 2号認定子ども:満3歳以上の保育の必要性の認定を受けた就学前の子ども。
- 3号認定子ども:満3歳未満の保育の必要性の認定を受けた就学前の子ども
となります。
◆保育料などの軽減策や自治体単独補助制度も見直しが予定されています。
このようななか、私たちは現在、市町村と懇談を進め以下の点を要請しています。
- ①すべての子どもに平等な保育の実施を目指し保育の格差を持ち込まないこと。
- ②保育の利用手続き、入所の仕組み、最低基準や運営費などについて現行水準を後退させることなく維持・改善すること。
- ③保育時間の認定は、最低でもこれまで通り「8時間以上」を保障すること。
- ④県・市単独補助、保育料軽減などは維持・継続すること。
- ⑤障害児保育は現行水準を維持・拡充すること
などです。